スマートニュース・メディア価値観全国調査より
動画系SNSは新聞より陰謀論にはまりやすくなる傾向あり
2025年10月07日 09時30分更新
誰でも陰謀論者になる可能性がある
「陰謀論」は社会問題となっているが、陰謀論にはまりやすい人に共通点はあるのか。スマートニュースの社内シンクタンクであるスマートニュース メディア研究所による、日本全国の18~79歳の男女を対象とした「スマートニュース・メディア価値観全国調査(SMPP調査)」(2025年9月)を見てみよう。
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陰謀論とは、世の中で起きている問題の原因について、不確かな根拠をもとに誰かの陰謀のせいであると決めつける考え方を指すものだ(烏谷昌幸・慶應義塾大学教授『となりの陰謀論』<2025年、講談社現代新書>より)
陰謀論的思考を計測する尺度には、以下の5つの項目があるという。
・(項目1:極秘の事案)一般の人には決して知らされない、とても重大なことが世界で数多く起きている
・(項目2:隠された動機)政治家はふつう、自分たちの意思決定の本当の動機を教えてはくれない
・(項目3:厳重な監視)政府当局が、すべての市民を厳重に監視している
・(項目4:秘密活動)一見無関係に見える出来事が、実は何者かによる裏工作の結果だと思う
・(項目5:秘密組織)政治的な決定に強い影響力を与える秘密の組織が存在する
それぞれの項目について回答してもらったところ、項目1(極秘の事案)および項目2(隠された動機)に関して、8割超の人が陰謀論的思考に賛同していた。つまり、誰でも陰謀論者になる可能性があるということなのだ。
動画系SNSは新聞より陰謀論にはまりやすくなる
では、陰謀論的思考を持つ傾向のある人は、どのようなメディア接触の特徴があるのだろうか。
ほかのメディア利用や年齢・性別が同じ場合、動画系SNSでニュースを視聴する頻度が高いほど陰謀論スコアが高くなる一方、新聞を読む頻度が高いほど陰謀論スコアが低かったのだ。主に動画系SNSでニュースを得る人のほうが、主に新聞でニュースを得る人より陰謀論にはまりやすいというわけだ。
一方で、ネットニュースや動画以外のSNSの接触、年齢や性別といった属性による有意差は見られなかった。
動画系SNSは、レコメンドによりユーザーが好みそうな情報、バズっている情報などを積極的に表示する仕組みがある。いわゆるエコーチェンバー現象が働き、陰謀論を好む人には陰謀論を多く表示することで、より一層はまらせる仕組みがある。
一方、新聞は取材済みで情報源が確かな情報を発信するメディアだ。かなりフラットに情報を発信しているため、新聞に多く接している場合、少なくとも動画系SNSよりは陰謀論にはまりづらくなるというわけだ。
動画系SNSが悪いわけではないが、エコーチェンバー現象に陥らないよう、新聞やテレビなどほかのメディアにも触れて、広く情報を集めるようにすると陰謀論などにもはまりづらくなるはずだ。
著者紹介:高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、監修、講演などを 手がける。SNSや情報リテラシー教育に詳しい。『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社α新書)、『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『Twitter広告運用ガイド』(翔泳社)、『できるゼロからはじめるLINE超入門』(インプレス)など著作多数。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディア出演も多い。公式サイトはhttp://akiakatsuki.com/、Twitterアカウントは@akiakatsuki
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