「仕事が奪われる」は100年前も 恐れと不安をどのように払拭するのか?
AIで成果を出すための5つのヒント Asanaが2000人の調査で明らかに
2025年07月31日 09時00分更新
「せっかくAIを導入したのに、成果が出ない。投資対効果が現れない」。多くの企業が直面するこの課題に対して、5つのヒントを挙げたのは、ワークマネジメントサービスを手がけるAsanaだ。2000人以上のビジネスパーソンの調査を元にしたAI導入成功の秘訣とは? 発表会の模様をお届けする。
AIは当たり前 でも、効果に結びつかないのはなぜ?
2025年7月29日に開催された発表会、冒頭に登壇したAsana Japan ゼネラルマネージャーの立山東氏は、Asanaのビジネス概況を説明した。
2008年にサンフランシスコで創業されたAsanaは、ワークマネジメントをサービスとして手がける。タスク管理、プロジェクト管理の枠を超え、目標設定や戦略の実行、日々の業務管理までを統一したプラットフォームで利用できるのが最大の特徴。昨今はOpenAIやAnthropicなどのAIパートナーとともに生成AIの導入も積極的に推進しており、AIをチームメイトとして利用できる環境を整えている。
日本法人は2019年に設立。2020年にはニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場を実現している。2025年1月時点の有料ユーザー数は350万人超で、2025年7月時点でフォーチュン500企業の85%がAsanaを利用している。「日本でも非常に幅広い業界で、企業の大小問わず、ご採用いただいている。そしてAsanaの特徴として、部門ではなく、全社の多くの社員にご利用いただいている」と立山氏は語る。
業務フローの欠如がツールの乱立を生む
続いてトピックに掲げたのは企業のAI導入について。AIはすでにビジネスにおいて当たり前の存在となってきた。過去を振り返れば、1700年代の蒸気機関、1800年代の電気、そしてインターネットが労働生産性への貢献を実現してきたが、AIはインターネットを超える貢献をもたらすという。しかし、多くの企業がビジネス成果を創出し、投資対効果を得るのに苦労しているのも事実だ。
この原因として、立山氏はツールが乱立していること挙げる。「ばらばらのツールでコラボレーションが行なわれている。いざいっしょに仕事しようとすると、数十年前から使っている表計算ソフトでまとめている。ここにAIを導入しても、かえって効率が落ちるという事態も起こっている」と立山氏は指摘する。これは「誰が」「なにを」「いつ」「どのように」「なぜ」行なうのかという業務フローが確立されていないことに起因しているという。
これに対してAsanaは、仕事の流れを把握するための「ワークグラフ」を基盤とし、上位のミッションから、ゴール、ポートフォリオ、プロジェクトという階層構造で、個人のタスクまで落とし込むことができる。また、Asanaはコンテンツやコミュニケーションツールをコーディネートする役割を持つ。立山氏は、「ツールは一部の人が使っても意味がない。多くの社員や外部の企業が利用できて、効果が出る」ということで、全社展開の重要性を説く。加えてAsanaは生成AIを組み込んだ機能をすでにいくつもリリース済み。昨年発表された「Asana AIスタジオ」では、コーディングなしでワークフローをAIに組み込めるほか、「スマートワークフローギャラリー」で業務ごとに構築済みのAIワークフローを活用できるという。
事業全体でAIを利用している日本企業はわずか17%
そして、Asanaのユニークな点は、SaaSとしてプロダクトを提供しているだけではなく、働き方について研究するシンクタンク「ワーク・イノベーション・ラボ」を抱えていること。昨年はグローバルでの調査とは別に、日本のビジネスパーソン2000名に対して調査を行なった「働き方の現在地:2024年の日本」のレポートを発行した。今回発表されたのは、そのレポートの2025年度版。テーマは「なぜAIだけでは、非効率な仕事がなくならないのか?」だ。
「AIと働き方の現在地:2025年の日本 AIへの過剰な期待から現実的な成果へ 乗り越えるべき5つのキャズム~」というタイトルで講演したのはAsanaのワークイノベーションリードであるマーク・ホフマン氏だ。
冒頭、ホフマン氏は、「失業は新しい機械のせいだと言われている」「ロボットがあなたの仕事を狙っている」「自動化により、10年以内に大半の単純労働がなくなるかもしれない」といったコピーを披露。最新のAIについての論調だと思いきや、実はこれらは前世紀に書かれた新聞の見出し。100年前から自動車産業での機械の導入、工場の自動化、ATM、コピー機などが登場するたびに、「仕事を奪われる」と懸念されていたという証左だ。
現在も「AIが自らの仕事を代替する」「AIを使うことで実力がないと思われる」「AIを使うことで怠け者だと思われる」といった懸念が少なからずあるという。「こういった恐れや不安がAIの利用が滞っている理由」とホフマン氏は指摘する。
確かに日本の職場でのAI導入は拡大しており、生成AIを毎週のように使っているユーザーの回答は2024年の23%から、35%へ拡大している。しかし、AIを事業全体に展開しているのは、米国の29%に対して、日本ではわずか17%にとどまっている。「みなさんが感じている疑問は、『AIへの恐れや不安をどのように乗り越えて、成果を出せばいいのだろうか?』ということ」とホフマン氏は語る。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります




