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ファーストユーザーはインドの会社 コミュニティオの成長戦略

「Teamsコバンザメ」だからグローバルも、エンプラも成長できた

 「うちはTeamsのコバンザメ企業ですから」。Microsoft Teamsの専用サービスを手がけるコミュニティオの飯田渉氏は、満面の笑みで言い放つ。そんなコミュニティオの製品は、グローバル市場で成長を続け、日本のエンタープライズや自治体での導入が相次いでいる。Teamsにすべてをベットしたコミュニティオに、その軌跡と成長戦略を聞いた。

Microsoft Teamsに特化することで成果を上げるコミュニティオ

Teams専用サービスの市場はニッチじゃない

 コミュニティオは、データホテルやテコラスの社長、オルトプラスのCTOなどを歴任した嶋田健作氏が2019年に創業。Teams経由で従業員同士でサンクスカードやデジタルギフトを贈り合う「TeamSticker」と全社メッセージをTeams経由で一斉通知する「NewCommunicator」の2つのサービスを提供している。「生産性は高くなるのに、Teamsには感情に訴えたり、ウェットな部分が欠けている。そういったTeamsで手が届かないかゆいところを弊社のツールで補います」と飯田氏は語る。

感謝の気持ちをステッカーとして送るTeamSticker

 2つのサービスは決して真新しいというわけではないが、Teamsに特化することで、ユーザーニーズに応え、圧倒的な競争優位性を誇る。エコシステムを拡大したいマイクロソフトの強力なサポートも受けつつ、マーケットプレイスで販売しているため、グローバルでの販売数も多い。TeamStickerの10万MAUは最速の成長率を記録。TeamStickerの機能をスピンオフさせてリリースしたNewCommunicatorも、最初のユーザーはインドの会社だ。グローバルだけではなく、スタートアップにも強い。「スタートアップはSlackのシェアが高い。だから、Teamsユーザーの内情を知る競合がおらず、ブルーオーシャンです」(飯田氏)だという。

 他社サービスとの連携を前提とするSlackに比べて、Teamsはさまざまな作業がTeams内で完結するのが特徴だ。ビデオ会議やメール、スケジューラー、ワークフロー、タスク管理など、Teamsの1機能として、あるいはマイクロソフト製品で提供される。こういった「ユーザーはつねにTeamsを開いている」という環境においては、TeamStickerやNewCommunicatorのようなTeams内で完結するサービスに優位性がある。

 Teams専用を謳うが、グローバル市場はニッチではない。そもそもTeamsのMAU(Monthly Active Users)は2年前の2023年の公称値ですら3億2000万を超えている。これは6000~8000万と見込まれるSlackのMAUのほぼ4倍に相当しており、TAM(Total Addressable Market)としてのポテンシャルは半端ない。圧倒的に巨大な市場においてユーザーニーズを満たすサービスを提供すれば、当然ながら勝算は高くなる。「全世界のTeamsユーザー100万社のうち、1割の10万社の導入を目指しています」(飯田氏)という。

JTCに社内コミュニケーション作りのサポート

 ご存じの通り、JTC(Japanese Traditional Company)と呼ばれる日本のエンタープライズ企業もTeamsのヘビーユーザーだ。そんなJTC向けに提供しているのは、ツールのみではなく、カスタマーサクセスだという。TeamStickerでは、「社内コミュニケーションを改善する施策や演出までプロジェクト伴走の形で、一社一社に全集中で寄り添っていくのが基本スタンスです」(飯田氏)という。

コミュニティオ飯田渉氏

 Teamsを利用するエンタープライズは、中小企業に比べて従業員が圧倒的に多く、組織の縦割りやコミュニケーション不足は共通の悩みだ。こうした悩みに対して、元JTC出身のメンバーが、自らの体験を元に社内コミュケーションのプロデュースまで手がける。これがコミュニティオの戦略だ。「プロジェクトに多くの従業員を巻き込むことに成功すると、別の部門との接点も増え、私たちSaaSベンダーが対面している部門以外の人脈や接点がどんどん増えています」と飯田氏は語る。

 AIの急速な進化による「SaaS is dead」が叫ばれる中、こうした手厚いカスタマーサクセスや外部プロフェッショナルによるBPOは、SaaS企業の今後の1つの方向性と言える。労働集約的なビジネスモデルで、中小企業を対象にするとわりに合わないかもしれないが、コミュニティオのようにエンタープライズがターゲットであれば、見える景色が変わってくる。

 Teamsにすべてをベットし、専用サービスを提供することで、グローバルでも、エンタープライズでも導入実績を伸ばすコミュニティオ。巨大プラットフォーマーの肩に乗る戦略できちんと実利をとっていくアプローチは、日本のIT企業が学ぶべき点も多いと感じられた。Teamsコバンザメが泳ぐ海はどこまでも深く、どこまでも広い。

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