ディーアンドエムホールディングスは、Bowers & Wilkinsのワイヤレスヘッドホン「Px7 S3」を4月26日に発売する。価格はオープンプライス。量販店などでの販売価格は6万8200円程度になる見込みだ。
ヘッドホン15周年を飾る新製品
2025年はBowers & Wilkinsのヘッドホンが登場してちょうど15年の節目。最初の製品は2010年に登場した「P5」で有線接続タイプの製品だった。2017年にはワイヤレス化した「PX」が登場。Px7 S3は2023年秋に発売した「Px7 S2e」に続く機種となる。「True Sound」や「Hear True」といったサウンドフィロソフィーは共通だが、その内部は「(バイオセルロースと樹脂を使った)振動板」以外は「すべて新規」といっていいほど異なる。
振動板以外は全て新規に再設計、音もフィーリングも最高だ
アピールポイントはもちろん音の良さだ。最優先で実現するべきものは高品位なサウンドとしている。逆にデザインや機能、ユーザビリティといった要素はその実現のために必要であれば変更するというスタンスで改善をしている。
Px7 S3の上位にはPx8もあるが、位置付けとしてはラグジュアリー製品となる。ハイブランドのファッション製品がそうであるように、技術そのものよりは体験、使って感じることが製品を知る上で需要なポイントということなのかもしれない。
そんなPx7 S3なのだが、外観上で明白にわかるのが薄型になったハウジング部だ。
本体の薄型化は「Px7 S2」の発表直後から長期にわたって取り組んできたものだそうで、容積を抑えつつ高いサウンドクオリティーを実現するのが大きな課題だった。イヤーパッドは同じ厚さだが、ハウジングの高さを抑えて外側に本体が出過ぎない、スリムでスタイリッシュな印象になった。内部的に見るとバッテリーのサイズも小さくなっているという。
また、デザインのディティールに目を向けると、P7のねじれたアームの雰囲気を再構築。ハンガーの取り付け位置もアップデートしている。
ノイキャン性能もアップ、aptX Losslessやハイレゾ級伝送にも対応
機能面では、Bluetoothの伝送に使うコーデックにaptX Lossless(CD品質の44.1kHz/16bit)が選べるようになった。
また、ハイレゾ級の伝送が可能なaptX Adaptiveも最大96kHz/24bitに進化している。従来機種と同様、DSP、DAC、アンプはBluetoothチップと独立して装備。カラーはブラック(Anthracite Black)、ブルー(Indigo Blue)、ホワイト(Canvas White)の3色が選べる。
アクティブノイズキャンセル(ANC)に使用するマイクは左右の合計で8個を搭載。このうち左右2ヵ所にある通話用マイクは露出しているが、それ以外は外周の縁の下に隠している。本体の薄型化、ハンガーとアームの見直しによって、装着時の密閉感も向上している。ここもANC性能の向上に貢献している要素だという。
バッテリー駆動時間はフル充電(充電時間は2時間)で、連続30時間再生。15分の急速充電で7時間の再生が可能だ。専用アプリも改良し、EQのバンド数が5バンドに増えるなど設定項目が増えている。マルチポイントで接続している機器の確認もできる。なお、後日のアップデートで3Dオーディオ機能の「True Immersion」にも対応も計画しているようだ。
Hi-Fi的でとても落ち着いたサウンド傾向、細かい音まで聞きやすい
発売に先立って音も体験できた。まず聞いたのはスティレ・アンティコによるパレストリーナの合唱曲「Exultate Deo」。サウンドは、従来モデルのPx7 S2eも十分過ぎるほど優れているが、Px7 S3はこれとは傾向が異なり、よりHi-Fi的で、落ち着きと品位がある音になっている。開発者によると、上位のPx8と比べても遜色ない品質とのことだが、その言葉には確かに納得できる。
Px7 S3の音はピッタリとフォーカスが合い、くっきりと引き締まっていながら、細かなニュアンスの違いも繊細に描き分けるので、全体的な質の向上を感じ取れる。Px7 S2eの音は低域がしっかりしていて声が肉厚。音に包み込まれるような気分を味わえるが、Px7 S3を聞いた後だと、少し混濁していてお風呂場などで歌声が響くような曖昧さもあった。
シェリル・クロウの「Everyday is a Winding Road」はDolby Atmos対応のボーカル曲。曲の冒頭で左右の上方から降り注ぐようなパーカッションの音が聞こえてくるが、その高さを表現する力がすごい。
空間という観点では、Px7 S2eの方が広い(というよりは音に包囲されるような感覚が強い)気もする。ここはExultate Deoと同様で、ハウジングの容積が関係しているのかもしれない。とはいえ、音の明瞭感じについてはPx7 S3の方が上。Px7 S2eは少し小さめのライブハウスで聞く音のような感覚というか、箱の中にぎゅっと押し込められているような密度感がある。
一方のPx7 S3の高域はスッと切れ、個々の音もほぐれてより区別がしやすい。声は近く、低域はタイトで歯切れよくビートを刻む。音の透明度も格段に上がり、音楽全体の見通しの良さという点でも優れている。
アニソン/J-POP系の楽曲として310の「パーフェクトデイ」も聞いてみた。Px7 S2eも低域の量感があって悪くはないのだが、Px7 S3では低域の明瞭感が上がり、歯切れがいい。個々の音が聞きやすく、音階も良くわかる。曲の中心的な役割を果たすボーカル、ストリングス、ベースの流れをしっかり再現した上で、その合間に装飾的に挿入される様々な音もよく聞き分けられ、様々な音に気付けるのが印象的だった。
この曲に限らず、Px7 S3は音の聞こえやすさが格段に上がり、音楽のクオリティアップがなされているのを実感できるが、脳が疲れずスッと音が入ってくる感覚があるのがいい。Px7 S2eを上回る性能というのは納得できるし、最上位のPx8との違いもじっくり聞いてみたいと思えるような完成度だった。
ヘッドホンの装着感もかなり改善している印象だ。イヤーパッド自体は素材や厚さが同じとのことだが、Px7 S2eの方が硬く感じ、ハウジング自体の空間が広く取られている感覚があった。逆にPx7 S3はピッタリと顔の側面に密着し、かつソフトで軽快な付け心地だ。両機種ともUSBケーブルを使った有線接続も可能なので、iPhone 15 Pro MaxとつないでApple Musicを楽しんでみたが、ケーブルが右出しから、左出しに変わっているのも細かい差異となる。
iPhoneユーザーも注目の発売直後のキャンペーン
筆者手持ちのスマホがiPhoneということもあり、今回は有線接続を中心に聞いたが、最後に嬉しい情報も。ディーアンドエムホールディングスでは、Px7 S3の購入者がaptX LosslessやaptX Adaptiveをより手軽に楽しめるよう、クリエイティブメディア製のBluetoothドングル「BT-W6」(7980円)をプレゼントするキャンペーンも実施する。対象期間は4月24日から7月31日までで、販売店のレシートと本体の底にあるシリアルの写真をウェブからアップすることで応募できる。このキャンペーンは同期間内にPi8を購入したユーザーも対象だ。
なお、Px7 S3の購入者で、すでにaptX LosslessやaptX Adaptiveで接続できる環境を持っている人は、本体と同色の「Px7 S3の交換イヤーパッド」(6600円)を選ぶこともできる。
iPhoneなどを使用していて直接aptX LosslessやaptX Adaptiveで接続できない人はコストを抑えてUSBドングルが手に入るので特に注目したいキャンペーンだろう。この記事を読んで、Px7 S3の興味を持ってくれた人はぜひ覚えておいてほしい情報だ。
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