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それでもDAPは必要か? FIIO M27が示したひとつの答え

2026年01月12日 18時30分更新

FIIO M27。アルミ合金製の筐体を採用した「M27 Aluminum Alloy」とチタン合金製の「M27 Titanium Alloy」があり、1月14日まではそれぞれ3万円、2万6000円割引で販売されている。

ポータブルプレーヤーの意味を改めて考えるきっかけに

 「FIIO M27」が昨秋発売され、好調な売れ行きだそうだ。

 最初は少し個人的な話から。ポータブルオーディオを語る上で、専用プレーヤー(DAP)の存在は欠かせない。これは自分でもよく分かっているつもりだ。しかしながら、改めて振り返ってみると、最近はDAPを持ち出す機会がずいぶんと減ってしまったことにも気付く。

 これは移動中や外出先で音楽を聴かなくなったためではない。

 音楽はサブスクで毎日のように聴いているし、PodcastやYouTube、ウェブ会議など、イヤホンで耳にする音の種類もぐんと増えている。ただ、その道具としてDAPを手に取ることが相対的に減ったのだ。

 大手の音楽ストリーミングサイトが軒並みロスレス・ハイレゾの配信に対応したいま、スマホに小さなUSB DACをつなげば、手軽にいい音が手に入る。カバンの荷物もかさばらないし、インターネットに接続するために複雑な手順を踏む必要もない。周囲に騒音があり、大きな音で再生することも難しいことを考えれば、「それで十分じゃないか」と思う自分がいるのだ。

 それでも「もうDAPはいらない」と割り切れないのは、「今日は音楽にしっかりと向き合いたい」と考える時間が確実に存在するからだ。

金属の塊のようなDAPに改めて直面する

 そんな折、「FIIO M27」を試用する機会があった。その筐体は一言で表現すれば「巨大」。ポータブルという言葉からイメージする「軽快な持ち運び」とは無縁の存在感を放つ製品だ。

 筐体はアルミ合金を採用したモデルと、チタン合金を採用したモデルの2種類がある。ともに約6インチ(5.99インチ)と大型のディスプレイを備え、厚さは本体のみで28mm。付属ケースに入れれば35mm近くだ……。重量はそれぞれ約556g/約630gで、スマホの中では重く感じる「iPhone 17 Pro Max」と比べたら約2.3倍/2.7倍にもなる。

 昨今のガジェットはスリムで軽量なものが増えている。そんな中で、FIIO M27の見た目は異様なものに映るだろう。編集部でこのプレーヤーを使っていると、「この金属の塊はなんだ」と人が集まってくるほどだ。それぐらいインパクトがある製品なのだ。

 ある意味、手に余るような存在感があるFIIO M27を前にして、私は「いまフラッグシップDAPを手にする意味は何なのだろう」を改めて考えてしまった。

持ち運ばないからこそ手に入れたい、4年の歳月を経た心の変化

 FIIO M27は、2021年12月に国内発売された「FIIO M17」の後継機となる。サイズ感はほぼ変わらず、内部のパーツを刷新。ヘッドホン出力やプロセッサーの処理性能が強化されている。

 FIIO M17は発売当時、持ち運びは一応できるが、据え置き機に近い高出力・高性能を重視した「トランスポータブル機」のひとつとして注目を浴びた。しかし、あまりにも大きいので、DAPは高機能をコンパクトなサイズに収めたものが善だと考えていた私には、正直ピンと来ない製品でもあった。

付属ケースに入れたところ。しっかりとしていて安心感があるが、Androidのメニューを出すためのスワイプ操作がしにくくなるのが難点。

ケースの背面には放熱にも配慮した金属プレートが付いている。

 それから4年以上が経過して、その後継となるFIIO M27に触れてみると、かつては自分には無縁だと思っていたあの重厚な本体が、意外なほど自分の生活に馴染みそうだと思えてきた。

 ちょっと逆説的な話だが、プレーヤーを常時持ち運ぶ必要性をそんなに感じなくなった今だからこそ、自宅を中心に、家の好きな場所でじっくりと音楽に向き合えるようなプレーヤーが欲しいと思ったからだ。

 すでに書いたように、外出先で手軽に音を聞くのであればスマホとUSB DACの組み合わせで十分だ。これにちょっといい有線イヤホンを組み合わせれば、かなりハイクオリティな音で音楽を楽しめる。しかし、静かな自宅で、外に持ち出すことはない大型のヘッドホンを鳴らす場合には、やはりもの足りなさがある。据え置き型のヘッドホンアンプを使う手もあるが、わざわざ機器が置かれた部屋、ケーブルの届く場所に行って音楽を聴くというのは意外と面倒なものだ。

