もはや懐かしいSailfish OS
実はまだまだ開発中!
ヨーロッパ発のスマートフォンOSとしてAndroid、iOSに対抗できる「Sailfish OS」を搭載するスマートフォン「Jolla Phone」が2025年12月に発表されました。
グーグルやアップルのエコシステムから離れたOSとしては、ファーウェイのHarmonyOSが中国を中心に一定のシェアを誇っています。しかし、Sailfish OSはそれとは一線を画したOSとなります。
Jolla Phoneの主なスペックはSoCがMediaTek製の高性能タイプで、型番は現時点で非公開。メモリーは12GB、ストレージは256GBで、5Gに対応します。ディスプレーは6.36型。背面カバーは交換可能で、5500mAhのバッテリーは取り外しもできます。カメラは広角5000万画素、超広角1300万画素で、ミドルハイクラスの製品となるようです。
本体側面にはプライバシーを守るためのプライバシーキーを搭載。物理キーで、マイク、Bluetooth、アプリなど、指定した機能や起動したりアプリをオフにすることが可能。バックグラウンドで個人データなどが端末から出ないようにすることができます。なおJolla AppSupportにより、Sailfish OSだけではなくAndroid向けアプリも動作可能です。
Jolla PhoneはJollaのユーザーコミュニティーから生まれた製品で、スペックや機能などもコミュニティー主導で開発が進められました。端末の販売もJollaの公式サイトからとなっており、現在はプレオーダー中。初回ロットは499ユーロ(約9万1000円)です。5年間のOSサポートがあり、さらにバッテリーが交換可能など、長期間使うことを前提とした製品になっています。
そもそもSailfish OSは、もともとノキアが開発した小型デバイス「インターネットタブレット」向けのモバイルOS「Maemo」と、インテルがAtomベースのモバイル機器向けに開発した「Moblin」を統合し、2010年2月に発表された「MeeGo」をルーツにしています。
2007年に初代iPhoneが登場し、2008年に「T-Mobile G1(HTC Dream)」が発売されたことで本格的なスマートフォン時代が到来。スマートフォンOSとして自社の「Symbian OS」のシェアを奪われていったノキアと、モバイルインターネット端末がPCの牙城を崩すことを阻止したいインテルが対抗を図ったのです。
しかし、2011年2月にはノキアはマイクロソフトとの提携を発表し、MeeGo端末の開発は1年で終了。唯一登場したMeeGo端末は2011年7月の「Nokia N9」のみに留まりました。
インテルはその後、サムスンなどとモバイル向けLinuxプラットフォームを再構築し、LiMoとの統合を経てTizenへと生まれ変わります。一方、コミュニティー側からはMeeGoのオープンソースソフトウェア部分を引き継いだ「Mer」が派生し、それを土台に元MeeGo開発者がJollaを設立、独自のUIとサービス層を加え、Sailfish OSが生まれたのが2012年でした。
2013年には、Sailfish OSを搭載する最初のスマートフォン「Jolla」が登場。4.5型ディスプレーにSoCはSnapdragon 400、800万画素カメラを搭載し、価格は399ユーロ、当時のレートで5万円程度でした。
ちょうどこの頃は「第三のスマホOS」ブームで、Firefox OSやTizen搭載のモデルが出てきました。日本ではKDDIから半透明ボディーのLG製「Fx0」が出たころです。
話が横道にそれてしまいましたが、その後、Jollaからはスマートフォン後継機が出てきたもののパッとせず、ソニーの「Xperia」シリーズ向けにSailfish OSを配布。現在も入手可能で、最新対応端末は「Xperia 10 V」となります(Sailfish OS Supported Devices)。
2024年には開発者向けスマートフォン「Jolla C2 Community Phone」をリリースしましたが、性能は高くなく、販売数も限定的なものでした。このようにSailfish OSは急に出てきたOSではなく、長い歴史を誇るものの、コミュニティーに支えられながら地道な発展を続けていたのです。
今回の新製品であるJolla Phoneは、バッテリー交換可能など持続性を考えた設計、プライバシーを考えたハードウェア、そして5年のOSサポートと、現代風のスマートフォンとして登場しました。
実製品が出てきたら、その使い勝手を試してみたいものです。
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