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Apple Watch速報実機レポ! 「高血圧通知」も使えるSeries 11がイチオシ

2025年09月16日 21時20分更新

 アップルの新しいApple Watchを9月19日の発売に先駆けてレポートします。「Apple Watch Ultra 3」、「Apple Watch Series 11」、「Apple Watch SE 3」の重要な進化をまとめてみました。watchOS 26に関連する新機能も実機で試します。

お得なApple Watch SE 3、充実のApple Watch Ultra 3

 今回の注目株は、約3年ぶりのアップデートを迎えたエントリーモデルのApple Watch SE 3です。上位のApple Watch Series 11に迫るほどに沢山の機能を搭載しており、結果的に一番オトクな選択肢になっています。価格はGPSモデルが3万7800円から、GPS+Cellularモデルが4万5800円からです。Apple Watch SE 2から販売価格を据え置きました。新しいApple Watchの中で筆者のイチオシと言えるのか? レポートの最後に結論を述べたいと思います。

 はじめに各モデルの主な進化をおさらいします。各モデルの共通点と、watchOS 26に追加される新しい機能についても後半に触れます。

ブラックチタニウムの「Apple Watch Ultra 3」。トレイルループのバンドは側面に蛍光体を塗布した糸を編み込んでいます

 Apple Watch Ultra 3は49ミリのチタニウムケースで、ナチュラルとブラックの2色展開。価格はApple Watch Ultra 2から1000円アップした12万9800円からです。

 強化したポイントのひとつがディスプレイ。バックプレーンに最新世代のLTPO3(低温多結晶酸化物)を採用する広視野角のOLEDにより、たとえば画面を斜めからのぞき込んだ時の視認性が高まっています。屋外で第一世代のApple Watch Ultra 1と比較してみましたが、アイコンの明るさ、輪郭の明瞭度にわずかですが差が現れます。

左がApple Watch Ultra 3、右が初代。屋外の明るい場所でディスプレイを斜めからのぞき込んだ時の視認性が少し高くなっています

 常時表示モードのリフレッシュレートが1分/1回から1秒/1回に高速化され、手首を上げなくても刻まれる秒針の位置を確認できます。

 バッテリーセルのキャパシティーを6%向上したり、システム全体の最適化を図ったことによって「バッテリー持ち」も良くなりました。通常使用で最大42時間、最大72時間まで連続使用ができます。ほぼ2日間は充電を足さなくても使えるのはありがたいです。高速充電は15分間で最大12時間の使用分をチャージできます。

 セルラー通信機能は3つのモデルがともに5Gに対応しました。加えてUltra 3は衛星通信による送受信機能を内蔵しています。電波の届かない山間部などで、緊急SOSによるメッセージ送信などができます。

 屋外で衛星通信のデモを試してみました。画面に表示されるガイダンスに従って衛星の現在地を捉えると、ディスプレイに表示される丸いアイコンがグレーからグリーンに変わり、触覚フィードバックを返してくれます。衛星通信をコンプリケーションに配置すれば、使用する可能性が高い方はすばやくアクセスできます。

 Ultraシリーズは本体のデザインを大きく変えていませんが、ディスプレイの改良を図ったことで周囲のベゼルを約24%も狭く設計できました。画面の表示領域が拡大しています。ケースは新たに3Dプリントで製造する手法を採り、従来世代の約半分の原材料で製造したエコなUltraです。

衛星通信のデモモード。コンプリケーションとして配置することもできます

衛星のトラッキングが成功した状態。触覚フィードバックも返されます

左は初代、右がApple Watch Ultra 3。ディスプレイ周囲のベゼルが24%狭くなっています

Apple Watch Series 11は納得のオールラウンダー

 Apple Watch Series 11には従来通り、GPSモデルとGPS+Cellularモデルがあります。ケースのサイズは46ミリと42ミリ。素材はアルミニウムとチタニウム。アルミニウムのモデルの価格はGPSモデルが6万4800円(税込)から、セルラー通信機能付きのモデルが8万800円から。Apple Watch Series 10からの価格アップは5000円ずつです。ケースのカラバリにスペースグレイが新しく加わりました。

46ミリ・アルミニウムケースの「Apple Watch Series 11」

 バッテリーセルのキャパシティを46ミリが11%、42ミリは9%向上しています。1度のフル充電からのバッテリー持ちが、Apple Watch Series 10の最大18時間から伸びて最大24時間になり、頼もしく感じられます。15分間の高速充電で最大8時間のバッテリー駆動が可能。

