Backlog20周年記念対談 チームワークとマネジメントの関係とは?
成長の限界を超える組織作りとは? ヌーラボとベイジで「最良の方法」を考えてみた
2025年09月04日 11時00分更新
組織作りはサイトマップや回路図の設計
枌谷:橋本さんって、エンジニアですよね。僕は組織作りって、Web制作っぽいなと思うんですよ。
橋本:確かにものすごくロジカルな作業ですよね。
枌谷:情報設計とか、アーキテクチャ設計っぽいですよね。
橋本:めちゃめちゃクリエイターな感じしますね。僕は組織図とか、頭の中では完全に回路図をイメージしています。電気がこう流れているから、この回路が一番効率いいねとか。
枌谷:僕はサイトマップです(笑)。人の回遊動線とか、グローバルナビゲーションには何を置くべきか考えてしまいます。
逆にエンジニアにおける開発とか、デザインとちょっと違うのは、自分でコントロールできない領域がすごく多くって、偶発性をけっこう取り込まなければいけないところです。特に人の問題は偶発性や不確実性の塊で、情報設計的に計画的にロジカルに考えて誰かをアサインしても、本人の個人的な理由で「やりたくないです」と言われることも起こりますよね。
橋本:だから、感情のレベルも見越して、構造として、システムとして組織に落とし込むみたいなところが必要ですよね。
大谷:逆に言うと、「ここにこの人を入れたら意外にはまった!」みたいなこともありますか?
枌谷:化学反応的なやつはありますね。予期せぬバグというか(笑)、こんな仕様意図してなかったけど結果的に良い方向に行ったみたいな。
橋本:で、いい化学反応が起こったら、あとから「オレの言ったとおりだろ」というヤツです(笑)
必要なのは「自分で行動できる人」 だから、採用は大事
大谷:ヌーラボでは、強いチームを作るために何か意識してやっていることはありますか? まあ、知ってれば、もうやっとるわいみたいな話もありますけど(笑)。
橋本:そうですね。現実的には強い人を採用するのが一番早いですよね。
大谷:強い人とは?という定義は難しいですが、どんな人が強いと思いますか?
橋本:ちゃんと自分で行動できる人ですね。受け身ではなく、自走できる人。
大谷:ヌーラボが提唱するチームワークマネジメントの「リーダーシップ」に通じますね。とはいえ、自ら行動できる人や企業文化にあった人をとろうとすると、けっこう難易度が高いですよね。
枌谷:確かに採用はめちゃくちゃ難しい。その採用の難易度を下げるのに必要なのが、育成の仕組みです。「いい人なんだけど、もっと引き出せるかも」という人を育てていく仕組みがある会社と、「即戦力じゃないと機能しない」という会社では、採用の条件が変わります。育成がきちんとできる仕組みがあると、人柄採用でOKになるので、採用難易度は下げられる。
実際、僕たちもクライアントの採用サイトをよく手がけていますが、未経験でもゼロから育てられる会社の方が、やはり人材は集めやすい。一方で、即戦力を求める会社は理想的な人に出会えないと採用できません。同じ業種でも明確に差が出ていますので、採用と育成ってつくづく関連しているなと思います。
プロジェクトはチームや顧客とのジャムセッション だから作り過ぎない
大谷:チーム力を上げる方法のうち、先ほど話していた偶発性を取り込むみたいなことができるんでしょうか?
橋本:「面白がり力」。あとは偶発性に対して、感度を高くしておくことでしょうね。「風が吹くとなぜ桶屋が儲かるんだろう」をしっかり科学するか、単にぼやくかで全然違う。期待値と違う偶発性が生まれたら、そこを再現性の高いものにしていくためのトライや研究は重要だと思います。
枌谷:やはり組織の柔軟性とかが重要になるんじゃないですかね。「組織はこうあるべき」とか、「このルールに従わないとダメ」みたいなのが強いと、想定外なアイデアを持った人がはじかれちゃうけど、こういうのやってみたら面白いみたいな空気とか、カルチャーがあると、いいのではないかと。
音楽好きだとよく使うメタファーなんですけど、組織作りって、みんながストリーミングで聞くきちんとプロデュースされた音楽ではなく、ライブでしか楽しめないジャムセッションだなと思っています。他のメンバーがなにを弾くか、どう叩くかわからないけど、それに合わせてコードやリズム合わせて、長い1曲ができるみたいなジャムセッションに近いところが組織作りにはある。
しかも、私たちの仕事にはチームメンバーに加えて、顧客もいます。関わる変数が多いので、そもそもジャムセッション度がすごく高い。だからこそ、僕としては、マネジメントシステムをあまり精密に作り過ぎないようしているかもしれません。
大谷:なるほど。自分で動ける人じゃないと、ジャムセッションは難しいですね。
枌谷:昔、うちはWeb制作で発生する100個くらいのタスクを全部分解して、1個ずつにドキュメントと強固なワークフローを作っていたのですが、あるときからそれ止めようという話になりました。今は都度考えて、柔軟に提案変えるみたいなことやっています。
大谷:かっちりワークフローとドキュメントを作ったけど、結局これって機能しないかもという話になったんですね。
枌谷:「正解を求め出す文化」になっちゃうんですよ。みんなが「このドキュメントないんですか?」「このワークフローないんですか?」になると、自分で考えなくなるんです。
橋本:ワークフローをこなすことが仕事になり、なにかしら成果物を出すことが、その副産物という感じになってしまう。でも、本当は逆で、アウトプットを出すのが本当の仕事で、ワークフローを進めるのはあくまで過程。なんならなくてもいいとすら思っています。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう

