週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

“稼げる会社”へ転換すべくこだわった、従業員ファーストな“仕組みづくり”

給与20%増達成で社員の人生も変えた 平均年齢64歳の地方バス・タクシー会社はkintoneで未来をつなぐ

救世主は40代のパートタイマー アナログ現場に刺さった「シンプルさ」の追求

 その混乱の中、一人の人物が社長に声をかける。それは、「社長、案件情報を入れてるだけじゃダメです。車両情報やドライバーの勤怠情報を入れないと機能しませんよ」という、パートタイマーの40代女性からのアドバイスだった。

 入社して2年目の彼女は、ここからkintone導入の中心人物となっていく。彼女は自ら地元のkintoneパートナーである「ビットリバー」を見つけ出し、彼らと共にシステム構築に乗り出す。

 開発期間は約1年に及んだ。完成したシステムでは、ドライバーは使い慣れたLINE(ビットリバー開発のカナル・ウェブで連携)から毎月の希望勤務を申請し、そのデータはkintoneに自動登録される。この「勤怠情報」を、車検や点検情報を含む「車両情報」、そして「案件情報」と連動させる仕組みを作り上げた。高齢のドライバーが多いことから、LINEの画面は文字を大きくし、自身の抱える仕事も確認できるように工夫している。

LINEを入り口にして、各アプリを連携させたシステムが完成した

 しかし、完成に至るまではトラブルの連続だった。試用を始めると、想定外のレコード削除や入力漏れなどが頻発。こうした問題は、従業員を教育するのではなく、シンプルな仕組みで解決することにこだわった。ただ、「シンプルって実は難しい」と漆川氏。直感的なUIの裏側で、自動制御や自動入力の機能を走らせて、何度も業務フローを見直すことで、完成に漕ぎつけている。

高齢ドライバーにも使ってもらえるように、シンプルなUIにこだわった

作業から仕事への転換で給与は20%増に 社員の人生も変えたkintone

 この徹底した「仕組み化」の結果、前年比で売上は20%増、平均給与も20%増を達成した。月給が30万円から50万円に上がったドライバーもいたという。

 さらに26歳の最年少ドライバーも入社し、深刻だった平均年齢は64歳から58歳と6歳も若返った。ドライバー数も35名から73名へとほぼ倍増して、ドライバー不足も解消している。「さらに、業務が増えても、管理メンバー9名のままで回せています」(漆川氏)

 何より漆川氏を喜ばせたのは、給与が増えたドライバーたちからの報告だった。「社長、結婚しようと思うんです」「家を建てようと思うんです」「今度子供が生まれるんです」。かつては考えられなかった、未来への希望に満ちた言葉が寄せられた。

管理メンバーそのままに、売上も人員も給与もアップした

 kintoneは、パートタイマーの働き方も変えた。紙とExcelの転記・確認作業は8割削減。今、彼女は「ツアー企画」という、会社の売上に直結するクリエイティブな仕事に従事している。そして、従業員たちからは、「クレームや売上もkintoneで管理しよう」という声が上がるようになった。

 漆川氏は、「仕事という名の作業をなくし、本来やるべき仕事に集中できるようになったのは、kintoneのおかげです。今後は、新拠点の立ち上げや新サービスの立ち上げも予定しています。kintoneは、事業を成長させるためのパートナーであり、今や私たちの大きな武器です」と締めくくった。

2025年のkintone事例の頂点に立ったのは…!

 ここまでニコニコ観光を含む、6地域のファイナリスト達による最終プレゼンを紹介してきた。観客参加型の選考を経て、見事グランプリを獲得したのは……通称「小田トーン」による変革が鮮烈な印象を残した関東・甲信越地区代表のプロサス小田凪波氏、黒田章太氏だ(関連記事:モンスターExcelもそのままkintoneアプリ化 老舗企業を整トーン(頓)した「小田トーン」の実力)。

 小田氏は、「元々は一人でほそぼそとチャレンジしたkintone導入でしたが、イベントに出場し、さらにAwardにまで進んで、グランプリの受賞にまでつながりました。こんなにもたくさんの人に共感していただき、他の登壇者も含めて、全員がkintoneで挑戦を続ける仲間なんだなと実感することができました」とコメントした。

プロサス 黒田章太氏、小田凪波氏

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事