 パソコンデスクやリビングのソファ、寝室のベッドの上など、自分の好きな場所で高品質の音を楽しむためには、FIIO M27のような製品がやはり必要なのだ。

最大5000mWの驚くべき出力、豊富な入出力端子

 特に注目しているのが、バッテリー駆動が可能な製品ながら、DC給電による駆動も可能であり、デスクトップ用のヘッドホンアンプに匹敵する高出力なアンプを持つ点だ。従来は対応するDCアダプターを用意する必要があったが、FIIO M27ではUSB PD充電器など汎用性の高いアダプターからの給電が可能となった。

スーパーハイゲインモードはデスクトップモードでのみ利用可能だ。

 出力は32Ωのインピーダンスで最大5000mW(バランス駆動時)と、ちょっと目を疑う数値。これならばゼンハイザーのHD 800シリーズのように、300Ωを超すような高いインピーダンスで、音量が取りにくいヘッドホンの駆動にも余裕がある。

 これにFIIOの製品らしい豊富な入出力端子と操作性が加わる。

 FIIO M27を使いこなす醍醐味は、プレーヤーで音楽を再生する一台で完結した使い方だけでなく、他の機器と連携しながらマルチパーパスな役割を果たせる点にある。USB DACモードでパソコンやタブレットの音を聴くのはもちろん、同軸入力にCDプレーヤーをつないで、ヘッドホンで昔買ったCDを楽しむことも可能だ。

 Wi-Fi接続でRoonを活用すれば、NASに保存した音源も自在に扱えるし、LDACやaptX Adaptive対応のBluetooth入力も備えている。これは最近増えてきたBluetooth対応のレコードプレーヤーとの組み合わせにも良さそうだ。

ヘッドホン出力は3.5mm、4.4mmに加え、6.3mmの端子も装備している。

 これらはヘッドホンアンプ的な使い方だが、逆にFIIO M27をソース機として自宅のホームオーディオ機器に接続することも可能だ。

 設定の切り替えでヘッドホン端子からはLINE出力ができるほか、光または同軸のデジタル出力でFIIO M27で再生中のストリーミング音源をデジタルアンプに送ることもできる。他の機器と接続する際に活躍するのが専用アプリの「FIIO Control」だ。機器の近くにFIIO M27を置き、聴く場所は離れている場合でも、手元のスマホでFIIO M27の操作が可能になる。

 家族への配慮や部屋のレイアウトを気にせず、リビングのソファや寝室のベッドの上で、ハイクオリティな音に包まれたい。あるいはパソコンデスクで作業する際に聞く、音楽のグレードを上げたい。こういったシチュエーションであれば、FIIO M27の大型の筐体もデメリットではない。ハイエンドの太いケーブルを繋いでも本体がびくとも動かない「安定感」があり、むしろ「頼もしさ」につながるだろう。

 FIIO M27は音楽配信サイトで購入したお気に入りの楽曲を本体に保存し、外出先で楽しむというDAPらしい使い方も可能だが、備わった多彩な機能を、手持ちの機材と組み合わせていく楽しさに心を奪われる面がある。

フラットで余裕あるサウンド

 このようにFIIO M27は、プレーヤーというよりもコンポを持ち運び、家の好きな場所で移動式のオーディオシステムを作れる製品という側面がある。少し大袈裟だがオーディオシステムを持ち運ぶような感覚で使えるのが大きな魅力だ。

 毎日持ち運ぶのには適さないが、必要な場所で必要な機器を組み合わせてヘッドホンを中心としたオーディオシステムを作れる。バッテリー駆動ができるためケーブルなども最小限で済み、本体の持ち運びも付属のキャリングケースを使えば割合コンパクトにこなせる。キャリーバッグに詰め込んで、長期の出張や旅行先のホテルで使うのも悪くはない。

 そんなFIIO M27の機能と内部についても、ざっくりと紹介しておこう。

ESS TechnologyのフラグシップDAC「ES9039SPRO」を2機搭載。6段構成のフルバランス回路はデスクトップオーディオ並の規模。アンプは独自の「HYPER DRIVEアーキテクチャー」で、最大5000mWTI製のハイエンドオペアンプ「OPA2211」を用いたディスクリートAB級となっている。自社開発の第6世代DAPSによるジッター低減機能を持つ。4系統の独立電源や高品位パーツを使用。電源マージンが広く、出力インピーダンスが低く、銅ブロックによる超高速放熱、超低損失リレー回路なども特徴だ。

 まずはFIIO M27の最大の特徴とも言える高出力なアンプから。FIIOはFIIO M27の開発にあたって、HYPER DRIVEアーキテクチャーという自社設計のアンプ回路構成(AB級)を採用している。THXのAAA-788+をデュアルで搭載していたFIIO M17から進化した1番のポイントでもある。

