第850回
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ
2025年11月17日 12時00分更新
VeniceベースのEPYCは、Zen 5世代より性能/消費電力比が1.7倍に向上
Ryzen側に関しては意図的にだろうか情報がないが、EPYCに関してはVeniceベースの製品のThread Densityおよび性能効率が示されている。
Thread Densityは要するにチップ当たりの稼働スレッドの数で、現在Zen 5cベースのEPYCの場合はEPYC 9965が192コア/384スレッドである。これを30%上回るということは250コア/500スレッドになるが、もちろんこんな中途半端な数は考えられないので256コア/512スレッドが想定されているということだろう。
CCDあたり16コアとして、Zen 6cは16ダイ構成ということだろうか? 16ダイはすでにZen 5ベースのTurinでも実現されている。Zen 5cでは16コアのCCDのサイズが大きすぎて12コアが限界だったが、N2まで微細化したことでこれを現在のZen 5のCCDと同じサイズまで抑え込めれば実装は難しくないだろう。
そのVeniceで1.7倍以上の性能/消費電力比になるわけだが、コア数が変わってもTDPが変わらないとすれば、それだけで1.3倍の性能/消費電力比になるわけで、さらに30%以上の性能向上があるという計算になる。
実はこれ、先程のFPUが512bit×4から512bit×6になるというのが事実とすると50%向上になるが、メモリー帯域がボトルネックになるからせいぜい30%程度の向上に留まるだろうと考えると、妙に符丁が合うのが気になるところでもある。
RyzenはともかくEPYCの場合は動作周波数が低めに抑えられている。実際Zen 5cベースのEPYC 9965はベース2.25GHz/全コアブースト3.35GHz/最大3.7GHzとなっており、これをそれぞれ2.9GHz/4.25GHz/4.8GHzまで引き上げれば30%向上の計算は合うが、間違いなくTDPの枠を超えるだろう。
そもそもN2はN3Eと比較して同一消費電力での動作周波数の向上は14%程度とされており、N3ベースのZen 5cからは実際には上げても10%程度だろう。したがって、あとはIPCが18%程改善できればつじつまは合う計算になるが、さすがにこの数字は厳しいだろう。
Zen 5/5cからZen 6/6cでIPCの向上や動作周波数の引き上げも多少はあると思われるが、1.7倍以上の性能効率の改善は、主にFPユニットの強化によるものではないかと筆者は考えている。
Ryzen Mobileは2026年にGorgon Point、2027年にMedusa Pointが搭載される
次にRyzen Mobile向けの製品ラインであるが、今回AI性能にからんで示されたのが下の画像である。現状はStrix Point/Krackan PointベースのRyzen AI 300シリーズの製品にになるが、これに続いて2026年にはGorgon Point、2027年にはMedusa Pointが搭載されることが明らかになった。
まずGorgon Pointであるが、Photo03でStrix Point/Krackan Point→Gorgon Pointの傾きと、Gorgon Point→Medusa Pointの傾きが明らかに異なっており、またGorgon Pointから点線が出ている。同じ状況はPhoenix PointとHawk Pointでも見られる。
Hawk PointはPhoenix Pointのリフレッシュ版という位置づけであり、同様にGorgon PointもStrix Point/Krackan Pointのリフレッシュ版と想像される。どちらの製品もNPUは50TOPSであり、これを多少引き上げる(55~60TOPS程度)というのが上の画像のグラフであり、おそらくCPU/GPUの性能もこれと同じように若干引き上げたものになるだろう。
これに続くMedusa PointはNPUの刷新がされるだろう。下の画像はNPUのロードマップを示したもので、現在のStrix Point/Krackan Pointは2nd Gen AI Engineを搭載しているが、これに続き2026年に3rd Gen AI Engineが出ることが予告されている。
NPUのロードマップ。3rd GenのAI-Optimized FP FormatsはおそらくFP4のサポートと思われる。2nd GenはMX6/MX9/FP8/FP16/BF16/INT16のサポートだけだった
おそらく2026年にはVersal Nextにまずこの3rd Gen AI Engineが搭載され、次いで2027年のMedusa PointにはZen 6/6cコアとRDNA 4(?)、それと3rd Gen AI Engineが搭載されると考えるのが自然だろう。
「RDNA 4(?)」と書いたのは、Strix Point/Krackan Point同様に、モバイル向けに最適化したRDNA 4.5などの派生型になる可能性もあるためだ。RDNA 5ではないのか? という疑問もあろうが、ロードマップを見ると、まだRDNA 5にあたるものがいつ出るか、そしてそれがRDNA 5となるのかがまだはっきりしていない。
このロードマップでは、次世代製品もやると決めている「だけ」しか情報がない。やや寂しいところだ。競合のNVIDIAも、次世代のGPUがRubinをベースにするのか、別のモノになるのかを含めて動きがないため、そこまで急いでいないのかもしれない
2027年のMedusa Pointに、仮にRDNA 5相当のものが入るとすると、それは2026年に実装が完了していないと難しいし、もう間もなく2026年になろうというこの時期にまだこれがぼやかされているというのは、次世代のRDNAは相当先になるかと思われるため、少なくともMedusa Pointには間に合わないのは間違いない。
これに絡んでRDNAとCDNAが再び統合されてUDNA(Unified DNA)になるという噂も以前から飛んでいるが、現時点ではこれを肯定も否定できる情報がない。
技術的な話で言えば、例えばサーバー向けとゲーミング向けがBlackwellで統合されているNVIDIAであるが、サーバー向けはチップレット構成が取れるのにクライアント向けではチップレットができない(やらないのではなく、できない)というあたり、基本アーキテクチャーが共通でも実装は結構異なっているのが現在のGPUである。
無理に統合する必要はあるのか? というのはやや疑問であるが、こちらはもう少し様子を見ないとなんとも言えない。
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