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シャープの液晶からKDDIのAIへ! 「大阪堺データセンター」が東洋のベニスで稼働開始

 KDDIは22日、大阪府堺市において、国内最大級の能力を誇る「大阪堺データセンター(以下、AIデータセンター)」の稼働を開始しました。かつて「東洋のベニス」と称され、日本の発展を支えてきた堺の地に、最先端のAI基盤が誕生しました。

歴史ある「堺」の地で、かつての液晶工場が最新AI拠点へ

 AIデータセンターは、2024年8月に役目を終えたシャープ堺工場の跡地を活用して構築されました。大規模な電力設備や冷却設備といった貴重なアセットを継承し、わずか1年足らずという驚異的なスピードで完成を迎えたと言います。

 この日、開所式に登壇したKDDIの松田浩路社長は、この地での開設について次のように述べています。

 「堺は古くから海外の先進文化を受け入れ、日本の発展を支えてきた街です。このような地で、私どものAIデータセンターを早く皆様にお披露目できることをうれしく思っております」。

KDDI 代表取締役社長 松田浩路氏

 また、このプロジェクトは経済産業省が実施するクラウドプログラムにも認定されており、日本の産業競争力を高めるための国家的な期待も背負っています。

世界トップクラスの計算能力と「15倍」の冷却効率

 AIデータセンターの最大の特徴は、その圧倒的な計算能力と、それを支える最新の冷却技術にあります。

 最新GPUであるNVIDIAのBlackwell世代(NVIDIA GB200 NVL72)のサーバーを導入し、国内でも非常に早いタイミングで高度な計算基盤を実現しています。そして、従来の空冷方式と比較して、15倍もの冷却能力を持つ「直接液体冷却(水冷方式)」という革新的な冷却システムを採用しました。

 松田社長は「社会インフラを担う事業者として、通信基盤に加えてAI基盤をさらに強化し、日本のデジタル社会を支えていきたい」と、その決意を語っています。

国内で守る機密データとGeminiの活用

 データの主権(ソブリン性、他国や外部の影響を受けない)を確保している点も、本センターの大きな強みです。日本国内で運用されるため、国外への不適切なデータ移転リスクを抑え、国内の法令・規制に基づいた適切な管理が可能です。

 これにより、Googleの生成AIモデル「Gemini」を、機密性の高いデータを外部に流出させることなく、国内完結の環境で学習や推論に活用することができます。松田社長は「企業様が持つ日々のデータや専門知識をしっかり学習させ、AIエージェントを作り上げていくうえで、自社内で処理が完結することは大きな特徴になる」と強調しました。

AIの社会実装を加速。製薬から製造、自動運転まで

 KDDIは「作って終わり」ではなく、AIをいかに社会に役立てるかという「社会実装」にこだわっています。具体的な活用事例として、以下の分野での取り組みが紹介されました。

 製薬業界では、電子カルテのデータをLLM(大規模言語モデル)で処理することで、従来1000人分の処理に2ヵ月かかっていた作業を、10万名分でもわずか3日間で完了させることが可能になります。これにより、希少疾患の兆候の発見や最適な薬の提供を目指すと言います。また、製造業界では自動車開発などで不可欠な「流体解析」の高度化を支援し、計算時間を大幅に短縮します。

 そして、ELYZAなどのパートナーとともに、特定の企業や領域に特化した国産AIの開発を推進すると松田社長は語りました。

日本が誇る現場力の結晶がAIデータセンター

 この短期間での立ち上げは、シャープの向上の居抜きを使ったこと、そして、NVIDIA、HP、日立、Google Cloudといったグローバルパートナーに加え、電源や冷却、設計を担った日本企業の「現場力」があってこそ実現したものです。

 松田社長はプレゼンテーションの締めくくりとして、「ここ堺を拠点・発信地として、AIの社会実装を進めてまいりたい。ぜひともご期待ください」と力強く呼びかけました。

 100%再生可能エネルギーで運営されるこのグリーンなAIデータセンターは、日本の未来を「つなぐ」新たな心臓部として、2026年1月にその一歩を踏み出しました。

かつてシャープが製造していた液晶パネル

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