 アルミニウムモデルのカバーガラスは約2倍の耐擦傷性能を備えたIon-Xガラス。アップル独自のセラミックコーティングを施しています。チタニウムモデルはサファイア前面クリスタルを採用。

新色のスペースグレイが加わりました

機能はApple Watch Series 10なみのApple Watch SE 3

 Apple Watch SE 3には、上位のナンバリングシリーズから多くの先進機能を受け継いでいます。ケースの素材はアルミニウム、サイズは44ミリと40ミリ。カラバリはミッドナイトとスターライト。GPSモデルが3万7800円から、GPS+Cellularモデルが4万5800円から。

40ミリの「Apple Watch SE 3」。機能が充実したエントリーモデルです

 Apple Watch SE 3には上位モデルも搭載する、アップル独自開発の「S10」チップを採用しています。その高性能を活かして、常時表示ディスプレイやダブルタップに手首フリックのジェスチャーなど、便利な機能をSEシリーズに初めて追加しました。高速充電も前世代から最大2倍速くなっています。そのほか、ヘルスケア関連のアップデートとして、手首の皮膚温センサーも追加してます。さらに睡眠時無呼吸の通知にも対応しています。とても“お買い得感”があるように感じました。

 ただ、ひとつ注意したいポイントは、このあとに解説する「高血圧通知」がApple Watch SE 3では使えません。搭載する光学式心拍センサーがApple Watch SE 3は1世代前のものだからです。Apple Watchで高血圧通知を使いたいという方は、Apple Watch Series 9以降、Apple Watch Ultra 2以降のモデルを手に入れましょう。

 Apple Watch SE 3もカバーガラスはApple Watch Series 11と同等の強度を持つIon-Xガラスとしています。前世代のApple Watch SE 2と比べて4倍の耐亀裂性能があります。本体に内蔵する高出力のスピーカーによるメディア再生にも対応しました。

Apple Watchシリーズが5G対応になった理由

 新しいApple Watchは3モデルともに5G SA(Stand Alone)による接続となります。日本の通信キャリアはNTTドコモ、au、ソフトバンクが対応します。ソフトバンクは次世代のIoT向け通信規格である5G RedCapのネットワークを新しいApple Watchのユーザーに提供することを発表しました。

 そもそもApple Watchには動画やWebを視聴する機能がないのに、アップルはなぜ5G対応を進めたのでしょうか。アップルはその理由として、音楽やポッドキャスト、アプリのダウンロードがより速くなることを挙げています。新しいApple Watchが搭載する5Gモデムは省電力性能にも優れていることから、デバイス全体のパワーセービングにもつながります。いわば将来に備えて先取りした5G対応への進化というわけです。なお、4Gプランを契約変更しなくても4G接続でも使えます。

 新しいApple Watchの発売に合わせて2種類の文字盤が追加されます。ひとつは「フロー」。Liquid Glassデザインに沿った透明な時刻表示の背景に、手首を傾けると鮮やかな色の背景が形を変えながら移動します。コンプリケーションには非対応。Apple Watch本体にLiquid Glass的なデザイン変更がなかった代わりに、この文字盤で強調している感じです。Ultra 3の大きなディスプレイによく映えます。

Liquid Glassデザインの魅力が楽しめる「フロー」の文字盤

 もうひとつは「イグザクトグラフ」。時・分・秒に分かれている文字盤をタップすると、分と秒のダイヤルが5倍表示に拡大して、より細かい時間が確認できます。でもそれで便利になるか? といえば微妙に感じられるデザインコンシャスな文字盤です。4つのコーナーにコンプリケーションが置けます。

4つのコンプリケーションを配置できる「イグザクトグラフ」

日本上陸が決定した「高血圧通知」を解説

 新機能の「高血圧通知」を解説します。なお、高血圧の通知機能が年内に日本でも提供開始予定であることをアップルが明らかにしました。対応するモデルはApple Watch Series 9以降、Apple Watch Ultra 2以降のモデルになります。

 Apple Watchが光学式心拍センサーのデータを用いて、心拍に対する血管の反応を解析します。バックグラウンドで作動し続けるアルゴリズムにより、ユーザーが30日間に渡ってウォッチを身に着けたデータから14日以上の有効なデータを判別。高血圧の一貫した兆候が検出された場合に通知します。1日の間に時計を外して過ごしても大丈夫ですが、丸1日計測をしないままだと30日の計測がいったんリセットされて、また1からやり直しになるので要注意。

