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Suno級がローカルで? 音楽生成AI「ACE-Step 1.5」を本気で検証

2026年02月20日 09時00分更新

クラウド型との違いと、ローカルで持つ意味

 音楽生成AIの主要プレイヤーであるSunoとUdioは、どちらもクラウド型のサービスだ。Sunoは2025年9月にv5をリリースし、Studio機能による編集・ステム分離・最長8分の生成など、制作ツールとしての機能を急速に拡充している。Udioもボーカル品質やリミックス機能に強みを持つ。品質面では、特にSuno v5はACE-Step 1.5を上回る場面が多いだろう。公式READMEが自ら「Suno v4.5とv5の間」と評価しているのは正直な数字だ。

 ただし、クラウド型の2社はいま著作権訴訟のまっただ中にいる。2024年6月、ユニバーサル・ソニー・ワーナーの3大メジャーがSunoとUdioを著作権侵害で提訴した。2025年末にかけてUdioはユニバーサルと、Sunoはワーナーとそれぞれ和解しライセンス契約を結んだが、残りの訴訟は継続中だ。Udioはライセンスモデルへの移行に伴いダウンロード機能が制限され、ユーザーの反発も起きている。生成物の権利関係は今も流動的で、サービスの方向性自体がいつ変わるかわからない状況にある。

 ACE-Step 1.5はこの構図の外にいる。モデルはMITライセンスで公開され、ローカル環境で動く。生成物の権利はサービス規約に左右されない。回数制限もなく、プロンプトやパラメーターを何度でも試せる。今回の検証でも、同じ歌詞でジャンルを変え、Seedを変え、スタイルを入れ替えるといった反復がストレスなく行えた。生成した音源をそのままDAWに持ち込み、他のAIボーカルや生成ツールと組み合わせる制作フローも自由に組める。

 もちろん品質ではクラウド型に届かない部分がある。コード進行の揺らぎ、ジャンルによる粗の出方の違いは今回の検証でも確認した。ただ、ここで比較すべきはモデル単体の品質だけではない。クラウド型が訴訟対応とライセンス移行で揺れるなかで、権利関係がクリアなまま手元に残り続けるモデルがあること自体に価値がある。制作基盤の一部として、クラウド型とは別のレイヤーに置けるツールだ。

まとめ

 ACE-Step 1.5は、品質でSuno v5やUdioに並ぶモデルではない。開発元もそれは認めている。ただし、MITライセンスでローカルに持てること、権利関係がシンプルなこと、回数制限なく反復できること——この条件を揃えた音楽生成AIは現時点で他にほぼない。

 クラウド型サービスが訴訟とライセンス交渉のなかでプラットフォームの形を変えつつある今、ローカルモデルには「変わらずに手元にある」という独自の強みがある。LoRAによるスタイル拡張、リペイントやカバー生成といった制作支援機能も備えており、単なる生成ツールにとどまらない発展余地を持つ。画像生成AIにおけるStable Diffusionのような立ち位置を、音楽生成の分野で目指しているモデルだと言っていいだろう。

田口和裕(たぐちかずひろ)

 1969年生まれ。ウェブサイト制作会社から2003年に独立。雑誌、書籍、ウェブサイト等を中心に、ソーシャルメディア、クラウドサービス、スマートフォンなどのコンシューマー向け記事や、企業向けアプリケーションの導入事例といったエンタープライズ系記事など、IT全般を対象に幅広く執筆。2019年にはタイのチェンマイに本格移住。
 新刊:発売中「生成AI推し技大全 ChatGPT+主要AI 活用アイデア100選」、:https://amzn.to/3HlrZWa

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