 ヘッドホン出力はLow、Medium、High、Super High、そしてUSB-CアダプターからDC入力した際だけ選択できるUltra Highの5段階のゲインが選べる。Ultra Highゲインを選んだ場合はすでに述べた通り最大5000mWの出力。300Ωでも805mWとポータブル機とは思えないほどの高出力が得られる(ともにバランス駆動時)。

奥がHD 800S。手前右がアルミ版のM27、左がチタン版のM27。画面の向きを変えられるので、デスクトップに置く際にはボリュームとヘッドホン端子を前にした状態にすると使いやすい。

聴いてみた:アンプ出力の余裕感は確かに変え難い魅力

 筆者は自宅用のヘッドホンとしてゼンハイザーの「HD 800」や「HD 800S」(ともにインピーダンス300Ω、音圧レベル102dB SPL)を所有しているので、これを中心に試聴してみた。

 HD 800シリーズの付属ケーブルは6.3mmの標準プラグだが、6.3mmの標準プラグを直差しできるので、HD 800シリーズを接続するのにも都合がいい。

 音量的にはバッテリー駆動でも使えるSuper Highモードで十分だが、Ultra Highモードにすると同じぐらいの大きさの音に設定してもよりエネルギッシュな鳴りになるようだ。例えば、音の立ち上がりの速さや押し出し感が上がり、ベースやドラムなどリズム帯の低域もズンズンと前に出てくるようになる。また、高域の透明感なども上がり、より広い空間を感じられるようになった。この力強さはポータブル機ではなかなか出せないものだろう。

 音調については、際立ったくせがなくニュートラルな印象だ。搭載しているDACはESS Technologyの最新フラグシップDAC「ES9039PRO」だが、ESS系のシステムで感じるような高域のきらめき感などはあまり意識させず、フラットで腰の据わった印象のサウンドになっている。

 とはいえ、情報量については十分。HD 800シリーズのようなハイインピーダンスのヘッドホンではなく、一般的なヘッドホンを使った場合でも、高出力機だからできる余裕感が感じられた。低域は太く明瞭で、勢いよく立ち上がる。ドライバーに喝が入ったような力強く闊達な再現が可能となっている。自分のイヤホンやヘッドホンの音がなんとなく重くぼんやりしているなと思った場合はFIIO M27を試してみるといい。

 低インピーダンス・高感度のイヤホンではどうだろうか? ここはノイズが気になりそうだが、ここも抑えていて不満はない。同じ音量でもゲインの違いによる音の変化もそれなりに感じるので、長く付き合っていく中で自分の好みのポイントを探っていけるのも面白そうだ。

豊富な機能と長く使えるバッテリー

 なお、ES9039PROは1つで8ch出力が可能なチップだが、FIIO M27ではこれをデュアルで使い、6段構成のバランス回路を組んでいる。プロセッサーはクアルコムの最新SoC「Snapdragon 778G」で、Android 13を搭載。アプリの追加が可能なほか、Pure MusicモードやAirPlay、USB DACモード、Bluetooth受信モード、COAX入力モードなどが利用できる。

 ほかUSB-Cや光デジタル出力で外部DACに接続することも可能。USB-C端子は3系統あるがひとつは電源供給(赤い端子)、ほかがデータ転送や外部機器との接続に使うためのもの(右側がHOST)となっている。

左右に光デジタル出力と同軸デジタル入力を装備。中央にはUSB端子が3つあり、左の赤い端子が給電用、中央がデータ転送用、右側がホストとして使う場合の端子となる。最上段にはmicroSDカードを2基、最下段にはHOLDとデスクトップモードを切り替えるためのスイッチがある。

 再生可能なフォーマットとしてはPCMが最大768kHz/32bit、DSDがDSD512(22.4MHz)までの対応となっている。再生音をDSD変換して再生するモードも用意されている。

 高出力で長時間使用するとなるとバッテリーの劣化も気になるが、外部給電で使用するデスクトップモードでは内蔵バッテリーを切り離して動作する仕組みとなっている。バッテリーは9200mAhと高容量で最大約9時間の再生が可能。長期間使って劣化した場合でも、交換がしやすい設計になっており、長く使えそうなのもメリットだ(ユーザー交換はサポート外)。

本体には充電スタンドとしての機能も持つ冷却ファンまで付属している。

底面をみると、ここには給電用とHOST用のUSB端子(2つ)があるのがわかる。

アルミとチタンの音の違いは?

