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「使われないkintone」「野良アプリ」問題をどう乗り越えたのか?

DXはゲームセンターの“落とし物管理”から加速した 海外まで広がるGENDAのkintone活用

伴走支援でECサイト風発注アプリを開発、年間4800時間の削減を実現

 落とし物管理アプリの成功をきっかけに、伴走支援による市民開発がスタートした。伴走支援において心掛けたのは、“役割分担の明確化”だ。現場である本部のスタッフとIT部門である寺井氏のチームが、毎週1時間程度の打ち合わせを行い、基本操作などをレクチャーする。そして、原則的に現場がアプリを開発し、IT部門はプラグインの導入や設定などを担当するにとどめている。

 ポイントは、最初から完璧なアプリを目指さないことだ。打ち合せを重ね、ステップアップしながら完成度を高めていくため、現場は通常業務と並行しながら無理なく進められる。そして、落とし物アプリで学んだよう、現場がアプリを作成することで、業務に沿った使いやすいアプリが出来上がる。

最初から完ぺきを求めずステップアップする戦略をとった

 改善事例の一つが、ゲームセンターのクレーンゲームの景品注文業務だ。かつては、共有フォルダーで商品画像を検索して、画像を見ながらExcelに注文数を入力するというプロセスで、その作業に30分程度要していた。

 そこで「FormBridge」と「kViewer」のプラグインを活用し、商品マスターアプリの情報をECサイトのように一覧表示させ、注文数を直接入力できる仕組みを構築。その結果、作業時間は半分になり、全店舗で年間4800時間もの作業時間を短縮した。

発注アプリを開発して年4800時間の削減に成功

 このように業務改善を進めた結果、当初1人だった支援メンバーも8名まで増え、アプリ数も20倍近く増加した。しかし、kintoneが社内に広がるにつれ、新たに「野良アプリ」問題が発生する。当時、アプリ作成に明確なルールを設けていなかったため、運用開始前のテストアプリや、まったく使われていないアプリが爆発的に増えたのだ。

「この問題の解決に加えて、グループ会社と同じサブドメインで管理すること、拡張機能の設定も現場に任せることを検討していました。これらの実現のためには適切なルールが不可欠な一方で、グループ会社、ユーザー、アプリ、拡張機能と、あらゆるものが増え、自社に合ったルール作りに悩んでいました」(寺井氏)

kintoneが浸透するにつれ支援メンバーが増え、業務削減時間も年8000時間を超えた

悩んだら先駆者に頼れ!コミュニティの力で築いたグローバル展開

 悩んだ寺井氏が選択したのが、「先駆者に頼る」ことである。まず頼ったのが「伴走パートナー」だ。ルール策定やプラグインの選定など、困った時にプロへ相談できる体制を構築した。

 もうひとつの拠り所となったのが「コミュニティ」だ。kintoneは毎月どこかでユーザー会が開催されている。何かの参考になればと思い参加した寺井氏は、先駆者はもちろん、kintone hive登壇経験者やエバンジェリストと出会い、その場で意見交換ができる有意義さに驚いたという。

「コミュニティに参加して、もうひとつ収穫がありました。我々だけでなく、誰もがkintone活用に悩んでいると気が付けたことです」(寺井氏)

伴走パートナーとコミュニティに頼ることで困りごとを解決

 伴走パートナーと先駆者たちの意見を参考に、ルール整備も進んだ。アプリ作成のルールについては、kintoneの利用を妨げないよう「緩いルール」を採用。最低限守るべきルールだけを定め、アプリ作成後には申請してもらう運用とした。申請されたアプリは、適切に作成されているかどうかを支援メンバーが確認する。

 こうしてkintone活用は浸透し、ついには国境を超えた。最初の海外導入は、台湾でゲームセンター運営を担うGiGO台湾である。報告書や申請書がまだ紙ベースで、kintoneで解決できないかという依頼を受けたのだ。これまで伴走支援やルール作成に取り組んできた経験があったため、導入は比較的スムーズに進み、現地スタッフが日本語に堪能だったことも幸いした。かつては申請から承認まで数日を要していたが、今では当日中の承認が可能になっている。

 GiGO台湾を皮切りに、現在では海外3拠点を含む、GENDAグループ7社にまでkintone活用が拡がり、このネットワークは今後も拡大していく予定だ。

進むkintoneの海外展開

 寺井氏は、「最後に伝えたいのは、kintoneは決して一人ではないということです。何万社という企業が導入しており、その数だけ先駆者が存在しています。ユーザー会などに参加すればその先駆者に出会って、きっと悩みを解決できます。みんなで使って、みんなで悩んで、みんなで解決できる。これがkintoneの良さだと感じています」と締めくくった。

 セッション後、サイボウズ 柴田氏から寺井氏に質問が投げかけられた。

柴田氏:最初の落とし物管理アプリについて、アウェイな環境の中、どのように「kintoneでやろう」と説得されたのでしょうか。

寺井氏:kintoneを導入した方が同席しており、「ちょっと試してみよう」と言ってもらえたのが後押しとなりました。

柴田氏:その後、現場の伴走支援を進められました。なかなか現場がアプリを作ってくれないという話も聞きますが、すんなり受け入れられたでしょうか。

寺井氏:正直言いますと、部署によります。積極的ではない部署とは、コミュニケーションを取りながらゆっくりと進めている状況です。

柴田氏:支援メンバーが8人に増えた過程で、チームでどうやって知識を溜めていったのでしょうか。

寺井氏:私が知識を伝えることもありますが、基本的には一緒に業務改善を進めるチームに入ってもらい、実地でスキルを向上していく形をとっています。

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