週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

ワン・イーボーが素朴な青年から凛々しく変身、1930年代の中国金融業界を描く『追風者~金融界の夜明けへ~』

2025年10月20日 10時30分更新

文● 神野栄子
提供: 楽天グループ株式会社

(C)BEIJING IQIYI SCIENCE AND TECHNOLOGY CO.,LTD.CCTV.

 中国ブロマンス時代劇『陳情令』(2019年)で一躍スターの仲間入りをして以降、第一線で活躍し続けるワン・イーボー。作品ごとにさまざまなキャラクターを体現して楽しませてくれているなか、またその演技力にうなる作品が到着した。1930年代の上海で厳しい金融業界に身を投じる主人公ウェイ・ルオライを演じる『追風者~金融界の夜明けへ~』だ。
 
 全力で国に尽くす――。愛国心の強いウェイ・ルオライは、国内最高の金融機関である中央銀行の採用試験に挑む。コネもなく、実家は貧困層。大学ではなく、上海の夜間の会計学校に1年半ほど通ったが、共産党の本拠地である江西省出身という理由で卒業証書がなかなか授与されないという状況だった。このころの時代背景は、国民党が政治を主導し、革命を志す共産党は摘発の対象となっていた。ウェイ・ルオライが希望する中央銀行も国民党で、試験では知能や度胸、判断力など優秀さを認められてただ1人の合格点をたたき出すも、身元の問題から不採用になってしまった。

 もちろん、物語の始まりとなるところなので、それでは終わらない。中央銀行の高級顧問シェン・トゥーナン(ワン・ヤン)に改めて直訴するのだ。採用試験の面接で、ウェイ・ルオライのただひとつ欠けているものを見つけ出していたシェン・トゥーナンだったが、個人的な助手として雇うことに。完全に信頼してというわけではないが、その能力を見過ごすこともできなかったのだ。

 こうして夢だった金融業界へと足を踏み入れることになったウェイ・ルオライ。金融改革に取り組むシェン・トゥーナンを師と仰ぎ、突き進んでいく。

 地方出身ということもあってか、当初のウェイ・ルオライは素朴なままというのか、服装や持ち物もどこか野暮ったい。他の同期たちがネクタイをしているなかでも1人していなかったりもする。かたやシェン・トゥーナンは、海外留学をしていたエリートで、スーツの着こなしもきまっている。そんなシェン・トゥーナンは、自分の元で成長していくウェイ・ルオライに「身なりは重要だ。内も外も自信を持つんだ」と高級スーツをあつらえてやることに。

 ワン・イーボーは見た目だけではなく、回が進むごとにその顔つきの変化も見せる。経験不足からの失敗がありながらも、最初の採用試験で認められた、数字への強さやずば抜けた記憶力、度胸や判断力などが金融界の最前線で活きるたびに自信がみなぎっていくよう。そして、身なりの変化で一気に凛々しさが増す。

 しかし、その頭脳明晰さが葛藤を生むことにもなる。過酷な暴力や策略を含む、いくつもの試練を乗り越えながらも、業界の最先端では、いや応なく腐敗と闇を目の当たりにしてしまうのだ。そんななか、師であるシェン・トゥーナンと共に、彼にとって大きな存在となるのがシェン・トゥーナンの妹シェン・ジンジェン(リー・チン)。実はシェン・ジンジェンはひそかに共産党地下組織の構成員として活動している人物。異なる思想の兄妹の間で揺れるウェイ・ルオライは、自らの信念を見つめ直すときがくる。その様子をワン・イーボーは丁寧に紡ぎ出し、見る者を引き付ける。

 1人の青年が金融家として成長していく姿をとらえるとともに、上海の金融戦争のスリリングさ、ウェイ・ルオライ、シェン・トゥーナン、シェン・ジンジェンを取り巻く人間ドラマが深みを出しているのも見どころ。あらためて進化するワン・イーボーの演技力を堪能しながら楽しんでほしい。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう