ChatGPT、Claude、Gemini――いま我々が日常的に使う生成AIの多くは、アメリカの巨大テック企業が開発したものだ。その性能は圧倒的だが、同時にアメリカ的な価値観に強く影響を受けているという指摘もある。
Moonshot AIは、2023年に中国で設立された新興AIスタートアップだ。少ない計算資源で大規模モデルを訓練することを掲げ、研究者の出身母体も含めて「いかに効率よく巨大モデルを動かすか」を最大のテーマにしている。K2の事前学習は2024年後半から進められ、わずかな予算とGPUで1兆パラメータ級モデルを仕上げた点が注目を集めた。
そんな中、同社が公開した「Kimi K2」は、非アメリカ圏から登場した本格的なオープンLLMとして注目されている。総パラメータ約1兆の巨大モデルでありながら、ツールを自在に使いこなす行動するAIとして設計され、研究者や開発者だけでなく一般ユーザーにも開放されている。
AIがどこの国の倫理や文化を基盤に学ぶか――その問いが現実的な意味を持ち始めた今、Kimi K2は「もう一つの軸」を提示している。
「Kimi K2」とは?
「Kimi K2」は総パラメータ約1兆のオープンLLMで、コード生成や数理解析に強く、外部ツールを自動で使いこなす行動型(Agentic)の設計を採用している。公式サイトやアプリから利用でき、開発者はAPI経由で自分のアプリに組み込める。
実際の性能は、コード生成・数理・長文要約で商用上位モデルに迫る水準で、特にエージェントタスクでは既存のオープンモデルを大きく上回る。研究者の検証用途から、一般ユーザーの検索・分析まで幅広く使われ始めている。
同じく中国発の大規模モデルとしてDeepSeekも注目されている。特に代表モデルDeepSeek-R1は、公開時点からMITライセンスでモデル重みを含めた配布が行われており、セルフホストも可能な「オープンウェイトモデル」として提供されている。
ただし、DeepSeek-R1は主に推論・数理解析にフォーカスされて設計されており、ツール利用やエージェント機能を含めた自律的行動を前提とする設計では、あくまでKimi K2のような“一体化された行動型AI”とは趣向が異なる。
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