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秋田の斉藤光学製作所は、バックオフィスを未来の基盤に変える

停滞するkintoneプロジェクト 製造業の3代目社長がチームに伝えたこと

2025年05月26日 10時30分更新

何よりも大きな成果は“プロジェクトリーダーシップ”の強化

 モチベーションも取り戻したプロジェクトチームは、販売管理から購買管理、生産管理まで、すべての業務をkintoneアプリ化していく。これによって、一元管理を実現し、他システムとの連携もスムーズになり、承認フローも明確になった。

あらゆる業務システムがkintoneアプリに置き換わる

 例えば、生産管理アプリでは、計画から管理、分析までの一連の工程を、スケジューラー機能を追加する「カレンダーPlus(ラジカルブリッジ開発)」のプラグインで可視化。受発注アプリでは、MESCIUS開発の「krew Sheet」で、リプレース前のシステムとの使用感を合わせて、「krew Data」で業務を横断的につなげて転記作業を大幅削減した。

 別々に存在していたシステムをkintone化していったため、どのアプリを使えばよいか分かりやすくなるよう、業務別にアイコンの色を変えるといった工夫も凝らしたという。

アプリのアイコンの色を業務別に統一

 当初、齊藤氏の気づきから始めた業務改善。一定期間を経て、プロジェクトのメンバーが「誰かのためになるかも」という改善の気づきを重ねるようになり、今では、他の社員からも「これアプリで作れませんか?」と気づきを持ち寄るようになった。現場主導で、業務改善がスタートし、kintoneが実際に業務を楽にする。その体験を積み重ねることで、kintone活用は本格化していった。齊藤氏は、「kintoneでのDXプロジェクトで、このように『人』と『組織』が大きく成長できた」と強調する。

 もちろん、定量的な成果も得られている。データの転記工数は30%削減され、マスターデータ(取引先・品名)の不整合も80%減少した。さらに基幹業務の70%が共通化された。ただなにより、大きな成果だったのは、プロジェクトリーダーシップが強化されたことだという。

 「中小企業では、プロジェクトの経験を積むことができない。プロジェクトをどう進めるか、チームでどう協力するのか、トップはどうメッセージを伝えるべきかを学ぶことができた」(齊藤氏)

kintoneで得られた定量的成果

 そして最後に、「私は、ずっとバックオフィスの畑で仕事をしてきて、『コストセンター』、『守りの部署』と言われてきた。だからこそ、バックオフィスを、価値を創造する、未来の生産性向上の基盤になる、重要な拠点にしたい。プロジェクトメンバーも、新しい価値を提供することに、誇りを持ち始めた。『誰が、何のために、どう変わるか』、もっともっと挑戦していきたい」と締めくくった。

経営トップが関与しないとDXは前に進まない

 プレゼン後には、サイボウズ 東北営業グループの島谷昇孝氏から質問が投げられた。

島谷氏:会社によってはDX推進担当だけ置いて、後は任せるというケースもあります。しっかりワーキンググループを作った理由は何でしょうか。

齊藤氏:責任の所在が不明確だと、プロジェクトが推進できなくなることがよくあります。だからこそ、入口の段階で枠組みをつくり、トップがコミットして、意識的に社員がやりやすい状態を整えました。

アフタートークの様子

島谷氏:リプレースしづらそうな、稼働を止めづらい業界だと思いますが、現場の反発はあったでしょうか。

齊藤氏:あったどころじゃないです(笑)。でも、大事なのは、社員が既存のシステムと同じものをつくりたがる中で、いかにゼロから業務を見直し、kintoneでアプリを作ろうという視点に持っていけるかだと思います。

島谷氏:最後に人と組織が進化した大きな要因を教えてください。

齊藤氏:組織の分断が起きないように、経営トップがプロジェクトに関わることが重要です。経営トップが直接メッセージを落としていく、これがなければDXも絶対に前には進みません。

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