SORACOM Discovery 2025で描いた「データとネットワークの交差点のその先」
コカコーラも、ペプシも、ハイネケンも導入するIoTサービス SORACOMで世界中の40万台を見える化
2025年07月23日 10時30分更新
40万のデバイスをソラコムでデプロイし、運用するSollatek
午前中の基調講演で一般提供(GA)が発表されたSORACOM Queryについても説明が行なわれた。SORACOM Queryはソラコムが保有するデータとSORACOM Harvestに蓄えられたユーザーデータを連携させ、データ分析を可能にするDWHサービス。自然言語で知りたい情報やグラフのイメージをプロンプトとして記述すると、動的に可視化できるというデモも披露された。クエリのコマンドを編集したり、クエリをお気に入りに登録することも可能だ。
こうしたサービスが必要になってきたのは、IoTで収集されたデータが大容量化し、そこから迅速にインサイトを得る必要が出てきたから。セッションでは実事例として、SollatekのHead of IoTであるディミトリス・フロコス氏が登壇し、大量デバイスのデータ分析事例の現状とSORACOMの導入効果について説明した。
海外のスピーカーを迎えることの多い安川氏のセッションは、安川氏が通訳を兼ねることが多いが、今年はSORACOM AIを用いた通訳にチャレンジした。安川氏が通訳を依頼すると、会場には流暢な音声で返事が戻ってくる。ギリシャから来たフロコス氏は「私たちの国には共通点がある。長い歴史と文化を持ち、海に囲まれ、そしてどちらの国にも素晴らしい食べ物があります」とアピールする。
フロコス氏はギリシャから来たが、Sollatekは40年の歴史を持つイギリスの会社だ。100名のスタッフのほとんどはエンジニアで、IoTデバイスを設計と開発を行なっている。自動販売機やコーヒーメーカー、冷蔵庫などにデバイスを搭載し、温度管理やリモートメンテナンス、顧客の属性分析などを実現。顧客もコカコーラ、ペプシ、ハイネケン、ユニリーバなど名だたる企業が名を連ねている。現在は20種類近くのデバイスを提供しているが、現在は世界中にデプロイされている約40万台がSORACOMを利用しているという。
SORACOMのメリットについて、フロコス氏は「Hustle Free(苦労なし)」と表現する。「苦労しなくても、デバイスがつながり、データも解析できる。特にわれわれにとってうれしいのは、出荷先の国でどの通信を使うのか考えないでいいこと。その国で最適な通信を自動的に選択してプラグアンドプレイで利用できる」と語る。さらに「ソラコムはグローバルでのデプロイメントにおいても信頼できるテクノロジーパートナー。ただ、それだけではなくとてもいい友達」とコメント。人手の通訳にチェンジした安川氏も照れた表情を浮かべる。
さんざん褒められた後に「苦労話はないのか?」という安川氏が質問。フロコス氏は、「最初はいろいろチャレンジや変えてほしいところもあった。しかし、ソラコムに相談すると、きちんと改善してくれた。今はSORACOM Queryもできたし、困ったことがあればサポートチームに問い合わせれば、対応してくれるので助かっている」とコメント。
SORACOM Queryがリリースされる前は、大量のCSVファイルを前に格闘していたというSollatek。フロコス氏は、「まさに悪夢だった。数十万のSIMなので、ダウンロードしたCSVファイルは、すごいサイズだった。でも、今はSORACOM Queryがあるので、助かっている」と語る。改めてパートナーとしてのソラコムの優秀さをアピールし、グローバルユーザーの講演を終えた。
SORACOM Queryはなぜ必要だったのか?
さて、続いてはSORACOM Queryの開発をリードしたソラコム CTO of Japan 松井基勝氏が、SORACOM Queryについて深掘りした。Sollatekから許諾を得て披露されたのは、OSSのBIツール「Evidence」を用いたデバイス可視化の画面だ。40万ものデバイスが世界地図にマップされた画面はまさに圧巻。「大量データの可視化もSORACOM Queryを使えば、簡単にできてしまうのがBI連携のメリット。TableauやLookerなどお使いのBIツールももちろん使える」と松井氏はアピールする。
なぜSORACOM Queryのようなサービスを手がけるようになったのか? 当初はソラコムは「つなぐ」を中心に通信サービスやクラウド連携をメインに手がけてきたが、その後データの変換や蓄積などにもサービスを拡大した。しかし、IoTで蓄積されるデータは、カラムの設計された構造化データだけではなく、画像や動画のような非構造化データ、あるいは時系列データなどさまざまだ。
松井氏は、「データをどうやって効率よくDWHに入れるのか、入れた後にどのように既存のサービスと連携させるのか、どうやって活用するかを考えるのは頭が痛い問題。こういった悩みを解決するのがプラットフォーマーの役割だと思った」とコメント。この解決の一助となるのが、生成AIを導入したSORACOM Queryの役割。消費電力とCO2排出量をリアルタイムに可視化する「watXplorer」というサービスを展開している旭光電機は、SORACOM Queryとの連携でより高度な分析を実現している。
既存のSORACOM Harvestだと、センサーデータが配列に入っていたり、データ形式がIMSIではなく、Payloadの下のkeyで区別されたり、特定時刻からの差分を計算するのは難しい。その点、SORACOM Queryを利用すると、生成AIがこれらのデータを適切な形で変換し、SQLで扱うことが可能になる。松井氏は、GAにともなって整備されたSORACOM QueryのAPIについて説明し、ソラコム 上級執行役員 Chief Engineering Officer 片山暁雄氏にバトンを渡した。
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