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長距離伝送も安心! 1kmを3dBの損失でクリアするPassageの驚異的な光通信性能

2025年09月01日 12時00分更新

解決しなければならない課題が山積み
Passageの実用にはまだ時間がかかりそう

 一応完成度はそれなりに高そうなPassageであるが、気になる点は2つある。1つはHBMへの対応。AI向けプロセッサーを念頭に置いている以上、HBMへの対応は絶対に必要になるが、まさか光ファイバーでつないだ先の別チップにHBMというわけもいかないだろうから、Passageの上にシリコン・インターポーザーを載せて、そこにHBMとチップを載せるという形になるはずだが、そうした対応がどうなっているのか現時点で説明が一切ない。

 もう1つが、既存の設計とのマイグレーションである。Passage上のタイル(チップレットのこと)にはテンプレートがあり、これにあわせて作ることで電気信号と光信号の両方を利用できるようになるとされるが、逆に言えばこれにGPUなりAIチップなりの配置を合わせないと使えないことになる。このあたりを今後どうするかという話である。

16.4×28.2mmがタイルの寸法であり、隣接したタイル同士はこの中央部の9×4.4mmの範囲で電気信号での接続も可能としている

 なんとなく、HBMの件も含めてEICとASICの間に1枚インターポーザー(それがシリコンなのか、最近注目を浴びている有機なのかは議論の余地があるが)を挟み、ここでHBMその他への接続と、ASICの配線をEICに合わせるための配慮が必要になりそうだが、そう考えるとまだ実用には時間がかかりそうな気がする。

 Hot Interconnectsの折にCEOのHarris博士に「LightmatterはもともとEnviseという製品をメインに据えており、PassageはEnvise用のインターコネクトだったはずが、今ではPassageが主力製品となっています。Enviseの方向性は放棄されたと考えてよいでしょうか?」と質問を投げたところ、「現代のAIワークロードの制約は演算処理ではなく、メモリーアクセスとデータ転送が制約となっている。我々は今まさにこれらの課題を解決しつつあり、これが解決されれば演算処理分野で大きな革新の機会が生まれると確信している」という返事だった。

 つまり、Passageでインターコネクトの問題を解決できれば、Enviseの出番がやってくる(逆に言えばPassageなしでEnviseだけ提供しても解にならない)と考えているという話である。なかなか興味深い返答だが、しかしまだ先は長そうだ。

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