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F1との関係を強化したレノボ、500TBのデータを処理して全世界に映像配信

長年F1の足下を支えてきたレノボ

 先日(4月4~6日)、日本グランプリ(鈴鹿サーキット)で約26万人と過去最高の動員を記録した世界最高峰の自動車レース「Formula One(F1)」。現在唯一の日本人F1ドライバー・角田裕毅(つのだ ゆうき)選手が日本グランプリ直前でトップチームの一角「オラクル・レッドブル・レーシング」に昇格したことも話題になりました。

 そんな角田選手のレッドブルデビュー戦は世界180の国と地域、約5億人のF1ファンに向けて放映され、さらにSNSなどでも大いに盛り上がりました。

 その裏で、膨大な映像データなどを処理しているメーカーがいるのをご存じでしょうか? それが世界的なPCメーカーのレノボです。

 レノボは、昔からF1との関わりが深かったのですが、2022年からオフィシャルパートナー(F1にサービスや製品を提供する企業)になっていました。そして、今年はF1とのパートナーシップをさらに強化し、グローバルパートナー兼グローバルテクノロジーパートナー(F1の運営に関わる企業)になり、先日開催された日本グランプリでは、タイトルスポンサーにもなりました。

日本グランプリでレノボ仕様になった鈴鹿サーキット

 同時に、レノボ傘下のモトローラがF1のグローバルスマートフォンパートナーとなることも明らかになりました。長年にわたりF1の運営を支えてきたレノボの技術力と、今後のさらなる連携について、日本グランプリに先立って開催されたトークセッションの内容をもとに、その活動と展望を紹介します。

F1を支えるレノボのテクノロジーとソリューション

 前述のとおり、2022年からF1のオフィシャルパートナーとなったレノボは、その運営を支えるテクノロジー、ソリューション、サービスを提供しています。F1本部からサーキットまで、あらゆる場所でレノボの製品が活用されており、経営幹部からピットクルーまで、600名以上のスタッフがレノボのノートPC(ThinkPadなど)、デスクトップデバイス、モニター、タブレット、そしてモトローラのスマートフォンを利用しています。

F1関係者に使われるレノボのPC

 特に、F1の過酷な環境下でもパフォーマンスを発揮できる、信頼性と耐久性に優れたハードウェアはレースに不可欠です。振動、灼熱、凍結、ほこり、乾燥といった厳しい条件下でも、レノボの製品がレース運営を支え続けているとのこと。また、F1は組織の生産性、創造性、コラボレーションを向上させるために、レノボの最新AI PCを試験的に運用しており、その効果に期待が寄せられています。

 また、F1の映像をリアルタイムで世界中に配信するために、レノボのハイエンドワークステーションが貢献しているそうです。その高い処理能力で、より迅速に映像を制作・編集し、世界に配信できるのです。とくにレースウィークは約500TB以上のデータがやり取りされ、サーキット内に設置された「ETC」というテクノロジーセンターで処理をしています。

500TB以上のデータを処理するワークステーション

 ETCで飛び交うさまざまなデータを編集することで、我々ファンにエキサイティングな映像が届けられるのです。厳密にはETCで処理されたデータはF1の本拠地があるイギリスに送られ、そこから全世界に配信される仕組みです。

ハイブリッドAI戦略とAIサービスの展開

 レノボは、AI戦略の中核としてハイブリッドAIを推進しています。これは、プライベートAIとパブリックAIを組み合わせることで、セキュリティー、カスタマイズ性、効率性、生産性の向上を目指すものです。

レノボ関係者による、トークセッションの様子

 ただ、トークセッションでは、多くの企業がAIの導入に関心を持ちながらも、投資対効果、プライバシーとセキュリティー、専門知識不足といった課題に直面していることが語られました。

 F1との連携においても、2024年にはレノボのAIソリューション「AI Fast Start」サービスを活用し、AI強化型ハードウェアによってライブストリーミング動画の品質とコンテンツの一貫性を向上させながら、配信本数を大幅に増加させることに成功しています。

 AI強化型ハードウェアが低品質なフレームを自動的に検知し、動的に修正することで、動画処理速度を加速できるとのこと。

 将来的には、オンデバイスAIも活用し、PC上で音声認識、顔認識、視線検出などのAI機能を提供することで、ユーザー体験の向上とセキュリティーの強化を図るとしました。

避けては通れない持続可能性への挑戦

 今の時代、とくに自動車関連で避けて通れないのはSDGs。レノボは、サステナビリティへの取り組みも積極的に推進しているといいます。その一環として、機器買取サービス(ARS)を行っており、使用済みハードウェアをリサイクルすることで環境負荷の低減に貢献しています。

サスティナビリティへの取り組みは強化しているとのこと。環境問題は自動車業界だけでなく、地球全体の問題

 F1でもARSを活用することで、技術のアップデートにかかるコストの一部を相殺し、持続可能な目標の達成に近づけています。製品のライフサイクル全体を通して環境への影響を考慮し、リサイクル素材の利用や省エネルギー設計、製品の長寿命化にも取り組んでいるそうです。

F1との連携が生むイノベーションと社会への影響

 F1とのコラボレーションを通じて、レノボの製品とサービスはあらゆる環境で使用され、その信頼性と耐久性が向上しているとのこと。このような経験を通じて開発された技術やインフラは、都市開発や教育、医療といった幅広い分野で社会に貢献する可能性を秘めています。

 トークセッションでは、エッジAIの進化や、リテール業界におけるロスプリベンション(ロスを未然に防ぐ方法)への応用例、製造業や倉庫業での活用事例などが紹介されました。また、テクノロジーの利用形態の変化に対応するため、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを従量課金で提供する「True Scale」のようなサービスモデルも提供しており、顧客のニーズに合わせた柔軟なテクノロジー利用を支援しているそうです。

トークセッション後にお土産として配られたレノボどら焼き

 レノボとF1は、それぞれの強みを活かし、技術革新を通じてより良い未来の実現を目指す姿勢を強調しました。

【まとめ】F1を通じてテクノロジーの進化と
社会貢献活動を両立させていく

 レノボは、F1との戦略的パートナーシップを深化させながら、ハイブリッドAI戦略を核とした革新的なテクノロジーとソリューションを提供し、あらゆる分野でデジタルトランスフォーメーションを支援しています。

ファンが楽しく見ている映像の裏ではレノボのPCが動いているのです

 レノボの今後の活動とその社会への貢献に、F1ファンからもますます注目されそうです。

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