AMD、AI開発向けGPU「Radeon AI PRO R9700」をワークステーション向けに提供開始

2025年07月19日 08時00分更新

　AMDは、人工知能（AI）開発および高スループット推論向けに特化した最新のプロフェッショナル向けビデオスカード「AMD Radeon AI PRO R9700」を発表した。本GPUは、大手システムインテグレーター（SI）パートナー製のワークステーションへの搭載から提供が開始される。

AMD Radeon AI PRO R9700

大規模AIモデル処理に強みを発揮する32GB VRAM

　近年のAI技術の進化に伴い、大規模な言語モデル（LLM）や生成系AIといった複雑なAIモデルの処理には、膨大なメモリー容量が求められる。Radeon AI PRO R9700は、この需要に応えるべく、32GBのGDDR6メモリーを搭載している点が最大の特徴だ。

　この大容量VRAMにより、AIモデルをビデオカードのメモリ上ーに完全に展開することが可能となり、システムメモリーへのアクセスによるボトルネックを解消する。これにより、高速な推論、高いスループット、そして幅広いAIモデルとの互換性を実現する。AMDのテストでは、16GBクラスの競合GPUと比較して、複雑なLLMプロンプト処理において最大5倍のパフォーマンス向上を達成したと報告されている。

　GPUの基盤となるのは、先進的なRDNA 4アーキテクチャーであり、64個のコンピュートユニットと128個の第2世代AIアクセラレーターを統合している。これにより、FP8、FP16、INT8といった様々なAIデータタイプに対応し、現代の要求の厳しいAIワークロードに必要な高い演算能力と柔軟性を提供する。

AMD Radeon AI PRO R9700は、RDNA4アーキテクチャー採用のプロ向けGPU。32GB GDDR6メモリー、64CU、128AIアクセラレーターを搭載し、AI計算で最大1531TOPSを発揮する

AIプロフェッショナルを支える設計とROCmエコシステム

　Radeon AI PRO R9700は、AIを主軸とするプロフェッショナルユーザーのために特別に設計されている。自然言語処理、テキストから画像生成、生成デザイン、マルチモーダルワークフローといったメモリー集約型または高計算負荷のタスクにおいて、その性能を最大限に発揮する。ワークロードをローカル環境で完結させることで、パフォーマンス向上に加え、レイテンシーの削減やデータセキュリティの強化にも貢献する。

　ソフトウェア面では、AMDのオープンソースプラットフォーム「ROCm」に完全に互換している。これにより、開発者はPyTorch、ONNX Runtime、TensorFlowなどの主要なAIフレームワークをRadeon AI PRO R9700搭載ワークステーション上で効率的に活用し、AIモデルの構築、テスト、デプロイを行なえる。ROCm 6.4.1のサポートと32GB VRAM、RDNA 4アーキテクチャーの組み合わせは、AIプロフェッショナルにとって性能、柔軟性、オープン標準を兼ね備えた魅力的なソリューションとなる。

GeForce RTX 5080（16GB）と比較して、さまざまな大規模AIモデル処理で最大496%（約5倍）の高速化を実現する

　Radeon AI PRO R9700は、コンパクトなデュアルスロット設計とPCIe 5.0インターフェース、ブロワー式冷却ソリューションを採用しており、複数のGPUを搭載するマルチGPUワークステーション環境に適している。この設計は、高密度なシステムにおいて効率的なエアフローを確保し、複数のカードを近接して安定稼働させることを可能にする。これにより、並列推論パイプラインの構築や、GPU間でのメモリー容量拡張、より大規模な同時モデルワークロードへの対応が容易となり、オンプレミスでの信頼性の高い高スループットAIインフラ構築に貢献する。