第287回
導入時も試用時も不安を感じさせないプロの仕事
学童保育の基幹アプリとして機能するkintone 本職が作るとこうなる
2025年09月23日 10時00分更新
試用期間で本番運用を想定したアプリ、マニュアルも用意
こうして試用から始まったkintone導入だが、この段階で本番運用を想定したアプリが一気に10個くらい吉崎氏によって作成された。用意されたのは、各係のマニュアルや資料を作成するアプリ、児童の毎日の出欠を登録するアプリ、イベント等で撮った写真を共有するアプリなど。とにかく準備を早くし、不安を感じさせないことが重要だったという。
もう1つ大事だったのは、この時期の学童代表がkintoneの利用を積極的に推進してことだ。「学童代表がkintoneを見てくださいと、みなさんにアピールしてくれた」こともあり、1ヶ月の試用後、2022年3月に本導入が決定したという。
4月に新たに入所者が来ることを見据え、吉崎氏は新入所社用の資料も用意した。運用開始から3ヶ月後の7月には、アプリの作り方資料も作成した。「全員がアプリを作れる必要はないと思いますが、何人かはアプリを作ってもらうことにしました」(吉崎氏)とのことで、実際に作りたいという人も現われた。
吉崎氏は具体的なアプリをいくつか紹介した。今まで紙だった運営委員会の議事録はアプリ化したことで、振り返りも容易に。写真の共有も今までは管理者がまとめてアップロードしていたが、kintone化することで各人から行なえるようになった。
各保護者が個別に連絡していた出欠連絡もkintoneに移行。個別のリクエストがkintoneに登録されるため、指導員の業務も効率化。アプリはプラグインを使わない標準サービスを利用しているため、一番複雑なアプリでも7つのフィールドの組み合わせだという。
学童の基幹アプリとして機能するkintone
吉崎氏が特にアピールする「タダレン」は、登所、帰宅、習い事への出発などを小学生自身が登録する行動履歴アプリで、指導員が作ったもの。吉崎氏のお子さんが操作している場面を動画で披露したが、実際に大人以上にスムーズに使いこなしている。「うちの子も喜んで使っています。学童の子どもたちにはkintoneの英才教育をしていますので、大きくなったらヘビーユーザーになるはず」と吉崎氏は語る。
このアプリがよいのは、子供が自ら操作でき、保護者が子供の行動を把握できること。「1年生の場合は、きちんと学童に行けているか、保護者はすごく心配します。でもタダレンがあれば、子供行き先をスマホで確認できます。とても見える化に貢献しています」と吉崎氏は語る。
このようにときわ学童三明クラブでは、kintoneが基幹アプリとして機能している。コミュニケーションや資料共有などを担い、保護者、指導員、児童まで含めて学童関係者すべてが利用しているという。これにより、電話やメールでの連絡、紙資料も激減。吉崎氏は、「子供の状況や写真が共有され、学童が見える」「kintone内でいつでも連絡が取れる安心感」「いつでも、誰でも、どこでも資料にアクセスできる」など導入効果をまとめた。
実際の保護者の声も紹介されたが、「係活動の引き継ぎに役だった」「適度なクローズドさがイベントや保護者間のコミュニケーションに役立っている」「LINEやアドレスを知らなくても、個人間でちょっとした連絡ができる」など評判も上々。指導員からも、「kintoneだけで保護者と連絡できる」「タイムカード打刻がWebでできる」「アプリの再利用により、1度作れば同種のものがすぐできる」などの声が挙がった。アクセスログを調べても、1日平均でID保有者の7割弱がアクセスしており、kintoneが基幹システムとして定着していることが明らかになったという。
現在は、当初提案した使い方はあらかた達成し、より便利な使い方を検討するステージに差し掛かっているとのこと。吉崎氏もあと1年9ヶ月で学童を卒業するが、難しい使い方をしていないため、後任の心配もないという。吉崎氏は、残った期間でkintoneが注力するAIを試しつつ、「今よりわかりやすい、使いやすいにこだわっていきたい」という抱負を改めてアピール。日々利用するスマホアプリの機能充実をサイボウズにリクエストして、講演を終えた。
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