プラットフォーム側から現場視点となったことで見えてきたAI活用 「Cariot」が提示する次世代の車両管理ソリューション
2026年02月20日 09時00分更新
「位置情報を把握する」「走行履歴を残す」などの管理視点で語られてきた車両管理は、総務担当者が複数の業務を抱えながら車両を管理し、ドライバーは安全やルールを意識しつつ日々の運転に向き合っているのが現状だ。そして管理と現場の間には、見えにくい業務負荷やコミュニケーションの難しさが存在している。
キャリオットは、そうした現場の実態に向き合いながら、車両管理を「業務」として成立させることを目指す車両管理ソリューション「Cariot」を提供している企業。GPSロガーやAIドラレコといったデバイスに加え、Salesforce基盤による可視化、さらにAIを活用した業務支援までを含めて設計されている点が特徴だ。今回はキャリオット代表取締役社長の齋藤洋徳氏に、Cariotがどのような思想でプロダクトを構築してきたか、AI活用による今後の展開などのお話しを伺った。
車両管理を管理側と現場側の両面から支えるCariot
車両管理ソリューション「Cariot(キャリオット)」を提供するキャリオットは、フレクトの一事業部であったCariotを、ソラコムとの合弁会社として2024年10月に設立して事業を継承した。Cariotは当初からソラコムの通信やサービスを利用しながら提供されており、ソラコムが通信事業からデバイスを含めたソリューション展開へと領域を広げる中で、車両管理という分野を強化する両社の方向性が合致し、合弁会社が設立された。
Cariotは単なる車両の位置情報管理にとどまらず、車両に関わる業務全体を支えるソリューション。営業車両の管理を行う総務担当者や支店の管理者と、トラックを想定した物流向けの実際に運転するドライバーの安全管理という二つの軸を中心に「車に関わるすべての人をつなぎ、業務負荷を下げながら、安全・安心な運用を実現することをミッションにしています」(齋藤氏)という。
さらにAIを用いた「Cariot Copilot」を加え、管理者が取るべきアクションをAIが提示する仕組みを構築。ドライバーに対する単なる注意喚起にとどまらず、業務状況や過去の運転状況を踏まえたコミュニケーションの取り方まで含めて検討できるソリューションとして提供する点がCariotの強みだ。
また、すべてを自社で完結させるのではなく、配送ルート最適化など専門性の高い領域については外部サービスとの連携も視野に入れ、現場の業務解像度を高めながら、必要なデータを適切に組み合わせ、ユーザーにとって分かりやすく、使いやすい形で提供することを重視している。
単なる映像記録ではなく、柔軟な管理ができるCariot
Cariotは車両管理側と現場ドライバーの両面に対するソリューションで、業務全体を一体として扱えるよう設計されている点が特徴だ。提供しているデバイスとしては、車両の位置情報を取得するGPSロガーと、AIを活用したドライブレコーダーがあり、これらを軸にサービスが構成されている。
車両に挿入するGPSロガーは、一定間隔で位置情報を取得し、走行履歴をクラウド上で確認できる。物流用途では、車両の現在地をURLで外部に共有できる機能も提供されており、配送先から「今どこまで来ているのか」と問い合わせを受けることなく、状況を把握してもらえる運用が可能だ。
ドライブレコーダーは単なる映像記録にとどまらず、AIによるイベント検知を行っている。急ブレーキや急加速といった挙動に加え、眠気や脇見運転、シートベルト未着用といったドライバーの状態も検知し、必要に応じてアラートを出す仕組みを備えている。これらの情報はすべてクラウド側に蓄積され、後から振り返ることができる。
また、キャリオットでは、ドライバーと車両の紐付けを重視している。車両を複数人で利用するケースを想定し、「誰が、どの車両を、いつ利用したのか」を把握できる仕組みを提供している。これにより、位置情報や運転データを個人単位で管理することが可能となっている。
日報やアルコールチェックについても、紙での管理を前提とせず、スマートフォンと連携したデジタル管理を行える。日報は走行データを基に自動的に記録されるため、手書きや手入力の負担を軽減できる。アルコールチェッカーはBluetoothでスマートフォンと連動し、測定結果は自動的にクラウドに反映され仕組みとなっている。
日報は業務開始・終了時間、走行距離、滞在時間、そして危険運転が自動で記録される。Cariotモバイルアプリを利用すれば、ステータス(移動や作業、休憩など)の登録がリアルタイムで反映され、手書きで日報を作成することが不要になる
これらの機能はすべてSalesforce上に構築されており、ダッシュボードの見え方や管理方法を柔軟に変えられるのが特徴で、ドライバーごとの走行距離や挙動の傾向などを、管理者が見たい切り口で確認できるようになっている。
コミュニケーション支援もしてくれるAI機能「Cariot Copilot」
Cariotに搭載されたAI機能「Cariot Copilot」は、GPSデータや日報、アルコールチェックの実施状況など、クラウド上に蓄積されたデータを基に、管理者に対して必要なアクションを提示してくれる。従来は、管理者がダッシュボードを確認し、「今日は何をチェックすべきか」「誰に声をかけるべきか」を判断していたが、Cariot Copilotでは、AIが分析した結果を右側のアクションリストとして提示する。例えば、アルコールチェックが未実施のまま運転しているドライバーがいる場合、その状況が一覧で示され、次に取るべき対応を検討できる。
