週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

「kintoneを大学の業務の共通言語にしたい」から「日本全国、kintoneで大学DX!」へ

全職員の6割がkintoneを利用する関西外国語大学 背景に待ったなしの大学DX

「kintoneを大学の業務の共通言語にしたい」。コロナ禍の奨学金申請でkintoneを活用したときの部門の成功体験を、全学に拡げるべく奮闘する大学職員。その熱意とサポート力は、他の部署も巻き込んでいく。

 kintone hive 2025 osakaの事例登壇のラストを飾ったのは関西外国語大学の2人の職員。18歳の人口減少とそれに伴なう競争の激化で大学DXはまさに待ったなし。「日本全国、kintoneで大学DX!」を掲げ、他大学でのkintoneユーザーの仲間を増やしていきたいという。

関西外国語大学 図書館学術情報センター 山本大嗣氏

18歳人口の減少 競争の激化 大学のDXは待ったなし

 「kintoneと大学の仕事 出会うまで 出会ってから」というタイトルで登壇したのは、関西外国語大学の二人。「出会うまで」を語った山本大嗣氏は、関西外国語大学に入職して13年目で、図書館学術情報センター(元学生部)で勤務している。「以前は中国の大学で映像やアニメ制作を教えていました」とのことで、好きな料理は激辛の湖南料理だ。「出会ってから」を語る仲井琢哉氏は、もともと高校教諭で、ITベンチャーを経て、昨年から関西外国語大学の教務部で勤務している。

 大阪府枚方市にある関西外国語大学は、学生数は1万1972名(2025年5月1日現在)。特徴は留学制度ということで、世界55カ国・地域に協定校419大学を抱える。留学生を担当する仲井氏は、「半年間で500名、年間で1000名の留学生が来るため、かなりの人数が学内におります」とアピールする。

留学に強みを持つ関西学国語大学

 山本氏が、「入職する前、大学の職員の仕事って、どんなイメージでしたか?」と聞くと、仲井氏は「学生の授業や生活をサポートするのは、イメージ通りだったんですが、パソコンを使った業務が多いと思ったら、意外と紙や内線電話などアナログの業務が多かったのはギャップでした」と答える。

 現在、関西外国語大学では全職員の約6割強にあたる13部署115名がkintoneを利用している。そんな関西外国語大学の二人が、今回のkintone hive登壇で成し遂げたいのは、「他大学のkintoneユーザーの仲間を増やしたい、つながりたい」ということだ。「なぜこんな目標を掲げたのか?」と、山本氏は大学を取り巻く現状について説明する。

 大学は厳しい環境に置かれている。18歳人口は減少しており、競争も激化。業務改善や職員の脱属人化、多能工化までを見込んだ大学DXは待ったなしだ。「ただ、日々の業務が忙しく、そういった新しいことを考える時間がないという悩みがあります。kintoneはそういったときに強い味方になってくれるのではないかと考えています」と仲井氏は語る。

大学DXはもはや待ったなしの状況

きっかけはコロナ禍 奨学金申請でkintone活用の成功体験

 kintone導入のきっかけは、コロナ禍だ。当時、コロナ禍での奨学金業務を担当していた山本氏だが、「対面での対応不可」「鳴り止まない電話」「あふれる書類」「情報共有の難しさ」「わからないことが聞けない」などさまざまな困難にぶち当たった。

 この困難を解決するために、なにかいいサービスはないか? こうして出会ったのがサイボウズのkintoneだ。結論から言うと、kintoneの導入で4人だった人材派遣は1人に減らすことができた。これを実現するために、紙と対面前提だった業務フローの改善からスタートした。

 申請の部分ではkintone+フォームブリッジ(トヨクモ)で非対面・ペーパーレス化を実現した。ただ、奨学金の申請においては、紙の書類がどうしても必要になる。日本学生支援機構に提出する書類がそれだ。そのため、フォームブリッジとプリントクリエイターを連携させ、学生が提出する書類にQRコードを印刷し、提出書類のPDFをkintoneに一括取り込みできるようにした。「無理をして紙をなくすのではなく、紙をいかに効率よく管理していくか? この視点でkintoneにすべての情報を集約することに成功しました」と山本氏は振り返る。

フォームブリッジ+プリントクリエイターとの連携で紙も管理

 こうしたkintoneによる業務改善。仲井氏の「部署で変化したことはありますか?」という質問に対して、山本氏は「大きな変化がありました」とマインドセットの変革について言及する。kintoneの導入前は、「システムは業者まかせ」「コストはかかるもの」「1度作ったものは変えられない」「非効率な業務にシステムをあわせる」のが普通だった。

 しかし、kintone導入後は「システムは自分ごとである」「かけなくてもよいコストがある」「システムは必要に応じて変えていくもの」「システムで業務を効率化」に変化した。「自分たちの手で効率化できる。そんな喜びにみなさん気がついてくれました」と山本氏は語る。「成功体験って大事ですね」と仲井氏が語ると、自分自身で効率化できることに喜んでいるみんなを見ていると、山本氏もうれしくなるという。

kintoneを大学の業務の共通言語にしたい!から全学展開へ

 ここまでには学生部内での地道な活用推進があった。たとえば、学生部内で活用拡大を目指し、有志メンバーでアプリ作成勉強会を実施。しかし、続く学生部の業務改善発表会では、業務への理解が足りないと厳しいダメ出しをされてしまう。

 奨学金アプリに関しても、縦割りの組織で奨学金ごとにカスタマイズされたアプリができてしまった。これに関しては奨学金ごとではなく、アプリの担当者と手続きのマニュアルで担当者を分けることで解決された。

学生部内での地道な活用推進

 こうして試行錯誤をしていくと、他の大学での活用事例が気になってくる。ここで大阪経済大学の担当者との出会いをもたらしてくれたのが、パートナーである富士フイルムビジネスイノベーションジャパン。「kintoneのことだけじゃなく、学内の業務のいろいろなことを相談できる関係を築くことができました」と山本氏は語る。

 そんな山本氏は2024年4月に情報部門へ異動となり、学内全体のDXを推進する「情報化戦略・推進会議メンバー」にもなった。そこから山本氏は、学生部での業務改善で活用していたkintoneを「大学の業務の共通言語にしたい!」と考え、全学展開へと一歩を踏み出す。「学内の共通言語になれば、お互いに相談ができ、部署異動があっても仕事ができるのではないか」という思いだ。

kintoneを大学の業務の共通言語にしたい!

 各部署へのヒアリング、導入前説明会などをほぼ4ヶ月で終え、ワークショップやプラグイン説明会なども実施した。「このとき私が大事にしたのは、導入前にkintone利用のイメージを持ってもらうことでした」(山本氏)とのことで、各部署のヒアリングではkintoneだけでできる業務改善、プラグインを組み合わせた方がよい業務改善などを分類し、説明会も何度も実施した。

 2024年8月からは全学での運用を開始。Garoonを見れば、山本氏の8月の予定はほぼkintoneの説明会で埋まっていることがわかる。ひたすら丁寧な説明を続け、学内で利用しているSlackにはkintoneユーザーのワークスペースも開設。各部署にはkintone活用を推進する統括ユーザーを指名し、毎月の利用状況を共有するようにした。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事