 FIIO M27には標準的なアルミ筐体のモデルと、7〜8万円価格が上がるチタン筐体のモデルがある。その違いも気になるところだろう。

 基本的なスペックやサイズについては同じだが、チタン筐体のモデルには航空宇宙グレードのTC4チタン合金が採用されており、重量が増す。アルミ合金の約4倍の硬度を持つ素材を、13時間におよぶ精密CNC加工と1時間の精錬研磨で仕上げているという説明だ。耐摩耗性と耐腐食性が高く、プレミアムな質感と重厚感がある。

左がアルミ、右がチタンのモデル

 音質についても変化がある。基本的な特徴は変わらないが、チタン筐体のモデルはアルミ筐体のモデルより高域の再現が少し落ち着いた印象となり、付帯音や細かな音のざわつきがなく、より見通しの良い整理された音になるなど、キャラクターの違いを楽しめる。

 いくつか曲を聴いたが、中島美嘉の『雪の華』(2019年にリリースされたハイレゾのベスト盤)では、冒頭のオルゴールの音に込められた気配感(空間の残響や広がり)がより鮮烈なものとなった。

 それに続くピアノやストリングスの伴奏、ボーカルについても、ピアノは硬質ではっきりとしたタッチに。ボーカルやストリングスは弱音の切り込みが深いより抑揚感のある再現になった。結果、ボーカル、ピアノ、ストリングスなど、楽器/声の描き分けが明確になり、異なるものから発せられた音であることが把握しやすくなる。アルミ筐体では各音がもう少し混ざりあった感じで再生され、直接音を聞くというよりは反響の大きな部屋で全体の響きを聞いているような感覚になる。

 トーンバランスとしてはチタン筐体は中音、低音がより前に出てくる印象だ。逆にアルミ筐体は少し高音が粗く目立つ。これをマイナスと捉える人もいそうだが、シビランスやブレスなどがより強く聞こえるので、臨場感や声の艶やかさがあると感じる人もいるかもしれない。

 1]30付近では曲の盛り上がりと共にオルガン風の音がバックで流れるのだが、その音もアルミ筐体の方が聞こえやすい。ここはピアノやボーカルなど他の音とかぶって聞こえにくい音であり、さらにFIIO M27では中低域の充実感を重視しているせいか、チタン筐体でもアルミ筐体でも鳴っているのが把握しにくい面があった。

 全体的なクオリティはチタン筐体のほうが高いと言って良さそうだが、アルミ筐体にも良さはあるので聴き比べてみるのもいいだろう。

 なお、上記はHD 800Sを使い、6.3mmのシングルエンド、Super Highの音量50程度で試聴した際の感想だ。HD 800Sの場合、ハイゲインにした方が明らかに音の再現性は良くなるし、ゲインに応じてヘッドホンのポテンシャルがより引き出されていく印象を持った。トーンバランス的にもヘッドホンとプレーヤーの相性がいいようだ。

 もう少し鳴らしやすいヘッドホンも組み合わせてみたが、その場合はゲインによる差はそれほどないようにも感じられた。逆に出力を上げすぎるとヘッドホン側の限界を感じる面もあったので、電力消費なども含めて自分がいいと思った設定を使うのがいいだろう。

 FIIO M27の試聴に合わせて久しぶりにHD 800やHD 800Sを箱から取り出して聴いてみたが、これらのヘッドホンが持つ魅力を改めて感じることもできた。

鳴らしにくいヘッドホンの魅力を引き出す

 FIIO M27は、とりあえずカバンに入れておき、毎日持ち運ぶ……といった使い方にはあまり適さないが、部屋のあちこちへ移動させながらハイエンドのヘッドホンを楽しむのは楽しい。自分の好きな場所で「納得できる音」が得られると言う意味では非常に優秀なプレーヤーだ。

使ってみて意外に便利に感じたのが横位置での利用。画面の向きは変えられるので、デスクトップ環境ではケーブルの取り回しに合わせて設置できる。

 大型の本体ではあるが、ケーブル類もきれいに収められるしっかりとした専用ケースも用意されており、荷物は意外にコンパクトに収まる。旅行や出張など長期の外出で持ち出す際にも役立ちそうだ。

ケース。小さくはないのだが、コンパクトにまとまるので持ち運びはしやすい。

 好きな場所で自由に使いたいが、常に持ち運ぶわけではない。そういう人にとってFIIO M27は魅力ある選択肢だ。単体で使うのもいいが、家庭にバラバラに存在するオーディオのソース機をヘッドホンで高音質に楽しむためのインターフェースとしてもかなり優秀な製品とも言える。必要なときに必要な場所で、さまざまな機器と繋げるヘッドホンアンプとして便利に使えるのは心にささった。

 使い込む楽しさを実感できる製品と言えるだろう。

 価格は共にオープンプライスで、M27 Titanium Alloyは実売37万4000円程度、M27 Aluminum Alloyは29万9530円程度になるが、1月14日までは期間限定割引として、これよりも3万円/2万6000円以上安価に買えるようになっているとのことだ。

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