左側にはプロンプト入力欄が用意されており、管理者は自然文で質問を投げかけることができる。定型的な質問については、あらかじめ用意されたテンプレートを選択することも可能で、操作に慣れていないユーザーでも使いやすい設計となっている。「単にデータを返すだけではなくて、次にどう対応するかまで一緒に考えられる形にしたいと思っています」(齋藤氏)
AIドライブレコーダーから取得される眠気検知や脇見運転といったデータも、今後Cariot Copilotの判断材料として活用される予定だ。例えば、あるドライバーに眠気検知が多く見られた場合、その背景として走行距離や業務時間の長さが影響していないか、といった点をAIが推察することが可能になる。
さらにCariot Copilotではこれらの情報を元に、管理者がドライバーにどのような声掛けをすべきか提案してもらえる点がユニークだ。単に注意を促すのではなく、直前の業務状況を踏まえたコミュニケーションを支援してくれる。例えば「昨日遅くまで運転していた」「昨日何キロ運転していた」という情報を元にして「昨日はお疲れさまでした」といった枕詞を提案してもらえるので、いきなり注意から入らないことでスムーズなコミュニケーションを取ることができる。
「データの掛け合わせを横断的に見ながらどのような見え方にできるか。その都度ダッシュボードを見に行かなくても提示してもらえることが次世代の車両管理になり得ると考えています」(齋藤氏)
また、物流分野では安全管理ソリューションの一環として、車両周辺を360度監視する後付けカメラシステムの導入も進められている。トラックの前後左右にカメラを設置し、運転席のモニターで周囲の状況を把握できるようにすることで、巻き込み事故などのリスク低減を図る。これらの映像データもクラウド上に保存され、後から確認することができる。
Cariotでは海外で利用実績のあるデバイスであるトラックの積載率を可視化するカメラソリューションの展開も検討されている。荷室内の状況を時系列で取得することで、「実際にはどの程度の積載率だったのか」を把握でき、空荷に近い状態で走行していたケースの改善につなげることが可能になる。
デバイスから得られるデータを単に蓄積するのではなく、AIを介して業務判断に結び付けることで、現場の状況に即したデータの解像度を高め、その循環を回していく。それによって見えてくる必要なデータの取得や機能開発を進めることが重要であり、「業務の解像度が上がったからこそ、こういうAIの使い方ができるんじゃないか、という発想が生まれました」(齋藤氏)は語った。
プラットフォーム側のソラコムからサービス提供のキャリオットへ移ったことで見えてきた視点
今回インタビューに答えてくれた齋藤氏はキャリオット設立の際にソラコムからキャリオット代表取締役社長に就任している。そして、ソラコムにおいてはプラットフォーム側の立場で事業に関わってきたが、キャリオットというサービスを直接提供する立場に移ったことで、見えてくる景色が変わったと語っている。通信やクラウドといった基盤側ではなく、実際に現場で使われるサービスとして業務に溶け込んでいく過程を間近で見ることで、ユーザーの業務解像度がより高まったという。
管理者がどのタイミングで何を見て、どのような判断をしているのかといった業務の流れが特に印象的だったという。ダッシュボードを確認し、状況を把握し、次のアクションを考えるという一連の動きは、プラットフォーム視点では見えにくい。そうした実際の運用を理解したことで、AIをどこに組み込めば価値が生まれるのか、どのデータがあればより良い判断につながるのかといった視点が明確になったと語る。
さらにソラコムが掲げる「リアルワールドAIプラットフォーム」という考え方についても、キャリオットの立場から見ることで、その意味合いがより具体的になったという。現場で発生するデータを起点に、通信、クラウド、AIを組み合わせながら業務に還元していく。その一つの形を、キャリオットの車両管理ソリューションが体現していると齋藤氏は捉えている。「社内にある他のデータと連携することで、AIで解決できる内容はもっと増えると思っています」(齋藤氏)
Cariot Copilotの本格展開で生まれる新しい価値
キャリオットが今後の事業展開において最も力を入れていく領域として挙げているのが、「Cariot Copilot」の本格展開だ。現在は申請制のパブリックデータベータ版として提供されており、直近では一般的に利用できる形への移行を見据えて開発が進められている。
Cariot Copilotは、実際に利用している顧客からのフィードバックを元に機能アップを進めていく方針で、GPS、ドライブレコーダー、スマートフォンなど、すでに取得できているデータをさらに有効活用し、業務判断に直結する形でAIが支援できることを重視している。
また、デジタル側のデータ連携も今後の重要なテーマとして挙げた。Salesforceを利用している顧客を起点に、社内に蓄積されているさまざまな業務データとCariot Copilotを連携させることで、AIが扱える情報の幅を広げていく。対象はSalesforceに限らず、勤怠管理やバックオフィス系のシステムなど、社内に存在する他のデータ基盤も視野に入れている。
齋藤氏は、新しいデバイスやデータを取り込むことで、さらに多角的な分析や判断が可能になるとし、現場の状況をより正確に捉えられるようになれば、「次にどのデータが必要か」「どの情報を組み合わせれば新しい価値が生まれるか」といった議論も自然と生まれてくると語る。
今後に対する視野として齋藤氏は、単にできることを増やすことではなく、広がり続ける技術の中で、どこに注力すべきかを見極め、ユーザーにとって業務として分かりやすい形に束ねて提供していくことが一番重要だとアピールした。
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