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VRAM 32GBのGeForce RTX 5090でも荷が重い、バージョン「0.1」を検証

フレームレート集計に革命!?NVIDIAのAIフレームワーク「Project G-Assist」でベンチマークライターは失業する?

2025年04月15日 10時00分更新

VRAM消費量が最大のネック、フレームレートが激減することも

 Project G-Assistの処理はGPUパワーを利用するが、現状の学習モデルではVRAM消費量を大きく増やしてしまう。Project G-Assistを導入しただけならVRAM消費量は1.5GB程度の増加で問題はないが、処理が始まると7GB弱が追加で消費される。

 ゲームと同時に起動する場合はゲームとVRAMリソースの奪い合いになる。そのため、VRAM 16GBのGPUでは厳しいと感じた。Project G-Assistが処理を始めると、画面が数秒〜数十秒(!)フリーズする、あるいはフレームレートが極端に落ちるという状況が発生する。ゲーム側の画質をしっかり絞らない限り、ゲームとの同時使用は難しいだろう。

「Kingdom Come: Deliverance II」を4K解像度で、画質は「実験的」、DLSSは「クオリティー」+トランスフォーマーモデルで動かした際の状態。「CapFrameX」でVRAMの消費量(GPU Mem Used)欄をチェックしたところ、Project G-Assistを含めて10GB弱程度使っている。この時、Project G-Assistは何も処理をしていない

Kingdom Come: Deliverance IIプレイ中にProject G-Assistにプロンプトを入力したところ、VRAM使用量はRTX 5070 Tiの限界(16GB)まで到達。フレームレートもひどく低下してしまった

 では、簡単ではあるが実際にProject G-Assistの処理がゲームのフレームレートにどの程度影響するのか検証してみよう。検証環境は以下の通りだ。ビデオカードはVRAM搭載量に最も余裕のあるRTX 5090のFounders Editionを準備した。CPUやメモリーのチョイスがいつもと異なるが、ほかのハードと比べるような検証ではないのでご容赦いただきたい。

 GPUドライバーはGameReady 572.83およびAdrenalin 25.2.1を使用している。Resiazble BARやSecure Boot、メモリー整合性やHDRなどはひと通り有効化、ディスプレーのリフレッシュレートは144Hzに設定した。

検証環境
CPU CPU AMD「Ryzen 9 7900X3D」(12コア/24スレッド、最大5.6GHz)
CPU
クーラー
Corsair「iCUE H150i ELITE CAPELLIX」(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザー
ボード
ASRock「B850 LiveMixer WiFi」(AMD X850、BIOS 3.20)
メモリー Corsair「DOMINATOR PLATINUM RGB CMT32GX5M2X6200C3
(16GB×2、DDR5-6200)
ビデオ
カード
NVIDIA「GeForce RTX 5090 Founders Edition」(32GB GDDR7)
ストレージ Crucial「T700 CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0)
電源
ユニット
Lian Li「LL-EDGE PLATINUM 1000W」(1000W、80 PLUS PLATINUM)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(24H2)

 実際のゲームで解像度は4Kのみ、フレームレート計測には「CapFrameX」を用い、MsBetweenDisplayChangeを基準にフレームレートの計算を行う。Project G-Assistのプロンプト処理をさせていない状態(グラフ中では「不使用」と表記)とさせている状態(「Project G-Assist」と表記)、Project G-Assist経由でGeminiに処理をさせている状態(「Project G-Assist+Gemini」表記)の3通りでフレームレートを比較する。

 使用したプロンプトは、Project G-Assist使用時は「Retrieve System Information」、Gemini使用時は前述のBorderlands 3に関する質問を使用している。回答が得られ次第再び同じプロンプトを入力し、ベンチマーク期間中ずっと同じ問いを投げかけるようにした。プロンプト入力の間隔も特に厳密にはしていないため、正確な比較とは言えないが、Project G-Assistがゲームパフォーマンスに及ぼす影響を知る一助にはなるだろう。

「Cyberpunk 2077」

 まずはCyberpunk 2077で検証した。画質は「レイトレーシング:オーバードライブ」、DLSSは「クオリティー」、DLSS 4の学習モデルは「Transformer」、DLSS MFGは「4x」に設定。ゲーム内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。

Cyberpunk 2077:3840x2160ドット時のフレームレート

 Project G-Assistを使用すると、フレームレートは大きく下がった。特に最低フレームレートが不使用時の約半分になっている点が衝撃的だ。また、Geminiに質問を投げてもフレームレートの低下は同様に発生する。これはGeminiに質問を投げても、Project G-AssistのSLMが働いていることを示唆している。

