第819回
次期Core UltraシリーズのPanther Lakeは今年後半に量産開始 インテル CPUロードマップ
2025年04月14日 12時00分更新
名前だけの存在だったDiamond Rapidsが実在していた!
まずEコアの方だが、2026年に出る製品はおそらくClearwater Forestで間違いない。連載811回でも触れたように、Clearwater Forestは2026年送りになったことが今年2月に発表されており、今はこのスケジュールを死守すべく必死に作業しているものと思われる。
問題はこれに加え、PコアのXeonが初めて明確に示されたことだ。下の画像はやや古いが、2023年3月に行なわれたDCAI Investor Webinarの際のスライドである。このロードマップ自体は何回か表現を変えつつ示されているのだが、なぜかGranite Rapidsの後継になる「Pコア製品の次」がちっともアナウンスされなかった。
Granite Rapidsの後継製品のコード名がDiamond Rapidsになるという話も何度かしてきたのだが、このDiamond Rapidsが存在する証拠は意外なところから湧いてきた。それは2024年にリリースされたIntel Architecture Instruction Set Extensions Programming Referenceのv054である(現時点での最新版は今年3月にリリースされたv057)。v054は2024年10月に公開されたバージョンであるが、この中に下の画像の表記が登場している。
ここから以下の2つが判断できる。
- Diamond Rapidsというコード名のサーバー向けプロセッサーは確かに存在すること
- Diamond Rapidsのコアの詳細(つまりどんな拡張命令をサポートし、内部レジスターがどんな値に設定されるか)が定まったのが2024年10月だったこと
この2024年10月が早いか遅いかというと、「やや遅いんじゃないかな」という感じはあるが、致命的に遅いわけでもない。というのは同じシリーズでは下表のとおりで、遅いと2年くらいの差があるが、短いと1年ほどだったりする。
Xeonのロードマップ | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
コードネーム | 定義時期 | 出荷時期 | ||||
Sapphire Rapids | v044(2021年3月) | 2023年1月 | ||||
Emerald Rapids | v047(2022年12月) | 2023年12月 | ||||
Sierra Forest | v048(2023年3月) | 2024年6月 | ||||
Granite Rapids | v048(2023年3月) | 2024年9月 |
そもそも命令セットの定義時期はコアそのものの定義とは別で、「本来そのコアに搭載されているどの機能を有効にし、またSpecial Registerの値をいくつに設定するか」はコアの定義後に、ファームウェアの書き換えでできるからだ。もちろんハードウェア的に実装されていない命令を後から追加することはできないが、実装している命令の無効化や値の設定などは、それこそ量産開始直前までいろいろいじることは「技術的には」可能だ。
実際には検証の時間などもあるから、あまり直前でいじくり回すことはないが、サーバー向けであっても1~2年の猶予期間があれば対応には十分である。したがって、タイミング的にはDiamond Rapidsを2026年中に出荷することは、こと命令セットの観点から言えば十分可能だろう。
7月ごろにロードマップが全部入れ替わる可能性あり
というような話をしていて最後にひっくり返すようで恐縮だが、このあたりのロードマップは7月くらいに全部入れ替わる可能性が残されている。なぜ7月か? というと100日プラン、あるいは100日ルールと言われる習慣である。新CEOが就任して最初の100日で、社内の状況や会社の置かれている状況などを把握し、そこから具体的に行動を起こすことが求められるというやつだ。
ことFoundryビジネスに関してはかなりの経験があるTan氏も、Intel Productsの方はまだ把握しきれているとは言えない。実際今回の2日目の発表では目新しい話が一切なかったあたり、既存のロードマップの延長戦上で動いていると言える。Tan氏の就任が2025年3月12日で、そこから100日後は2025年6月20日になる。おそらくこのあたりで方針を定め、それを大々的に打ち出し始めるのは7月以降になるだろう。
正直現在のインテルの製品ラインナップは決してTan氏の言うBest Productsではないと思う。もう少し経過するとインテルの四半期決算が発表されるが、もうAMDとの業績の差がどんどん詰まっているという結果からもこれは否定できないと思う。なにしろ10年ほど前は10倍以上あった売上高の差は、2倍程度(2024年度決算でインテルが531億100万ドル、AMDが257億8500万ドル)にまで縮小、粗利益の絶対額はけっこう僅差(同じくインテルが173億4500万ドル、AMDが127億2500万ドル)になるところまで来てしまった。
売り上げが2倍あるのに粗利が36%しか違わない、というあたりでインテルが苦戦しているのは明白だし、これを解決するためには根本的な製品パイプラインそのものに手を入れる必要がある。少なくとも現状のままだと、2026年に業績でAMDに追いつくのは難しいように思えるわけで、なにかしらの「選択と集中」が行なわれることは間違いないだろう。これはロードマップに相応の影響を与えそうで、とりあえず7月以降のインテルの動向を注視する必要がある。
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