クロック増で計算力も増、という順当な結果
ではCPUの馬力比べから始めよう。今回は「CINEBENCH 2026」を使用した。従来のCINEBENCHと同様にマルチスレッド(グラフではnTと表記。以下同様)、シングルスレッド(1T)時の性能をスコアー化するというものだが、2026年版では1コア(1c)テストも追加された。シングルスレッドテストは実行されるコアが温度や他の処理の状況により変動するが、1コアテストは常に1つのコアに処理を集中させるというテストである。
ちなみに、今回の環境では1コアテストが実施できるのはRyzenのみで、Core Ultra 9 285KはハイブリッドデザインであるためかCINEBENCH側で無効化されている。
マルチスレッド性能においてRyzen 7 9850X3Dはコア数に勝るRyzen 9 9950X3DやCore Ultra 9 285Kには遠くおよばない。Ryzen 7 9850X3Dと9800X3Dのマルチスレッドテストのスコアーがほぼ変わらないのは、どちらもTDP120W設定であるため。つまり「使える電力や熱の上限」が同じであるため、マルチスレッド性能は頭打ちになってしまうのだ。
しかしシングルスレッドや1コアテストの値を見ると、Ryzen 7 9850X3Dは9800X3Dを上回るだけでなく、Ryzen 9 9950X3Dと同等以上のスコアーを出している。最大ブーストクロックを5.6GHzに伸ばした結果、シングルスレッドや1コアテストでRyzen 7 9800X3Dを約
6.6%上回った。ブーストクロック5.2GHzから5.6GHzまで伸びた(約7.6%)わりにスコアーの伸びはわずかに小さいものの、クロック上昇がスコア上昇に十分貢献していることがうかがえる。
もう一つ馬力比べとして「Blender Benchmark」も試してみよう。Blenderのバージョンはv4.5.0を指定した。
全体の傾向はCINEBENCH 2026と同じ。このテストではマルチスレッド性能しか見ないため、コア数の多いRyzen 9 9950X3DやCore Ultra 9 285Kのスコアーが高い。Ryzen 7 9850X3Dや9800X3Dに対しスコアーで上回ったものの、最大で6.5%、最少で1.2%と劇的に増えているとは言い難い。
高負荷処理では消費電力は頭打ち
続いては消費電力の計測に入るが、その前にその前提となるテスト結果を見ておこう。ここでは「Handbrake」を利用し、再生時間約3分の4K@60fps動画をHandbrakeプリセットの「Super HQ 1080p30 Surround」および「Super HQ 2160p60 4K HEVC Surround」でエンコードする時間を計測する。前者はフルHDのH.264形式に、後者は4KのH.265動画にエンコードする処理となる。
Ryzen 7 9850X3Dと9800X3Dの差が顕著に出たのは計算負荷の強いH.265へのエンコード処理。H.264では差はほぼゼロなのに対しH.265では3分弱の差が付いている理由として考えられるのは、H.265の処理はCPU負荷にムラがあり、常に全コアが全力で動いている訳ではないことが原因と考えられる。CPUの負荷が下がれば温度や電力に余裕が生まれ、よりCPUクロックがブーストできる余地が出るわけだ。
消費電力の計測にはHWBusters「Powenetics v2」を利用し、電源ユニットとマザーの間に流れる電力をケーブルから直接計測している。ただし機材の問題からPCI Express x16スロットに流れる電力は除外した。下のグラフで「アイドル時」とあるのは文字通りアイドル状態で3分放置した際の平均値を、「高負荷時(avg)」はHandbrakeでH.264のエンコード処理開始〜終了までの平均値、「高負荷時(99%ile)」は同じくH.264エンコード時の消費電力の上位1パーセンタイル点の値である。
コア数の多いCPUの消費電力が大きくなるのは当然だが、今回テストした中ではCore Ultra 9 285Kの高負荷時消費電力が頭一つ抜けている。ただアイドル時の消費電力を見た場合は、マザー上にチップセットが2つ載っているRyzen環境(X870E)の方が消費電力が大きくなってしまうのは仕方のないところだ。
肝心のRyzen 7 9850X3Dと9800X3Dの消費電力に関しては驚くほどに差が出ていない。その理由はどちらのCPUもTDP 120W設定であるため。超短期的にはクロックの高いRyzen 7 9850X3Dの消費電力が大きくなるが、超高負荷状態がある程度続くとTDPで頭打ちになるため、Ryzen 7 9800X3Dと大差ない消費電力に落ち着くというわけだ。
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