CData SyncでSaaS連携を内製化 売上や受注、収益まで必要なレポートを迅速に
目指せマネーボール さくらインターネットの現場が始めたデータドリブン革命
2025年07月29日 09時00分更新
さくらインターネットで他社製品を外販するマーケットプレイスチームが構築したのは、売り上げや生産高、作業時間などがリアルタイムに見えるダッシュボード。CData Syncを用いたデータ統合やBacklogとの連携、MotionBoardを用いた見える化など、現場部門が主導したシステム構築について、さくらインターネットマーケティング部 プロダクトマーケティングの深谷剛史氏に聞いた。
社内の既存のシステムが使えない だったら自ら構築しよう
今回取材したさくらインターネットの深谷剛史氏は、10年近い社歴の中で法人サポート、営業、技術本部、マーケティング部などを歴任。現在は、マーケティング部 プロダクトマーケティングに所属し、他社製品を販売するマーケットプレイスのチームを率いている。「基本的にはスーパーマーケットです。当社文化は、事業特性もあり内製思考が強いですが、IT業界は複合産業なので、セキュリティなど市場のニーズが高い製品は、自社製品と親和性を考慮のうえ提供しています」(深谷氏)。
マーケットプレイスチームが既存のプロダクトマーケティング部として独立したのは約2年前。取引先からのライセンスの仕入れ、受発注や収益の管理などは、イチからシステムを構築する必要があったという。「部署内で社外との受発注を管理する必要があったので、まずはExcelの管理簿をSharePointで共有するという方法から始めました」と深谷氏は振り返る。
しかし、暫定で利用を始めたExcelは、売上規模の拡大と顧客数の増加、管理する製品増加に伴い、フォーマットやカラム形式はばらばらになった。管理簿が増えるとディレクトリも分散し、管理が難しくなった。誰が触ったのかの履歴管理やアクセス管理も困難になった。
この課題を解決するためにマーケットプレイスチームは、データベース化を始めた。そこでMicrosoft SQL Serverを採用したマーケットプレイスDBを構築し、製品の販売と調達管理、収益管理を行なうことにしたのだ。Microsoft SQL Server を選定した理由としては「2年前は、ちょうどISMAPやガバメントクラウドなどのキーワードが社内で飛び交っていた時期なので、商用サポートのないものはソフトウェア管理に将来リスクを抱える懸念を回避したいという判断がありました」(深谷氏)とのことだ。
こうして構築されたマーケットプレイスDBを起点に、同チームではデータドリブンな業務への転換を目指した。しかし、社内を見渡すと、さくらのクラウドの販売データや会員情報などが、部署ごとに異なる管理のもと社内に点在していたという。これら点在データの取得と同期が不可欠であると判断し、取り組みを開始した。
取り組みに必要だったのは、クラウド上の一部データと販売管理データを、マーケットプレイスDBへデータ統合し、自動化するための仕組みの構築だった。「新たに独立チームであるという背景もあり、各部署の異なるシステムに操作権限があるごく一部のマーケットプレイスの担当者がクエリを作成し、データを取得していました。取得したデータは他担当者へ配布、配布されたデータをもとに、データ加工や属人的な運営報告などを行なう状況でした。まずはサービス管理者全員がデータ操作できる環境整備と必要なデータの取得・同期を自動化する必要がありました。この点からマーケットプレイスDBへデータ統合を仕組み化する必要性が高まり、本格的に検討を開始しました」と深谷氏は語る。
試行錯誤しやすいからCData Sync 本当に3ステップで設定が済む
このニーズに応えたのが、CData SoftwareのCData Syncである。CData SyncはデータベースやSaaSのデータのレプリケーションを可能にするサービス。クラウドの一部情報とBacklogのデータはマーケットプレイスのDBに格納。CData SyncやMotionBoardなどの分析用ツールは可視化、分析用の専用サーバーとして独立して存在するという。
深谷氏がCData Syncを選択した理由は、「試行錯誤がしやすい」という点だった。「ETLやELTはいくつか候補を検討しました。しかし、これらのツールは実際に動かしてみないと機能面や運用面での適合性を判断しにくいという課題がありました。加えて、少人数のなかで別のプロジェクトを進めながら、検証も同時に行なう必要があったため、導入初期から柔軟に運用できることが重要な要件となっていました。その点、コネクター単位で追加購入する他社ツールは、今回の要件と運営状況とは合致しないと判断しました。一方で、CData Syncは単一の製品で複数のサービスに接続できるため、汎用性とスピード感の両面で非常に有効でした。この点が採用を決定づける大きな要因となりました」と深谷氏は語る。
もう1つの理由は、「GUIが僕好みだったから(笑)」(深谷氏)だという。「見た目や雰囲気がさくらインターネットの暖色系に近くて親しみがありました」とのこと。エンタープライズ系の堅い印象のもなく、パーツをつないで自動化処理を作っていくようなフローGUIでもない、サービスをつなぐのにフォーカスしたシンプルな操作性もお気に入りだという。さくらのクラウド上での動作に関しては、CData Softwareでも以前から検証していたが、深谷氏のチーム自体もさくらのクラウドの環境で初期検証を行ない、クラウドホスティングライセンスで利用をスタートした。
Microsoft SQL Serverにレプリケーションしたデータは、ウイングアーク1stのBIツールであるMotionBoardで可視化している。売り上げ、前月との差分、前年度との成長比率などの売り上げ分析用のダッシュボードに加え、サービスごとのライセンス管理簿も作成し、顧客ごとに提出できるようにした。その他、収益管理や製品提供状態の棚卸、役職者や担当者向けのボードなど、さまざまな見える化を実現している。
CData Syncを利用した感想としては、「非常に簡単」とのことだ。「Webサイトに3ステップでできると書いてありましたが、謳い文句通りです」とは深谷氏の弁。社内用のクラウド環境に導入したが、インストールやGUIでの設定も容易だったという。「クラウドサービスの管理DBにつなぐための社内調整の方が大変でした(笑)」とのことだ。
また、SQLで操作ができる点も大きかったという。「僕はエンジニアではないのですが、前職でデータベースを触る仕事だったので、CData Syncジョブで管理する設定、SQLのクエリを使えるのは楽でした。条件文を書いて、ETL操作を定期的に実行することで共通管理、属人化的な管理の軽減にも役立っています」と深谷氏は語る。
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