第265回
広島のものづくり企業が挑んだ属人化とザ・昭和スタイルからの脱却
スーパー営業マンKさんが去る ピンチに陥った工場を1ヶ月で作ったkintoneアプリが変えてしまう
2025年06月05日 09時00分更新
1ヶ月でここまでできた 今まで見えなかった業務がkintoneに載る
そして平岡工業のこの課題を解決したのが、社長の平岡氏が見つけてきたkintoneになる。「文系管理職なのに~シュシュッと業務アプリが作れる」というCMの謳い文句にまんまと載せられた平岡氏は、「おそらくだが、オレたちのやりたいすべての管理ができる」と石井氏にアプリ作成を依頼する。
社長からの依頼に対して「ちょっとだけよ~。ダメそうならすぐ辞めますからね。今日も書類は溜まってるんですから」と念押しし、kintoneを使い始めた石井氏。しかし、サンプルアプリの注文履歴、原価管理、スケジュール管理などを見た段階で、「これはうちの課題が解決するのでは?」と、アプリ作成にのめり込んでいくことになる。
さて1ヶ月後、石井氏はアプリを社長に見てもらうことにした。「1ヶ月の間にここまでできるのか」という力作は、商談開始から見積もり、受注、発注、納品までカバー。お客さまとの商談を受けて、アプリで見積を作成し、ワークフローで承認されるというもの。すごい。
たとえば、以前は手書きとExcelが混在していた受注。年間数千枚は手書きで作成しており、月に40時間以上を費やしていた。Excelの場合は、複数名で同じExcelを使用すると、どのデータが最新なのかわからなかった。しかし、kintone導入後は承認された見積もりが受注データとして使われるので、データの二重入力がなくなった。入力項目を必須化することで、漏れやうっかりミスも撲滅できたという。FAXで送っていた指示書もボタン一発で作成でき、上司の承認もアプリで完結できるようになった。
取引先への発注もkintoneで管理することで、納期、進捗などを一目で確認できるようになった。また、不具合対策として、トラブルに対する迅速なエスカレーションや再発防止を会社全体で共有化できるようになったという。さらに原価計算も実現しており、案件ごとの原価推移を購買部門がしっかり予実管理できるようになった。
鍵はアナログ大好きの中村先輩 ベテランも若手もみんなでkintone
平岡氏は「全部できとるやんけ!」と驚く。「焼き鳥をおごってもらってもよい。なんならパイチューも付けてOK」(平岡氏)くらいの成果だったが、当然1人でここまでできたのか?という疑問が沸く。これに関して石井さんは、いまだに黒電話を利用するアナログ大好きの中村先輩にも手伝ってもらったと説明。石井氏自身もサイボウズの公式ヘルプやCybozu Developer Network、ユーザーのkintoneユーザーからの情報で学んだという。
ただ、中村さんはkintoneがきっかけでアプリも作れるようになり、会社のスマホも使えるようになった。さらに先輩の中村さんがアプリを作り始めたことで、社内のDX反対派の職員も賛成派に変わり始めたという効果をもたらした。ベテランの巻き込みは、やはり大きい。
kintoneのおかげで、石井氏の売上も倍増し、スーパー営業マンKさんの売り上げを余裕で超えるようになった。さらに今では顧客管理やスケジュール管理も可能になったので、クレームが起こってもすぐに対応できるという。「ま、未然に防ぎますけどね」と石井氏の余裕ぶりがなんだかすごい。ただ、ご褒美は焼き鳥でも、給料UPでもなく、「好きなもの飲んでいいぞ」と2人で缶コーヒーを飲むというオチで、コント仕立て、もといドラマ仕立ての寸劇は終了。最後にkintone導入のまとめに入る。
kintone導入まではどこになにがあるかわからない状況、誰かに聞かないと情報が出でこない状況だった。しかし、kintoneの導入で念願の見える化が実現し、全員が情報を確認できるようになった。「DX反対派のベテランと賛成派の若手が融合し、本当のチームになることができました」と平岡さんは聴衆にアピールする。
「現場の感覚を言葉とデータで残すことが本当のDX」と石井さんは語る。作業効率を上げたり、属人化を解消するだけがDXの目標ではない。製造業の知識、職人の技術をデータで残し活かすことが、製造業を未来につなぐ架け橋となるという。kintoneによって、ものづくりの歴史を未来につなげられると確信する2人は、「ものづくりの未来は自分で創る。カタにハマらない、ものづくりのプロ集団として、平岡工業は進み続けます!」と会場にアピールし、「引き続き、ご安全に!」と製造業らしくセッションを締めた。
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