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「落とせない環境」がそこにある ハードウェアからソリューションまで一気通貫で提供するアムニモ

IoTソリューション:過酷環境で「止まらない」ための通信技術

 IoTソリューションでは、長年モバイルルーターを開発してきたノウハウが設計に活かされている。AC10に代表される産業用ルーターでは、SIMカードとeSIMを合計4つ搭載し複数キャリアを冗長化できる構成だ。ドコモやKDDIなどで障害が発生しても、短時間の停止で別回線へ切り替わるため、重要な現場でも長時間の通信停止を起こさずに運用できる。

SIMを4つ搭載できる産業用ルーター「AC10」

アムニモのIoTデバイスの信頼性向上技術

 また、一般的な通信モジュールはキャリア切り替え時にリブートを伴うが、アムニモのルーターはリブートなしで切り替えることができる。この構造は国内外でも珍しく、ミッションクリティカルな現場で支持される理由のひとつとなっている。また、ファームウェアをA/B二重化する設計により、遠隔アップデート中の故障や回復不能な機能停止を防ぐ仕組みも整備している。

 このIoTソリューションは他社の屋外ルーターやカメラシステムなどにも採用が広がっており、防犯カメラや電力インフラ分野で止まらない通信を前提とした機器として評価されている。

 IoTソリューションの具体的な事例として、東京都豊島区の公園に導入されている防犯カメラシステムでは、アムニモのエッジ・クラウドを組み合わせた構成が採用されている。導入後は防災部門など別部署にも広がり、区内全体へと展開が進んでいるという。また、この例を見て他の自治体にも話が広がっている。

豊島区の公園に設置された防犯カメラシステムの例

 また鉄道では踏切監視システムとして数千台規模の導入実績があり、放送局では先述の高画質映像インフラとして採用が拡大中である。さらに洋上風力発電やキュービクルなど、一般的な映像ソリューションでは運用が難しい環境でも稼働している。

アムニモ×ソラコム お互いの強みを持ち寄ることで新しいソリューションが生まれる

 アムニモは自社でハードからクラウドまで一貫して構築できる技術力を持つ一方、ソラコムとは通信回線やAI連携といった領域で協業を進めている。小嶋氏は「我々は映像・IoTの領域を広くカバーできますが、ソラコムさんのサービスと組み合わせることで、より柔軟で拡張性のある提案が可能になる」と語る。

 とくに回線冗長化の領域では、アムニモの産業用ルーターにソラコム回線を組み合わせる事例が増えている。ミッションクリティカルな現場では止められない通信が求められるため、複数キャリアを重ねて構成できる点が評価されているという。現場での自律的な切り替えが必須となる用途でも、ソラコムの回線と併用することで、運用全体の自由度が高くなるという。

 また、AIの領域では、アムニモはエッジ側でのAI処理に強みを持つ一方、クラウドで生成AIとの連携を進めている。「ソラコムさんが提供するサービス群と組み合わせることで、映像プラットフォームから生成AIへ連携する仕組みもよりスムーズに構築できます」と小嶋氏。映像データを必要な形に加工し、実務フローへ組み込むうえでも相性が良いという。

 さらに、ソラコムの提供するプラットフォームを経由することで、顧客側にとっての利用シナリオが広がる点にも触れる。「ソラコムさんと組むことで、お客様の業務システムや既存サービスとの接続がしやすくなる。結果として、我々が提供できる価値の幅も大きくなる」と説明する。

 アムニモの堅牢なデバイスおよび映像基盤と、ソラコムの柔軟性の高い通信・クラウドサービス。両社の強みを持ち寄ることで、屋外監視、IoTインフラ、生成AI連携といった領域で、新たなソリューションの幅が生まれている。

変わりゆく市場で求められるアムニモの役割

 映像ソリューションのプレイヤー構造が大きく変わりつつある市場では、カメラメーカーやVMS(ビデオ・マネジメント・ソフトウェア)ベンダーが主役だったが、高度なVMSを使いこなせる専門要員は限られており、大多数の企業にとっては「簡単に録画でき、必要な時にすぐ見られる仕組み」が求められるようになってきた。小嶋氏は「以前のようにVMSが絶対的な中心ではなく、通信や業務システムを持つ事業者が映像を扱う時代に変わりつつある」と説明する。

 こうした変化を踏まえ、アムニモは自社の映像基盤を「業務システム側が必要に応じて呼び出すためのプラットフォーム」と位置づける。すでに建設向け業務サービスとのAPI連携を進めるなど、映像を業務の一部として自然に組み込む取り組みが始まっている。

続々登場するアムニモのソリューション

 また、生成AIの普及はアムニモの事業構想に大きな影響を与えている。これまで「エッジAIで個別の学習を実施しなければ実現が難しかった処理」も、生成AIによってクラウド側で特別な学習なしに高速かつ柔軟に実行できるケースが増えてきた。小嶋氏は「今は生成AIを使った方が実現までの期間が圧倒的に短い。エッジAIは「どの映像をAIに渡すべきか」を判断するために役割がシフトしていく」とし、エッジ×クラウド×生成AIの三位一体の仕組みが重要になると見ている。

 市場環境も追い風だ。自治体や公共領域では人手不足が深刻化し、監視や警備、日常の業務管理をデジタルに置き換える需要が増えている。豊島区の公園監視カメラを皮切りに、他自治体へ横展開が進んでいるように、現場で成果が出たソリューションは「自分たちも導入したい」という形で自然に広がりやすい傾向があるという。

 小嶋氏は最後に、「今後はSIerや通信事業者が映像やAIを組み込んだサービスを提供していく流れが強まる。そこで我々のような業務システムと映像をつなぐプラットフォームが必要になる」と展望を語った。業務フローを基点に、エッジからクラウド、生成AIまで一貫して支えられるアムニモ。その立ち位置は、今後の市場構造の変化とともに、より存在感を増すことになるだろう。

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