第469回
ワットパフォーマンスの大幅改善でHEDTの王者が完全体に、Zen 5世代CPU「Ryzen Threadripper 9000」シリーズをレビュー
2025年07月30日 22時00分更新
「Blender Benchmark(Blender Open Data)」
続いてはBlender Benchmarkだ。Blenderのバージョンはつい先日解放された「v4.5.0」を選択。3つのシーンをCPUでレンダリングした際のスコアーを比較した。
全体傾向としてはCINEBENCH 2024と変わらないが、Threadripper 9980Xに対するThreadripper PRO 9995WXの伸びがやや大きめ(約23%向上)に出ている。Ryzen 9 9950Xから見るとThreadripper PRO 9995WXのスコアーは約4倍。210万円出して4倍か……と考えてしまうが限界領域に挑むための装備は、得てしてこういうものなのだ(ECC対応やさまざまなセキュリティー機能など、Threadripper PRO 9995WXにはスコアー化できない機能が多い)。
「HandBrake」
続いてはHandBrakeを用いて動画エンコードの時間を比較する。ソースは再生時間3分、4K@60fpsのMP4動画であり、これをプリセットの「Super HQ 1080p30 Surround」と「Super HQ 2160p60 4K AV1 Surround」を利用してそれぞれフルHD/ H.264および4K/ AV1の動画にエンコードする。
H.264かつフルHDへのエンコードでは新旧Threadripperに大きな差はない。最速はThreadripper 9980Xであり、よりコア数の多いThreadripper PRO 9995WXに10秒差をつけている。僅差ではあるが、コア数においてThreadripper 7980Xより少ないThreadripper 9970Xの方が高速という下剋上も観測できた。
一方AV1かつ4Kへのエンコードでは傾向が激変。Zen 4世代のThreadripper 7980XとThreadripper 7970XはRyzen 9 9950Xより処理時間が長くなった。Handbrakeに搭載されているエンコーダー(x265)は処理の並列度がそれほど高くないため、物理16コアのRyzenでも十分パフォーマンスが出せる。むしろコア数が多いほど不利になるといったところか。
そしてThreadripper 7000シリーズより高速な理由は、Zen 5で搭載されたAVX命令への強化(512bitのダブルパンプ)などが効いていると思われる。
消費電力
先のHandBrakeでSuper HQ 1080p30 Surroundによるエンコードを実施している時に、システムおよびCPUがどの程度の電力を消費しているかをHWBusters「Powenetics v2」を利用して計測した。高負荷時の値に3つの値があるが、平均/ 99パーセンタイル/ 最大に分けて集計している。また、アイドル時は3分間の平均値を採用している。
物理96コアのThreadripper PRO 9995WXの消費電力がどれだけのものか不安だったが、いざ計測してみると高負荷時の消費電力はThreadripper 9980Xを大きく下回った。CPU単体の消費電力に注目しても、平均値においてThreadripper 9980Xより50W程度低い。
そんなことよりもThreadripper 9000シリーズは7000シリーズよりも瞬間的な消費電力は増えている一方で、平均としてはThreadripper 7000シリーズより低い。つまりThreadripper 9000シリーズは旧世代に比較してワットパフォーマンスが大幅に向上していることがわかる。
さらに言えばThreadripper 9000シリーズは7000シリーズに比してアイドル時の消費電力が低い点にも注目したい。
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