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双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細

2025年09月22日 12時00分更新

8対の光ファイバーに接続
双方向で8Tbps伝送を実現

 TeraPHYの内部構造の概略図が下の画像である。一番上がUCIe Standard Packageを4組まとめた構造で、これが8対の光ファイバーで送受信される構造になっている。

TeraPHY内部構造の概略図。V-Groove Arrayは12本分の光ファイバーが接続できるようになっているが、送受信の8本とは別にSuperNovaから入力される分が必要なのでこうなっているのだろう

 信号の変換をするのが1T Optical I/O Moduleであり、モジュールやフォトダイオードに加えてトランスインピーダンスアンプや簡単なイコライザー、モジュール補正用(MRM:Micro Ring Modulatorベース)のフィードバック回路などが各々に含まれる格好と思われる。

 それぞれのOptical I/O Moduleからは送受信用の光信号が一対ずつ出る格好となり、これが最終的に8対の光ファイバーに接続される構造と思われるが、送受信別に一番下のV-Groove Arrayで光ファイバーケーブルに接続されると考えられる。

 またリタイマーは128bit分まとめての処理になっているはずだ。全ポートを横断するようにReTimer Protocol Logicが実装されているからだ。

 ところで信号速度であるが、電気信号の側から言うと16Gbpsとされる。16bit幅のUCIe Standard Package(なのでBump Pitchは123μmと結構大きめ)を4対まとめた、64bit幅のUCIe I/Fが、上の画像でいうところの"UCIe-S Quad"に相当する。

 1つのモジュールあたり、16Gbps×16レーン×4モジュール=1Tbps(片方向)であり、これが4つで片方向あたり4Tbps、双方向で8Tbpsとなる計算だ。

オーバーヘッドの1.5%は軽視できる数字ではないが、おそらくは扱いやすさを重視したのだろう

 Advanced PackageではなくStandard Packageを使ったのは、チップとの接続にシリコン・インターポーザーの必要性を廃したためだろう。Advanced Packageはシリコン・インターポーザーないし同等の配線密度の有機インターポーザーが必要だからだ。実際123μm程度のBumpであれば、通常のPackageに実装が可能である。

 一方光信号であるが、こちらは32GbpsのNRZ(Non-Return-to-Zero:非ゼロ復帰方式)である。なのでそもそも信号速度が一致しないのだが、これをカバーするのがReTimer Protocol Adapterで、ここに2:1のギアボックスが入る。

 ギアボックスというのは信号速度を変換するメカニズムのことで、ここで言えばTX0とTX1、TX2とTX3の2bitの信号(それぞれ16Gbps)をまとめて32Gbpsの1bit信号に変換するE2Oプロトコルが2:1のギアボックスに相当する。

 逆に受信側は、32Gbps/1bitの信号を16Gbps/2bitの信号に変換する必要があるが、これは光信号を電気信号に変換したあとでFIFO(First-In, First-Out:先入れ先出し)に突っ込み、1:2で変換する格好になっている。

 なお、本文にあるMMPLはMulti-Module PHY Logicの略である。今回の場合、4bitの電気信号を2bitの光信号として送り出す(のと、2bitの光信号を4bitの電気信号にして送り出す)必要があり、この4bit分の電気信号のPHYと2bit分の光信号のPHYは各々同期して動く必要がある。これを実装している、という話である。

 一方の光信号であるが、信号速度は32GT/秒のNRZで1波長あたり32Gbpsである。前述のとおり16波長のDWDMを構成している関係で、1本の光ファイバーは片方向あたり32×16=512Gbpsの転送速度を持つ。これを8本用意することで、片方向当たり4Tbps、双方向で8Tbpsの帯域となるわけだ。

ここで言うLaneというのは、1本の光ファイバーに通される16波長のそれぞれのことを指す。つまり4波長単位でPLLとクロック信号を共有する形になる

光ファイバーはSMF(Single Mode Fiber:ファイバーの中心にだけ光が通る方式)を採用とのこと

 このTeraPHYもいきなり登場したわけではなく、まず2021年には2Tbpsのものが製造されて検証し、2023年には4Tbps、そして今年8Tbpsのものが登場したとする。

上段、太字が完了したテスト項目である。すでに第2世代のTeraPHYはHVM(High Volume Manufacturing:大量量産)に対応できるとしている。第1世代は量産に必要なテストをしていないので、これはあくまでもデモ向けである

 ちなみに用語は以下のとおり。

用語と意味
EWS Early Wireout。最初のバージョンのテープアウトを完了し、基本機能の検証が終わった
OWS Official Wireout。正式なテープアウト
EOWS Engineering Official Wireout。エンジニアリングサンプルの正式なテープアウト
Bring-up ハードウェア起動。電源が入り、基本テストや機能デバッグに成功し、チップが動作可能であることを確認
EVT Engineering Validation Test。エンジニアリングサンプル上で包括的な機能テストを実施し、仕様を満たしていることの検証が完了している
DVT Design Validation Test。最終製品に近い仕様での信頼性・互換性その他のテストが完了し、設計の量産適合性を確認
Reliability 信頼性テスト
Qual Qualification。品質認証
MCP Integration Multi Chip Packageでの統合の確認
MCP Demo Multi Chip Package上での相互通信のデモを実施
System Integration MCP Demoの上位レベルで、システム全体としての統合の確認
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