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私も買うか迷ってます、フィルムの“不自由さ”も楽しめる縦位置専用カメラ 富士フイルム「X half」

2025年07月15日 17時00分更新

 X halfは、本来もっと「時間をかけるもの」だったん写真撮影との向かい方を考え直そう。そんな問いかけをしてくるような、ちょっと哲学的なプロダクトです。この「X half」を使ってみて感じたおすすめポイントと、購入前に知っておきたい注意点をまとめました。

 “万人受け”を狙う製品ではありませんが、写真が好きな人にとっては、きっと「そうそう、こういうのが欲しかったんだよ」と思わせてくれるような機種になるのではないでしょうか?

「X half」を使う3つのメリット

ポイント(1) アナログ風ボディーに宿る撮影体験の楽しさ、“巻き上げて撮る”という不便さも味

 X halfの一番の魅力はその「体験」です。最近のカメラは高画質で連写性能もすごくて、でも正直、撮る側の意識が薄れてきている気がします。撮って、あとで選んで、編集して、投稿して──そのサイクルがあまりに速すぎる。でもX halfは、その流れに一石を投じてきます。

 このカメラは、写真を撮る際に毎回「巻き上げ」が必要です。レバーをカチカチっと回して、フィルムを送るような動作をしてから、ようやく次の一枚が撮れる。今どきこんな操作を強制するカメラ、ほかにありますか? でもこれがクセになリマス。

 「撮る」という行為に集中できるし、1枚のシャッターを切るまでにちょっとした“間”が生まれる。その間に「あ、もうちょっと寄ってみようかな」「逆光だけどそれも味かも」なんて考えるようになる。つまり、写真に“自分の選択”が戻ってくる感覚があるんです。

 さらに、ボディサイズも絶妙。幅は105.8mm、高さは64.3mm、厚みは45.8mmとしっかりした存在感がありながら、片手でも扱いやすい重量(約240g)に抑えられています。金属調の外装も高級感があり、首から下げてもおしゃれなアクセサリー感覚で使えます。

ポイント(2)「縦構図」に振り切った設計は、スマホ時代だからこそ新しい

 X halfの最も尖ったポイントは、“すべての写真が縦位置で記録される”という仕様です。センサーが通常のカメラと違って縦に搭載されており、縦構図(3:4比率)での撮影に完全特化しています(逆に横位置で撮りたい時は、カメラを縦にします)。

 最初は「不便そう……」に思いましたが使ってみると、意外と自然。というのも、私たちが日常的にスマホで撮る写真って、ほとんどが縦じゃないですか? 友達を撮る、カフェのランチを撮る、旅行先で自撮りする──そういうとき、ほぼすべて縦なんですよね。

 X halfは、そうしたスマホ文化をカメラに落とし込んでいる。そのコンセプトが逆に今っぽいです。そして、背面の縦型ディスプレーで撮影データをスクロールする感覚も気持ちよく、まるで縦長のアルバムをめくるような感覚でした。

 横構図での撮影が不便という“縛り”もありますが、それが逆に発想を刺激してくれます。「この構図でどう撮ろう?」と工夫が生まれるのが面白いです。縦写真に特化しているからこそ、ポートレートやスナップに集中できるという不思議な快適さがあるんです。

ポイント(3)“撮り切ってから見る”という一手間が、撮影体験を豊かにする

 X halfでは、撮影した写真はすぐには見られません。撮影モードで1本分(最大18枚)をすべて撮り終えると、「現像」ボタンが表示され、ようやく撮った写真を確認できます。

 現代のカメラやスマホは、撮ったらすぐ見られて、すぐ消せる。それは便利だけど、便利すぎて「意味が軽くなる」面があります。このカメラはちょっと不便ですが、その“不便さ”が撮影に向き合う気持ちを生んでくれます。

 枚数を気にして、じっくり構えて、1枚に時間をかけて……という昔ながらの丁寧な写真体験を再構築してくれるんです。

 現像された写真の色味もさすが富士フイルムです。独特の柔らかさと深みのある色合いが出ていて、まるで本当にフィルムで撮ったような仕上がりになります。青空のグラデーション、夕暮れのオレンジ、肌のトーン──すべてがちょっとドラマチックで、でも過剰ではない。自然な“富士フイルムカラー”です。

 この現像→閲覧というワンクッションがあることで、1枚1枚の写真がより愛おしく感じられる。不思議な話ですが、撮った本人なのに「どんな写真だったっけ?」と少し忘れてて、あとから見るとちょっとしたサプライズになる──そんな楽しみ方ができます。

購入時に注意したい2つの側面

ズーム&手ブレ補正もなし、万能さは求めない方向で

 X halfのレンズは単焦点(焦点距離10.8mm、35mm換算約32mm)で、ズーム機能はありません。また、手ブレ補正機構も搭載されていません。明るい日中のスナップなら問題ありませんが、夜間や動きのある被写体には工夫が必要です。

 便利なカメラに慣れた人は「えっ、ズームもできないの?」と思うかもしれませんが、ここは「構図を自分で動いて作る楽しさ」があるし、「手ブレしないように丁寧に撮る」習慣が付くとポジティブに捉えたいです。

 「自分で工夫しながら撮るカメラ」であ理、そこに魅力を感じる人に向けた製品だということは覚えておいた方がいいでしょう。

光学ファインダーでの撮影には多少慣れが必要

 X halfは、記録メディアとしてSDカードを使用し、撮影した写真は専用スマホアプリ「X half」経由で閲覧・保存・共有するスタイルです。スマホとの連携はスムーズで、アプリ内で“現像”をしてアルバム化したりSNSへ共有することが可能です。

 PCに取り込んで編集する場合は、SDカードスロットから読み込むか、アプリで一度スマホに保存し、それを転送する形になります。

 特に「フィルムカメラモード」では、フィルム撮影の体験を再現しており、ディスプレーにはプレビュー表示ではなく「撮影枚数」や「AF・MF切り替えスイッチ」などが表示されるようになります。撮影は光学式ファインダーを除いて、自分の感覚を頼りに構図などを決める必要があります。

 これもまた味ですが、自分の思い通りの写真を一発で撮れるようになるためには多少の慣れが必要になるかもしれません。

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