Apple Watchを約1ヵ月間身に着けて、血圧の変化を計測する「高血圧通知」の機能。解析結果をウォッチに通知してくれます

 この機能は「心電図」や「血中酸素ウェルネス」のように、アプリを起動してオンデマンドで健康に関するデータを計測するものではありません。どちらかと言えば昨年リリースした「睡眠時無呼吸症候群の通知」機能に似ています。計測データの推移はiOSのヘルスケアアプリからグラフでみることもできます。

 筆者はどちらかと言えば血圧が低く、そのせいか血行が良くないことに起因する病気にかかりがちです。Apple Watchに、今後低血圧のユーザーをサポートする機能も拡大搭載してほしいと思いました。なお、先ほどお伝えしたようにApple Watch SE 3は搭載する光学式心拍センサーが、Apple Watch Series 11やApple Watch Ultra 3の一世代前のものであることから、残念ながら高血圧通知に非対応です。購入を検討する際に注意してください。

衛星経由の緊急SOSの使い方

 Apple Watch Ultra 3に、iPhoneと同じシステムを利用する衛星経由の緊急SOS機能が搭載されました。緊急時以外でも、衛星通信を利用して「探す」アプリで自分の位置情報を友人に知らせることができます。

 この機能はアップルが開催したイベントでデモンストレーションを体験しました。手順を紹介します。衛星通信機能は屋外の空が見える環境で利用できます。建物の中や、屋外でも多くの木々が空の視界を遮る場所などでは接続できません。

Apple Watch Ultra 3は衛星経由の緊急SOS機能を搭載。双方向のメッセージ機能が使えます

 Apple Watch Ultra 3には衛星接続の機能を体験できるデモモードがあり、緊急事態に陥る前に起動の仕方を練習できます。日本国内でも試せます。衛星への接続が完了すると手首に触感フィードバックが返されて、画面のドット表示がグレーからグリーンに変わります。

 実際に使用する際には、電話アプリから緊急通報をかけて、衛星経由で緊急テキストを送信するオプションも表示されます。「怪我人はいるか」「どのような緊急事態か」といった簡単な質問票にタップして返しながらメッセージの送受信ができるので、慌てている時にも冷静な対処ができそうです。質問票への回答、現在地、そしてユーザーが共有を選択しているメディカルIDの情報が衛星経由でメッセージとして送信されます。オペレーターがメッセージを受信すると、その後はテキストによる通信が可能になります。

「睡眠スコア」や「メモ」などwatchOS 26の新機能

 watchOS 26から新規に加わる2つのアプリを試しました。ひとつはApple Watchの「睡眠」アプリに追加される「睡眠スコア」です。ウォッチを着けたまま眠り、睡眠の「パターン」や「質」を把握します。結果はiPhoneのヘルスケアアプリ、Apple Watchの睡眠アプリの両方で確認できます。

 睡眠スコアはひと晩眠るごとに記録されます。指標は「長さ」「就寝時刻」「睡眠中断」の3つ。スコアの配分は5:3:2の割合になっていて、「長さ」のスコアを獲得するほど全体に多く加点される傾向にあるようです。

睡眠アプリに追加される「睡眠スコア」。Apple Watchを装着して眠った時の睡眠の質をチェックできます

 ヘルスケアアプリでは睡眠スコアの変遷をグラフで見ることもできます。フィットネスアプリの「バッジ」ように、良いスコアが出ると報酬がもらえるとやり甲斐が増すように思うのですが、そのような機能はありません。

 もうひとつ、watchOSに初めてアップル純正の「メモ」アプリが登場します。iPhoneやMacで作成したメモをApple Watchで確認できます。筆者はiPhoneで海外ドラマを見ながら、覚えたい英語のフレーズを英語字幕で確認してメモに残しています。iPhoneで動画を止めずに見ながら、Apple Watchのメモでフレーズを書き留められたら最高です。

 ところがApple Watchから「新規メモの作成」はできるのですが、作成したメモに追記や修正ができません。ここはぜひ、もう一歩踏み込んだ対応を期待したいです。なお、Apple Watchのメモアプリから、メモに添付されている画像やウェブリンクは参照できました。PDFやオーディオ録音は開けません。

仕事や勉強の役にも立ちそうなwatchOSの「メモ」アプリ

 今回、3つの新しいApple Watchをいっぺんに試しました。手首フリックやダブルタップのジェスチャーも使えるエントリーモデルのApple Watch SE 3の「お買い得」はやはり際立って感じられます。ただ、長くナンバリングシリーズとUltraを使ってきた筆者は、Apple Watch SE 3だと画面の表示領域がきゅうくつに感じてしまいました。高血圧通知機能に対応するアドバンテージも考慮に入れると、やはり今回はApple Watch Series 11が筆者のイチオシです。

筆者紹介――山本 敦
 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

 

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