Intel Tech Tour 2025取材レポート【その4】
インテルの次期CPU「Panther Lake」のNPU 5、IPU 7.5、Bluetooth 6、Wi-Fi 7 R2を解説
2025年10月28日 10時00分更新
Bluetoothが2本アンテナになり接続距離は最大52mへ
最後の話題はワイヤレス機能。つまり、Wi-FiおよびBluetoothについてだ。Panther LakeはWi-Fi 7 R2(Release 2の略)とBluetooth 6を採用。Wi-Fi 7 R2は現行のWi-Fi 7のマイナーチェンジだがBluetoothについては新世代に更新しているため、まずはBluetoothの話をしよう。
Panther LakeでもワイヤレスのPHY(物理層)を担うWi-Fiモジュールは外付けになる。Wi-Fiモジュールに「Intel Wi-Fi 7 BE211」(開発コードネーム:Whale Peak 2 2)を利用することになるが、ほかのメーカーのモジュールを利用することも可能だ。Panther LakeとBE211の双方に、BluetoothのMACとPHYを2つずつ搭載している点に注目してほしい
Panther Lakeのプラットフォームコントロールタイルは、BluetoothのMACを2基搭載する。そして、Intel Wi-Fi 7 BE211にはPHYが2基。つまり、Panther Lake搭載PCではBluetoothのアンテナを2本搭載することが可能になる(実際に実装されるかはPCメーカーの設計次第)。
Panther LakeではBluetooth 6をデュアルアンテナで運用することで、通信距離が大幅に拡大する。1世代前の「Intel Wi-Fi 7 BE200」(開発コードネーム:Gale Peak 2)では最大34mだったが、Intel Wi-Fi 7 BE211では52mになる。
大きめのオフィスや講堂などでもBluetooth通信が途切れにくくなるわけだが、デュアルアンテナBluetoothは通信の安定性(切れにくさ)向上にも貢献するという。ただし、障害物への耐性については語られなかったので、今後実機での検証が必要だ。
Panther Lake+Intel Wi-Fi 7 BE211を組み合わせてデュアルアンテナBluetooth構成にすると、通信距離は最大52mまで延長できる。通信できる距離が伸びるだけではなく、通信の安定性も向上しているという
Bluetooth 6の機能も気になるところだが、インテルが作っている規格ではないため、簡単な紹介だけにとどめる。Bluetooth 6で注目すべき新機能は「チャネルサウンディング」だ。これはBluetooth通信の往復にかかった時間と電波の位相を利用して、最大10cm精度での距離測定を可能にするというもの。
これにより、PC本体と一定距離以内にセキュリティーキーがある時だけロックを解除する機能や「デバイスを探す」機能の精度向上が期待できる。Bluetooth 6接続のマウスやゲームパッドが登場すれば、PC本体と一定距離遠ざかると電源を切ってバッテリーを節約する、という実装も今よりきめ細かくできるようになるだろう。
Bluetooth 6のチャネルサウンディングは行きと帰りの電波の位相差を利用してPC本体とデバイス間の距離を測定する。精度は最少で10cm程度。この距離情報を利用すればMITM(Man-In-The-Middle)攻撃を見分けられるため、セキュリティー向上にも貢献する
Panther LakeのBluetoothは「Bluetooth LE Audio」にも対応する。通信時の省電力化や低レイテンシー&高音質のコーデック(LC3)を利用できることで期待を集めているが、もう1つの「Auracast」にも注目したい。これはBluetoothで接続した複数のオーディオデバイスに対して同じ音声を流す、いわばBluetoothオーディオのブロードキャスト機能である。
Auracastを利用するには、WindowsとBluetoothオーディオデバイスの両方が対応している必要がある。インテルによれば、Windows 11へのAuracast実装は「imminent」、すなわち間近であるとのことだ。Auracast対応のワイヤレスイヤホンはまだ少数(JBLの「Tour Pro 3」など)だが、普及は時間の問題だろう。
Panther LakeのBluetoothはBluetooth LEにも対応。Auracastは電車や飛行機で移動中にPanther Lake搭載PCで再生した映画を2人で同時に視聴する、というシチュエーションで輝くだろう。2人がAuracast対応イヤホンを装着していれば、PCの音声は2人に届く
一方、Wi-Fi 7 R2は既存のWi-Fi 7(R1)からのマイナーチェンジであるため、通信速度や利用する電波の周波数帯などは従来と同じだ。R2では主にQOL向上のための機能がいくつか追加している。
Multi-Link reconfiguration(MLO)で複数の周波数帯にクライアントが接続し、状態の良いほうにミリ秒単位で乗り換えられる点がWi-Fi 7の強みだが、常に全部使っていては電気の無駄である。2.4GHz帯と5GHz帯で接続しているデバイスをすべて5GHz帯に集めれば、クライアント側は2.4GHz帯の電波を切ることができ、電力の有効活用につながる
接続の安定性やレイテンシーが重要なデバイスがWi-Fiネットワーク上に存在するときに、そのデバイスへの通信を優先させる機能がRestricted TWTである。現在でも通信するデバイスに対し、プライオリティーをつける機能があるがそれを発展させた形だ
特定のチャネルをP2P通信用に隔離する機能もある。あるPCがVRヘッドセットとP2Pで通信している時に、アクセスポイントはVRヘッドセットが使っているチャネルをほかのPCから隔離する。こうすれば、PC⇔VRヘッドセット間の通信がほかのPCの通信に影響されずに済むわけだ
Panther Lake搭載PCではIntel Wi-Fi 7 BE211を搭載すれば問題なくWi-Fi 7 R2が利用できるが、アクセスポイント側もR2に対応する必要がある。インテルによれば、ファームウェアの更新でWi-Fi 7 R2の機能が利用可能になるという。とはいえ、実際にそうなるのかは今後の情報待ちだ。
まとめ:着実に歩を進めるインテル
ここまでの記事でPanther Lakeのさまざまなハードウェア的側面の解説は終了となる。NPUやIPUといった周辺の機能においても細かい進化を積み重ねており、実際の製品の使い勝手が楽しみな製品であることは間違いない。
次回はIntel Tech Tour 2025取材レポートの最終回。Xeon 6+の話や、Intel 18A製品を量産するFab 52見学の回想録をお届けする予定だ。
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