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“平均年齢50歳越え”部署のkintone活用が全社員に勇気を与える

“Excel地獄”から始まった全社DX 若手女性社員の熱意が老舗企業の「ITなんて無理」を覆す

 消防設備事業を手掛けるプロサスにて、“平均年齢52歳”とベテラン専門職が集う設備部。同部署における事務業務の肥大化が課題となる中で、一人の若手女性社員に白羽の矢が立った。「設備部でも頑張るぞ!」と意気込む彼女を待ち受けていたのは、まさに“Excel一色”な業務。この状況を打破すべく始めたkintone活用が、やがて全社に広がっていく。

 サイボウズは、kintoneユーザーの事例イベントである「kintone hive 2025 Tokyo」を開催。4番手で登壇したプロサスの小田凪波氏、黒田章太氏からは、異動先の業務・意識変革からアナログな老舗企業を変えるまでに至った、若手社員の奮闘劇が語られた。

プロサス 小田凪波氏

ベテラン部署に異動した小田氏が挑む「Excel地獄」

 プロサスは、防災・消防設備資材の専門商社だ。1975年創業の老舗企業で、消火器や火災報知機、避難器具などを取り扱うほか、点検・工事サービスも提供している。

 同社の中で、消防設備の点検・工事を担う専門職「消防設備士」が所属するのが設備部だ。同部署は一時期、縮小傾向にあったものの、再び事業を盛り上げるために、各地からエキスパートを集めていた。ただ、消防設備士が増員される一方で、彼らを支える事務作業の肥大化が深刻な課題だったという。

 黒田氏は、「当時のプロサスは、属人的なExcel、紙の書類、古い習慣、昭和の働き方が揃った、いかにもアナログな“ザ・中小企業”でした」と振り返る。

プロサス 黒田章太氏

 この状況を打破すべく、一人の若手女性社員に白羽の矢が立った。登壇者のひとりで、今回の変革の主人公である小田氏だ。2021年1月の入社時から所属していた販売部から、新たな環境での活躍が期待され、意気揚々と設備部へ異動。しかし、小田氏を待ち受けていた現実は、想像以上に過酷なものだった。

「『設備部でも頑張るぞ!』と異動するも、平均年齢52歳、おじさんだらけの部署に、20代女性が一人放り込まれてしまうんですね…」(小田氏)

以前のプロサスは老舗あるあるの課題にまみれていた

 環境への適応に加え、小田氏を悩ませたのは「まさにExcel一色」な業務だった。同部署では、案件管理から売上報告まで、あらゆる情報をExcelで管理。しかも、その多くは20年以上使い込まれた現役のExcelファイル。小田氏は毎日、膨大な数のExcelを横断しながら、煩雑な管理業務をたった一人で捌かなければならなかった。

 さらに、現場一筋のメンバーは、ITツールに不慣れだった。Excelだらけではあるが、もちろん関数やマクロは使いこなせない。社内にはタスク管理ツールも導入されていたが、設備部の業務には合わなかった。

 このExcel地獄から抜け出すために、小田氏は、Excelと同じカレンダー形式で管理でき、いち画面に情報が集約され、なおかつITが苦手なメンバー全員が使えるツールを模索する。その中で浮上したのがkintoneだった。

 藁(わら)にもすがる思いでサイボウズと打ち合わせをした小田氏。カレンダー形式での管理、チャット機能、書類の添付や現場での確認など、そのすべてに対して「kintoneならできます!」という力強い回答を得た。こうして、2023年1月、設備部でのkintone導入が決定した。

「すごいよ小田tone!」kintoneよる業務改善で“売上は倍に”

 kintone導入後、小田氏は、早速アプリ開発に着手した。kintoneの直感的な操作性や複雑な既存Excelもそのまま読み込める機能に助けられつつ、設備部用の「案件管理アプリ」を短期間で作り上げる。

 プラグインである「カレンダーPlus」を利用して、慣れ親しんだExcel形式で案件管理ができる工夫が功を奏して、現場で混乱が生じることもなく、kintoneはスムーズに受け入れられた。

 導入効果は目覚ましかった。詳細画面内のチャット機能(コメント欄)で案件ごとのやり取りは完結して、関連する書類や写真もアプリに集約され、現場ではいち画面を見るだけですべての情報が把握できる。書類を探し回ることはなくなり、ペーパーレス化を実現。メンバーからは「小田さんが作ったkintone、すごいよ! 小田tone、すごいよ!」(黒田氏)と驚きと称賛の声が上がったという。

カレンダー形式で案件を管理するアプリを開発した

 さらに小田氏は、顧客情報などを管理するマスターアプリを作成し、案件管理アプリと紐付けた。マスターデータは、基幹システムから出力したデータを「Power Query」でひとつにまとめ、kintoneにインポートしている。この仕組みを、コマンドプロンプトとタスクスケジューラーで自動化したのもすごい。「外部からカスタマイズができるのがkintoneの強みです。ただ、私はコードを書いていません。ChatGPTが全部組んでくれました」(小田氏)

 こうして、小田氏自身がITの専門家でなくとも自動化まで実現できることを証明した。次第にITが苦手な設備部メンバーも、自らkintoneでスケジュールを管理し始める。その結果、スケジュールが最適化され、なんと売上は2倍に増加した。それにも関わらず、事務作業は小田氏だけで回せるほど、効率化も進んでいる。

kintoneによる業務改善の結果、売上は2倍に増加

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