「AI HERO」が語るChatGPTの登場からAIエージェントまでの道のり
AIエージェント開発の神セッションが集結した「AI Builders Day」 最高のキーノートで幕を開ける
2025年12月22日 10時00分更新
モデル駆動型開発を実現する「STRANDS AGENTS SDK」
Bedrock Agentsは便利だが、GUIで設計できる便利さと引き換えに、自由度に制約が生まれてしまう。また、Bedrockで提供されている以外の基盤を使いたかったり、MCP用のツールを利用する場合は、より柔軟なアーキテクチャを利用したくなる。こうしたニーズに応えるのが、AWSからOSSのフレームワークとして公開された「STRANDS AGENTS SDK」になる。
数あるAIエージェントのフレーム枠の中でSTRANDS AGENTS SDKのユニークな点は、モデル駆動型開発の考え方をいち早く取り入れた点だ。「LangChainが出てきた頃の2年前、AIエージェントを作るのはけっこう大変だった。仕事を頼もうとしてもLLMが今ほど賢くなかったので、ちゃんと仕事をやってくれなかった。そのため、ちゃんとワークフローを組む必要があった」と御田さんは指摘する。
しかし、2025年現在、LLMは十分賢くなった。そこで複雑なワークフローをプログラムとして書くのではなく、賢くなったAIに開発を丸投げするようにしたのがモデル駆動型開発だ。STRANDS AGENTS SDKでも、「モデルとツールを指定して、けっこういい感じに仕上げてくれる」(御田さん)という。
御田さんは「AIのアプリ開発って、機械学習エンジニアがJupiter Notebookでごちょごちょやる、あの小難しいヤツでしょというイメージが合ったと思うのですが、今はLLM周りの処理がいい感じに抽象化されていて、普通のWebエンジニアでもアプリに組み込める強力なパーツになっている」と指摘する。
このSTRANDS AGENTS SDKはまさにこの典型例で、3行のコードでAIエージェントを書けてしまう。先日のAWS re:Invent 2025の発表ではSTRANDS AGENTS SDKが拡張され、Pythonに加え、TypeScriptもサポートした(関連記事:教えて、ほめて、注意して AWSが考える「本番に強いAIエージェントの育て方」)。
STRANDS AGENTS SDKではパラメーターを変えるだけで、モデルを選択できたり、ツールを指定することも可能だ。MCPサーバーを利用すれば、ほかの開発者が作ったツールを簡単に流用できる。さらにマルチエージェントに関しても、Bedrock Agentsではスーパーバイザー型のみ対応しているが、STRANDS AGENTS SDKではネットワークやグラフなどさまざまな形態が利用できるという。
AIエージェントをどこで運用する? Bedrock AgentCoreの誕生へ
さて、コードは書けたものの、どこにデプロイするか?という問題も残る。「AWSにはEC2やECS、Lambdaなどさまざまなインフラサービスがありますが、AIエージェント特有の考え事があります。非同期処理させたり、ストリーミングレスポンスをフロントに返させたり、認証や記憶の保持をさせながら、サーバーレスでできればお安く動かしたいと考えても、既存のビルディングブロックを自分で組み合わせるしかなかったんです」と御田さんは振り返る。
こうしたニーズに応えたのが、AIエージェントの動作環境を提供する「Amazon Bedrock AgentCore」になる。AgentCoreには、エージェントをサーバーレスで動かせる「AgentCore Runtime」、記憶を持たせる「AgentCore Memory」、必要なツールとの連携を容易にする「AgentCore Gateway」、認証・認可を担う「AgentCore Idenitity」、ツールの統制を行なえる「AgentCore Policy」、ブラウザ操作やコードインタープリターなどのビルトインツール群、利用度の評価を行なう「AgentCore Evaluation」、エージェントの行動を関する「AgentCore Observabilities」などのAIエージェントに必要なさまざまな機能が用意されており、必要に応じて組み合わせることができる。
ここで御田さんがデモで披露したのがお手製の「re:Inventエージェント」だ。re:Inventエージェントは、ラスベガスで開催されたAWS re:Inventの現地で特有の悩みを聞くことができるエージェントで、「近くのスタバはどこ?」「発表した新サービス」といった質問から、2000近いre:Inventの中で好みのセッションを探すことも可能になる。
システムはAgentCoreをフル活用しており、STRANDS AGENTで作られたエージェントが4種類のツールを使って、MCPサーバーやRSS、ナレッジベースなどを検索しながら、必要なセッション情報を探してくれるようになっている。ユーザーとのやりとりを記録するAgentCore Memoryや利用動向を計測するGenAI Observabilityも利用可能。「コードを少し書くだけで、AIエージェントを作れる時代に突入している」と語る。
数年前までインフラエンジニアで、プログラミング初心者だった御田さんも、いまやAIエージェントを本格的に作れるようになった。そんなAIエージェントの開発をもっと身近にするのが、「いまや原宿のJKたちを騒がせているKiroちゃん」(御田さん)だ。
Cursor、Claude Code、GPT Codexなど、今やAI開発ツールは百花繚乱。そんな中、AIエージェント開発専用のAIエージェントであるKiroがすごいのは、「仕様駆動型開発」の元祖であること。ユーザーが自然言語であれ作って、これ作ってとリクエストすると、AIのコードはスパゲッティ化するが、Kiroはまずユーザーとの対話で仕様を固めるところから始めることができる。
「コミュニティはビルディングブロックの一部」 だからAWSが好き
御田さんは最後、「なぜAWSでAIエージェントを作るのか?」について説明する。この理由として挙げたのは、AWSの「ビルディングブロック」という考え方だ。AWSの設計思想であるビルディングブロックは、プリミティブなサービスを複数組み合わせて好きなアプリを作ることができる。AIエージェント開発においても、このビルディングブロックの考え方が有効というわけだ。
一方で、開発で困ったことを聞きたかったり、作ったときのノウハウを共有するときに重要なのは、今日のイベントの中心であるコミュニティ。「私はコミュニティはビルディングブロックの一部だと思っています。このコミュニティの勢いが間違いなく高いのがAWS。AWSを使っていれば、学ぶのも、発信するのもめちゃくちゃ楽しいから、仕事がんばろってなる。コミュニティがあるから私はAWSが好きなんだと思います」と御田さんはまとめる。
最後、御田さんは「今年はAIエージェントの『利用元年』だったと思います。来年2026年はAIエージェント『構築元年』にしましょう。今日はその先鋭たるすごい人たちが池袋に集まって、その知見を発信してくれます。100件以上の応募から、厳選に厳選を重ねた珠玉の神セッションを楽しんでもらいたいです」とイントロのキーノートを終えた。
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