盛岡開催の東北IT物産展で地方エンジニアが語る「働き方の選択肢は1つじゃない」
子育てのため岩手にIターン 寂しいからコミュニティを立ち上げたら、新しい地域との関わりに気づいた
2025年09月30日 15時00分更新
9月13日、盛岡市で開催された東北IT物産展 in 岩手に登壇したのはタイミーのエンジニアリングマネージャーである篠塚翔平さん。都内で働いていた篠塚さんは、子育てのために奥様の実家である岩手県にIターン。「フルリモートワークは寂しい」という課題から「盛岡スクラム」というコミュニティを立ち上げたが、地元の仲間と触れあうことで、新しい地域の関わり方に気がついたという。
岩手の自然に魅せられIターン でもスクラムの仕事がなかった
東北IT物産展は、2014年に仙台で開催されたJAWS festaのサブタイトルから生まれたITイベント。現在はJAWS-UGから独立し、青森と秋田で開催された(関連記事:秋田の東北IT物産展で聞いた北東北コミュニティの生の声)。コロナ禍を経て9年ぶりの開催となった東北IT物産展 in 岩手では、盛岡市内の岩手教育会館を会場として、地方創生やコミュニティ、AIなどをテーマにした数々のセッションが行なわれた。
開催宣言後に行なわれたのは、しのぴー(ShinoP)こと篠塚さんのセッションだ。篠塚さんは、大学卒業後、Web制作会社に新卒入社し、幅広い開発経験を積んだ後にスクラム導入を推進。東京生まれ・東京育ちだったが、今や岩手県の盛岡市にIターン移住して、2022年にタイミーにジョイン。専任スクラムマスターやアジャイルコーチのキャリアを経て、現在はエンジニアリングマネージャーを務めている。
なぜ岩手に移住したのか? これは「子供を自然豊かな環境で育てたかったから」にほかならない。篠塚さんは、岩手県宮古市にある奥様の実家に帰省するたびに、子どもたちといっしょに自然に触れあう素晴らしさに触れ、すっかり岩手に魅了された。「移住して6年ですが、Iターンして後悔していません。本当によかったと思っています」と語る。
一方で、仕事の面では苦労もあった。地方に行くと、給料が安いという懸念が大きいが、篠塚さんの場合はやりたい職種がなかったという。篠塚さんの職種であるスクラムマスターはそもそも全国規模でも募集が少なく、盛岡はますます少なかった。
いったんは地元企業に就職したものの、スクラムマスターを極めようと考えた篠塚さんが導いた選択肢は、「フルリモートのスクラムマスター」だ。その結果、転職したのが今のタイミーになる。時期的にもコロナ禍に差し掛かっており、フルリモートワークの導入が一般的になりつつあり、岩手からのフルリモート勤務も可能だったという。
「寂しい」から生まれたコミュニティ これは新しい地域との関わりでは?
しかし、都内で働いていた篠塚さんにとって、フルリモートワークには「寂しい」という課題があった。でも、地方都市で同じような寂しさを感じている人は多いはずと考えた篠塚さんはコミュニティを作ることにした。こうして2024年2月に爆誕したのが「盛岡スクラム」というコミュニティ。開発業務にとどまらない、幅広いスクラムをテーマにしており、現在でも月1回程度のイベント・飲み会を行なっているという。
きわめて個人的な「寂しい」というニーズで立ち上げられたコミュニティだが、運営を続けているうちに、篠塚さんは「これは新しい地域との関わり方では?」と感じるようになったという。
コロナ禍以降、篠塚さんのように首都圏の会社にリモートワークという形で働くビジネスパーソンは増えた。この場合、首都圏の会社で稼いだお金を地元で消費するという形態になる。つまり、新しい形の経済の循環だ。もう1つ、首都圏のスタートアップで得た経験や悩み、地元の会社のみなさんの経験や悩みが共有できるというのもメリットだ。
とはいえ、篠塚さんの岩手ワークは、あくまでフルリモートワークが可能という前提がある。しかし、スクラムマスターの篠塚さんからすると、フルリモートワークにはスキルや経験が必要で「新入社員に無理」。そのため、オンラインでも負荷を感じないコミュニケーションの場作りが重要。また、新入社員はまずオフライン・対面での業務を4~5年経験し、その業務体験をUターン・Iターンなどで持ち帰るパターンはオススメだという。
自らの岩手のIターン経験を元に地方での新しい働き方、地元との関わり方を提案した篠塚さん。最後、盛岡市内に流れる北上川と夕陽の美しい写真を添えて、「働き方の選択肢は1つではない」とアピールし、セッションを終えた。
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