ノンAIのサービスでもAWSのイノベーションは続いていた
AWSガーマンCEOが10分で怒濤の新発表25連発 LTチャレンジにレガシーAWSファンも大歓声
2025年12月03日 21時30分更新
桁違いに進化するAmazon S3 サイズは最大50TBへ ベクター対応も強化
そして、ガーマン氏の一連の発表の中で、特に大きかったのが、AWSの基幹データ基盤であるAmazon S3の強化だ。
まず従来5TBだったオブジェクトサイズは、一気に10倍の50TBに拡張された。動画や地質、AIのトレーニングデータなど大容量データを分割することなく格納することが可能になる。「2006年、Amazon S3をラウンチしたとき、オブジェクトサイズは5GBだったが、その後5TBになったが、この数年で足りなくなった。2倍にするか、3倍にするか、結果10倍になった」とガーマン氏は振り返る。
また、多数のオブジェクトに対する一括操作も10倍高速化された。これにより、サイズの大きいデータプロセッシングや時間にシビアなデータマイグレーション、リージョン越しのバックアップ、タグ付け化されたAmazon S3のライフサイクル管理、データセットのチェックサムなどヘビーなバッチジョブなどが容易になった。ジョブあたり最大200億のオブジェクトを扱うことが可能になるという。
昨年発表されたバケットテーブルのAmazon S3 Tablesでは、利用されないデータを自動的にアーカイブするIntelligent-Tieringやリージョン・アカウントにまたがるデータの自動レプリケーションが可能に。ファイル共有サービスのAmazon FSx NetApp For NetApp ONTAPにも対応し、Amazon S3上からファイルを透過的にアクセスできるようになった。
セマンティック検索やコンテキスト理解で重要なベクトルデータの保管や検索を可能にするAmazon S3 Vectorsも一般提供が開始された。対応ベクトル数はプレビュー時の40倍となるインデックスあたり20億となり、バケットあたりで20兆ベクトルまで拡張された。頻繁に実行されるクエリのパフォーマンスも2~3倍高速化し、他に比べてコストも最大90%削減。AIアプリケーションの開発を寄与するという。
Security Hubが一般提供開始 Amazon EMR Serverless ClowdWatchも強化
セマンティック検索やリコメンド、エージェントシステムなどの構築で利用されるAmazon OpenSearch Serviceも強化。GPUアクセラレーションによって、インデックスの生成が最大10倍になり、コストも最大1/4まで圧縮可能になった。自動最適化ジョブにも対応し、検索の遅延やリコール要求を指定すると、インデックス構成を自動評価し、最適なインデキシングを行なう。ここまでであと4分となった。
Amazon EMR ServerlessのApache Sparkワークロードでローカルストレージを不要にするサーバーレスデータが提供される。ローカルストレージ代が不要になり、ジョブが消費するコンピュートとメモリのみの課金になるため、データ処理コストを20%削減。中間データを自動的にサーバーレスストレージにオフロードするため、ストレージ不足によるジョブ失敗を回避できるという。
セキュリティに関しては、攻撃の予兆検知と可視化を行なうAmazon Guard DutyがAmazon EC2とAmazon ECSに対応。異常なプロセスの起動、持続的な標的型アクティビティ、リバースシェル亜クテビティ、仮想通貨のマイニングなどを分析し、1つのイベントとして通知し、対応を促すという。
さまざまなセキュリティツールからの情報を集約し、リスク評価を可能にするAWS Security Hubは一般提供開始が発表された。Amazon GuardDutyやAmazon Inspector、Security Hub CSPM、Amazon Macieなどからの情報を集約し、クラウドセキュリティのオペレーションを統合できる。トレンド分析や過去の洞察に関してのビジュアル化機能も提供し、潜在的な攻撃経路、脅威、脆弱性、設定ミスなどの影響を整理し、優先順位を付けられる。
Amazon CloudWatchには新たに統合データストアが提供され、AWSや外部ソースのログを一元集約し、ClowdWatch自体やApache Iceberg互換のツールで分析できるようになった。AWS Organizationsと連携して組織全体のデータを集約したり、データコレクターでCrowdStrike、Okta、Palo Alto Networks、Microsoft Office 365、ServiceNowなどからログを自動集約する。
35%の割り引きが可能な「Database Saving Plans」発表に会場も沸く
AWSのサービスとして、古参の部類に入るマネージドデータベースサービスのAmazon RDSもてこ入れが行なわれた。「みなさんがまだレガシーなデータベースをサポートしています。AWSはそんなデータベースの管理を簡単にします。みなさんがそこにいるのはわかっているので、お手伝いをしましょう」とガーマン氏は語る。
まずAmazon RDS for Oracle/SQL Serverの容量が従来の4倍となる最大256TiBにまで底上げ。64TiBのボリュームを4つ利用できるようになり、高性能なProvisioned IOPSとGeneral Purposeを使い分けることで、コストの最適化も可能になった。
また、Amazon RDS for SQL Serverでは、M7i/R7iインスタンスでCPUの最適化が可能になり、前世代と比較して最大55%のコスト削減が可能に。また本番利用が許諾されないDeveloper Editionに対応し、ライセンスコストを圧縮することが可能になった。
ラストに大歓声が上がったのは「Database Saving Plans」の発表。データベースの利用量に1時間あたりの利用料金を1年間コミットすることで、最大35%の費用削減が可能な料金モデル。インスタンスのSaving Plansはあったが、データベースは初。Amazon Aurora、Amazon RDS、Amazon DynamoDB、Amazon ElastiCache、Amazon DocumentDB(MongoDB互換)、Amazon Neptune、Amazon Keyspaces for Apache Cassandra、Amazon Timestream、Amazon Database Migration Serviceなどを対象に自動適用になり、中国リージョンをのぞくすべてのAWSリージョンで一般利用可能が開始された。
25個目のDatabase Saving Plansまでたどり着き、10分で新発表を披露したガーマン氏は「やりきりました」と満足そう。AI「以外」の発表として余りもののように扱われるのでなく、短い時間でありながら、タイムトライアルで楽しく発表してくれたガーマン氏のサービス精神に、聴衆も拍手を惜しまない。AI以外と言いつつ、AI基盤の構築に有用な新発表も多かった。ガーマン氏は、「みなさん発明してください。re:Inventをお楽しみください」と聴衆に手を振り、舞台から去った。
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