週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

「前システムの方がマシ」から大逆転、現場との対話で全社員をDX人材化した大英産業

悪夢のExcel多重入力と決裁スタンプラリー システム刷新の反発は“ライブ改善”で乗り越えた

批判が期待に変わった「ライブ改善」 成功体験の積み重ねは、社員のDX意欲向上に

 二人はここで諦めなかった。「みんなの業務を楽にしたい」という一心で、各部署を廻り、定例会を開いて現場の意見を吸い上げた。ここで、「開発がしやすい」というkintoneの特徴が真価を発揮する。二人は、現場の要望を聞きながら、その場でアプリを修正する「ライブ改善」を敢行したのだ。

「繰り返しライブ改善をすることで、『意外と悪くないね』『こんなこともできるんやね』『もうできたと?こんなこともできる?』と、kintoneへの批判が期待に変わっていきました」(柚田氏)。

 例として挙げられたのが「来場予約・アンケート」のDX事例だ。従来は、外注した予約フォームの情報を、手入力でkintoneに転記。来場時の紙のアンケートも手入力するという二重の手間が発生していた。外注コストや紙アンケートゆえの未記入項目の多さも課題だった。

 そこで、トヨクモの各連携サービスを導入し、紙のアンケートをFormBridgeに置き換え、必須入力機能で情報の質を確保。さらに、kViewerでカレンダー形式の予約フォームを内製化し、FormBridgeで顧客情報を入力して、DataCollectで予約枠を自動計算する仕組みを構築した。

未記入が多発していた紙のアンケートをFormBridgeに置き換えた

 さらに、来場予約をすると、自動返信メールで事前アンケートのURL送り、予約情報と回答内容が自動登録される仕組みも作った。これにより、スタッフは来場前から顧客のことを把握して、万全の準備で商談に臨めるようになっている。

自動返信メールで来場前にアンケートに答えてもらえるようになった

 「ライブ改善」による成功体験は、他の業務にも波及していく。以前は週報や月報は、Excelで管理していた。各現場のExcelを上長がとりまとめ、印刷して会議に臨むとというフローで、印刷の手間とコストがかかり、関数が壊れることもあった。そこで、「週報アプリ」と「グラフアプリ」を作成し、実績入力から業績のリアルタイムな可視化までをkintone上で完結させた。

 同じくExcelで作成していた契約書も、「帳票作成アプリ」と電子契約システムとの連携で効率化。バラバラだった人事・総務関連の申請も「人事申請アプリ」に集約し、システムメンテナンスの負荷とコストを削減した。やがてこうした地道な改善の繰り返しが、会社全体の空気を変えていく。

kintoneアプリ化することで業務効率を大きく改善

「様々な部署で成功体験が積み重なり、全社員のDX意欲が向上しました。そこで私たちは『問い合わせアプリ』を作成し、DXに向けた要望やアイデアを集めています。最初は基幹システムとして導入したkintoneでしたが、それに付随する業務もkintone化できました」(江崎氏)

 そして、二人の視線は、次なるステージ、kintoneと生成AIのコラボレーションに向けている。特に注目しているのがJavaScriptによるカスタマイズだ。「文系だったんじゃないの?って思われた方、その通りです。私たちが書いたのはプロンプトである日本語の指示文だけです」と江崎氏。

 サイボウズの公式ドキュメントに準拠した指示を生成AIに与えることで、文系でも標準機能では難しい集計などのカスタマイズが実現できたという。

 江崎氏は、「kintoneを活用するには専門知識は必要ありません。私たちはプログラミングやタッチタイピングはできませんし、IT系の資格も持っていません。大切なのは、コミュニケーションとアクションでライブ改善をすることです」と強調した。

生成AIを駆使して、文系でもJavaScriptカスタマイズに挑戦している

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事