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Foxconn、AIを成長戦略の中核に据え「AI Factory」を推進 COMPUTEX2025基調講演

スマートEVとスマートシティプラットフォーム

 Foxconnはスマート製造と並行して、スマートEVおよびスマートシティ分野へのAI応用も進めている。特にスマートEV開発を通じて得られたデータから、既存のスマートシティアプリケーションが個別にサイロ化されており、データや知識の共有が不十分であるという課題を認識した。

 この課題を解決するため、Foxconnはスマートシティプラットフォームの開発に取り組んでいる。このプラットフォームは、政府、企業、市民を結びつけ、スマート交通、スマート病院などの多様なアプリケーション間でのデータと知識の円滑な共有を可能にすることを目指す。現在、高雄市をはじめとする台湾国内の複数の都市でプラットフォームの実装が進められており、台湾外の都市との連携も開始されている。

 スマートEV分野では、顧客向けにスマートEVプラットフォームを提供し、オンボードおよびオフボードのアプリケーションを含める。このプラットフォームは、MIH(Mobility in Harmony)オープンEVアライアンスのメンバーに対して公開する計画もある。

 最近の発表では、三菱自動車がFoxconnのEVリファレンスモデルを採用する最初の自動車メーカーとなることが明らかになった。これにより、顧客はEV開発プロセスにおいて作業負荷を最大80%削減でき、開発期間の短縮とコスト削減を実現できるとLiu氏は説明した。三菱自動車向けEVは、Foxconnの子会社であるFoxtronが開発し、台湾の裕隆汽車が製造を担い、2026年下半期にオセアニア市場に投入される予定とのこと。

「Foxconn Brain」と大規模AIデータセンターの構築

 スマート製造、スマートEV、スマートシティという三大プラットフォームを効率的にサポートするため、Foxconnはドメイン特化型のAIモデル「Foxconn Brain」の開発に着手している。Liu氏は、製造業やEV分野のデータは数字であっても機械によって意味が異なり、ドメイン固有の深い理解が必要であるため、汎用的な基盤モデルでは限界があると指摘。ドメイン知識がない場合、モデルは「幻想」や間違った回答を生成する可能性があるという。

 Foxconn Brainは、MetaのLlama 3やLlama 4といったオープンソースモデルを基盤とし、高品質で大規模な事前学習コーパスを用いて構築される。特に、ドメイン固有のアプリケーションにおけるエージェントワークフローを用いた推論に特化したモデルを目指している。Foxconnは将来的にFoxconn Brainをオープンソースコミュニティに公開する計画を持っていることもLiu氏は明かした。

 これらのAIモデルやプラットフォームの実現には、膨大な計算能力が不可欠となる。FoxconnはAI Factory構想の一環として、最初のNCP AIデータセンターを構築。このデータセンターは、最終的に100メガワット規模を目指し、まず20メガワットから開始し、段階的に規模を拡大していく予定とのこと。データセンターの設置場所は、高雄市を含む台湾各地が検討されており、フォックスコンはこれらの取り組みの基盤として、NVIDIAのフルスタックAIソフトウェアおよびハードウェアを採用している。

 Liu氏は、これらのAI関連のすべての要素(アプリケーション、モデル、ソフトウェア、ハードウェア、計算能力)が過去18ヵ月間で急速に進展したと強調。パートナーとの協力によりエコシステムを構築し、AI製造業およびスマートシティプラットフォームのリーダーとなることを目指していると述べた。特にスマートシティをサポートするために必要な計算能力は非常に大きいことから、AI関連の計算能力需要は予測可能な将来において減速しないとの見通しを示した。

 Liu氏の基調講演は、FoxconnがAI Factoryを中核として、製造業の枠を超え、スマートEVやスマートシティといった広範な領域で技術主導の変革を推進していくという、明確な戦略と強い決意を示すものとなった。グループの未来戦略である「3+3+3」イニシアチブの具体的な柱としてAI Factoryとその応用分野が位置づけられ、その実現に向けた技術開発、パートナーシップ、そしてインフラ構築が着実に進展している現状が示された。

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