 今回のテスト条件では延々と問いを投げかけ続けるというスタイルのため、現実的な利用状況とは言えないとも言える。しかし、この結果からはRTX 5090環境であっても、Project G-Assist使用時はかなりのフレームレート低下は避けられないと言える。

Cyberpunk 2077:上記のテストを実施した際のフレームタイムの推移。青はMsBetweenPresentsベースの値、緑はMsBetweenDisplayChangeベースの値を示している。Present基準だとフレームタイムは激しく変動するが、フレームペーシングのおかげでDisplayChangeはより変動が小さくなっている

Cyberpunk 2077:同様にProject G-Assistを使用した際のフレームタイムの推移。フレームタイムがエアーズロックのごとく突出している期間がProject G-Assistで処理している時間となる。ざっと見ただけでも、フレームタイムは倍近くになっていることがわかる

Cyberpunk 2077:Project G-Assist+Geminiを使用した際のフレームタイムの推移。フレームタイムが長い部分が長期間に及ぶ理由は、推論時間が長くなるお題を出しているからだ。Geminiに処理を投げていてもフレームタイムの増加は避けられない

Cyberpunk 2077:ベンチマーク中に観測したVRAM消費量の比較(CapFrameX読み)。4K+パストレーシング設定のおかげでVRAM消費量は15GB程度だが、Project G-Assistを利用することで、最大値が22GB程度に急上昇。RTX 5090でこの結果なのだから、VRAM 16GBの下位モデルではどうなるか……

「Kingdom Come: Deliverance II」

 Kingdom Come: Deliverance IIでも試してみよう。画質は「実験的」、DLSSは「クオリティー」、DLSS 4の学習モデルは「Transformer」を選択。マップ上の特定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Kingdom Come: Deliverance II:3840x2160ドット時のフレームレート

 Cyberpunk 2077と同様、Project G-Assist使用時はフレームレートが激しく落ち込む。最低フレームレートが不要時の半分以下になる点や、Geminiに処理を投げた時のフレームレートが落ち込みやすい点なども共通している。

 たった2本のゲームサンプルだが、RTX 5090でこの程度性能が落ちるのだから、下位のGeForceではもっとひどいことになるのは目に見えている。

Kingdom Come: Deliverance II:ベンチマーク時に観測したフレームタイムの推移。DisplayChangeの変動はCyberpunk 2077より大きいが、ほぼ一定の範囲で変動していることが読み取れる

Kingdom Come: Deliverance II:Project G-Assist使用時のフレームタイムの推移。ここでもAIが処理している間はフレームタイムがガンと跳ね上がる。前半と後半で跳ね上がり方が変わっているが、この理由については不明だ

Kingdom Come: Deliverance II:Project G-Assist+Gemini使用時のフレームタイムの推移。終盤のフレームタイムの上がり方はProject G-Assistのみを使用した時とやや異なる

 Kingdom Come: Deliverance IIにおいてもProject G-Assist利用によってフレームレートが激しく下がる傾向が確認できた。特に、Geminiに処理を任せるとフレームタイムのスパイクも大きくなる傾向が確認できた。それが最低フレームレートの集計に影響を与えていると思われる。

Kingdom Come: Deliverance II:ベンチマーク中に観測したVRAMの消費量

 VRAM消費量に関してもCyberpunk 2077と似たような傾向だ。Project G-Assistをゲーム中に介入させることで、7GB程度のVRAM消費量の増加が確認できている。

まとめ:とりあえず骨子はできた。あとは成長を見守るのみ

 以上でProject G-Assistの検証は終わりだ。VRAMが16GBもあれば余裕かと思っていたが、現実は16GB程度のVRAMではお話にならない。画質をもっと絞ればよいのだが、Project G-Assistのために画質を犠牲にする価値は今のところない。

 原因は現状使用しているLlama 3.1ベースの学習モデルがまだ大きいことにある。もっと効率のいい学習モデルに置換されなければ、ゲーム中に使っていけるとは到底言えない。というわけで、ベンチマークライターである筆者がProject G-Assistのおかげで職を失う心配は当面なさそうである。

 しかし、AI界隈の発展スピードは凄まじい。画像生成AIで「ラーメンを素手で食べる人物」しか描けなかったのは3年ほど前だが、今では普通に描写できるようになっている。現状のProject G-Assistはまだ使い物にならないが、そのうちエージェンティックAIとして立派にゲーマーのアシストをし、筆者のベンチマークライター稼業に引導を渡してくれる日が来るだろう。その日を楽しみに待ちたいものだ。

Project G-Assistはまだバージョン0.1である。ゲーミングPCにおけるエージェンティックAIのフレームワークを作ったにすぎないのだ

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