第841回
Gen1で3倍、Gen2で14倍の帯域幅を実現! Celestial AIのPFLinkがネットワークスイッチを劇的に進化させる
2025年09月15日 12時00分更新
LightmatterがMRMを採用するのに対し
Celestial AIは真逆のMRMをモジュラーに採用
興味深いのは、モジュラーにMRM(Micro Ring Modulator)ではなくEAM(Electro-Absorption Modulator:電気吸収型変調器)を利用することだ。
EAMそのものは、光イーサネット用の変調器としてそれなりに使われており、実績もあるので別に珍しいわけではない。ただMRMに比べると寸法が大きかったり、周波数特性が緩かったり、消費電力がMRMより大きかったりといった理由で、あまりチップ間インターコネクトに採用されるケースはない(筆者が知る限りCelestial AIが唯一)のだが、Celestial AIではその温度安定性を最大の利点として挙げているのは興味深い。
余談だが、これと真っ向から逆の立場を取っているのがLightmatterだ。下の画像は連載839回では示さなかったスライドだが、LightmatterはEAMに比べるとMRMが圧倒的に優れているとする。
Lightmatterは、MRMはFeedback loopで温度変動をカバーできるとしている。確かインテルも以前の説明では、Feedback loop回路を組み込むことで温度変動に対応できるとしていた
理由の1つは寸法の小ささもあるのだろうが、それよりも光学帯域幅の広さ(というより狭さ)である。MRMは極めて細かく波長の制御ができる、つまり広い範囲をカバーできないが、それゆえにWDMを構成しようと思った場合には下の画像のように、ほぼ波長1nm刻みでピークを選択可能である。
あとMRMを連続して並べるだけでWDMが構成できるので、MUX/DeMUXを別に用意する必要がない。すなわちWDMを前提にすると、EAMよりも圧倒的にコンパクトにPICを構成できる。逆にCelestial AIは、波長を幅広く(30nm)カバーしておりWDMには向いていない一方で、信号の伝達特性に優れている。
前ページでも示した上の画像で"Eliminates need for DSP"という記述があったが、これは信号の伝達特性に優れているのでエラーの頻度が低く、エラー訂正能力が高い代わりにオーバーヘッドの大きい強力なFEC(Forward Error Correction)を利用する必要がなく、FECを使わないのであれば消費電力の大きなDSPを使う必要もない、というわけだ。
といってもエラーが完全になくなるわけではないので、PCI Expressと同じようにオーバーヘッドが少ない軽量FECを併用。これで出るエラーはCRCで検出し、リンクレイヤーでの再送をかける(FLIT)という仕組みを利用することでエラーに対応する。
ここまでしてEAMを利用する理由は、上の画像の01にある「数千WのXPUにも対応できる」を実現するためだろう。数千WのXPUは当然液冷が前提になるが、液冷にしたらチップ温度が20度に下がるというわけにはいかない。おそらく80~90度が保たれた状態での連続運用になるだろうし、この温度範囲で安定動作するのはEAMしかなかった、という判断なのだろう。このあたりは、MRMを選択したほかのベンダーの意向を聞きたいところだ。
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