キヤノンが「PowerShot V シリーズ」のフラッグシップモデル「PowerShot V1」を4月下旬に発売する。本格的な動画撮影を楽しめる「PowerShot Vシリーズ」の第2弾で、Vlogカメラ「PowerShot V10」(2023年6月発売)の上位モデルで、「PowerShot Vシリーズ」のフラッグシップという位置付けのカメラだ。
35mm判換算で静止画撮影時約16〜50mm、動画撮影時約17〜52mm相当の焦点域をカバーし、高性能AFや多彩な撮影モードをコンパクトなボディに凝縮したレンズ一体型カメラとなっている。
キヤノンから試用機を借用し旅先で撮影できたので、使い勝手を中心に紹介していこう。
大型の1.4型CMOSセンサー搭載で
ややゴツい印象のPowerShotフラッグシップモデル

サイズは118.3×68.0×52.5mm、PowerShot G7 X Mark II(105.5×60.9×42.2 mm)よりも10mmほど厚みがある。質量は426g(バッテリー、カードを含む)。ウィンドスクリーンとリストストラップ(WS-DC12)が付属する。
ボディは一般的なコンパクトデジタルカメラの形状で、スマホライクな縦位置での撮影を意識したVlogカメラ「PowerShot V10」とは異なっている。フラッグシップモデルということで、より幅広いユーザー層をターゲットにしているということらしい。
ボディの厚みもあって、グリップは片手で撮影できそうなほどしっかりとホールドできる。トライポッドグリップなどに装着して撮り歩くのを想定しているのだろうが、全体的にやや無骨な印象を受けるのは、このボディの厚みのせいだろう。
リコー「GR」のようにポケットに入れて持ち歩き、サッと取り出して撮るという撮影スタイルとはちょっと違うようだ。

路地に停めてあった真っ赤なワーゲンを広角端で狙った。赤が飽和することなくボディの質感が描写できている。
絞りF3.2・シャッタースピード1/200秒・ー1.0EV補正ホワイトバランスオート・ISO100
「PowerShot V1」のホールドで気になったポイントは、モードダイヤル下にある静止画撮影/動画撮影切り換えスイッチが親指に当たりやすく、知らない間に動画モードになっていてシャッターが切れないということが何度かあったこと。
静止画撮影モードで動画撮影ボタンを押すと動画撮影はできるのだが、動画撮影モードでシャッターボタンを押しても静止画の撮影はできない。切り換えスイッチを常に意識する必要があった。ちなみにメインスイッチはシャッターボタンの左側、ウィンドスクリーン下の隠れた位置にある。
EVFはないので背面液晶で撮影
冷却ファン内蔵で長時間撮影も安心
「PowerShot V1」では、撮影時のフレーミングも画像のチェックも背面の液晶モニターで行うが、ファインダーレスのカメラとしてはもう少し解像度が欲しいところだ。また屋外での撮影ではモニター画面ではやや認識しづらく、画面の細部まで確認が難しい場面もあった。周囲の明るさに応じて輝度が変化するなどの機能があったらいいと感じた。
動画撮影時の温度上昇を抑えるために、「PowerShot V1」は本体内部に冷却ファンを搭載している。熱を効率的に放出することで、撮影時間への影響を低減しながら撮影できるようになっている。
動画撮影は5.7Kオーバーサンプリングによる4K/30P動画撮影が可能だ。連続撮影可能時間は4K30Pで自動電源オフ温度(標準)の場合、ファンを切った状態で約40分、ファンオートで約55分、ファン高速では熱による制限なしとなっている(実際は2時間程度)。
バッテリーは一部の「EOS Rシリーズ」にも採用されている「LP-E17(DC7.2V・1040mAh)」を採用する。「EOS R8」や「EOS R50」などとバッテリーを共用できるので、EOSユーザーとしてはサブ機としての選択肢もありだ。
記録メディアはSDメモリーカードでUHS-IIに対応する。静止画はJPEG(8bit)、HEIF(10bit)、RAW、動画はMP4での記録ができる。

外部インターフェイスはUSB Type-CとHDMI端子(タイプD)。バッテリーチャージャーは同梱されないが USB Type-Cでパワーデリバリーに対応する。上部には外部マイク入力端子(左)とヘッドフォン端子(右)が装備されている。
ストロボは搭載されていないため、外部ストロボを使用する際にはマルチアクセサリーシューに装着する。外部ストロボ使用時には、ウィンドスクリーンを装着できないので注意が必要だ。
操作部はキヤノンのカメラ共通の表示で、配置もほぼ共通仕様のため、違和感なく操作することができた。液晶モニターが大きいのは何かとありがたい。ファインダーがないので、ファインダーをのぞくときに鼻がモニターに触れてシャッターが切れるということもない。
ボタン類は右手親指で操作する必要があるため、カメラをグリップした状態で操作することは想定されていないようだ。再生ボタンを続けて2回押すと画像が表示されるのも便利な機能だ。
レンズの根本部分にある「コントローラーリング」は、ズーミングや感度設定、露出補正などマルチに使うことができる。EOS RFレンズに採用されている「コントロールリング」のような存在なので、この点もEOSユーザーには使いやすいと感じるポイントだろう。
被写体認識、高性能AF、高速連写など
「EOS Rシリーズ」の本格機能を搭載
気になる画質は、有効画素数最大約2230 万画素の1.4 型CMOS センサーと映像エンジン「DIGIC X」の組み合わせによって、細部のディテールまでしっかりと描写してくれる。また静止画撮影時は常用ISO32000(拡張ISO51200)相当に対応し、低照度下でもノイズが少ない撮影ができる。

高感度撮影時のノイズ低減を標準で撮影。ざらつきや画像のじにみ、カラーノイズは少なく抑えられているのがわかる。
絞りF4.5・シャッタースピード1/50秒・ホワイトバランスオート・ISO6400・高感度撮影時のノイズ低減標準
「PowerShot」用にチューニングされた「デュアルピクセルCMOS AF II for PowerShot」を搭載しており、動き回る被写体にもカメラが広範囲で粘り強くピントを合わせ続けることが可能になっている。
「被写体検出」は自動・人物・動物優先・なしから選択が可能。「人物」と「動物(犬/猫)」では「瞳検出」にも対応する。また動画撮影時にはキヤノンのカメラで初搭載となる「被写体追尾IS」により主要被写体を安定して捉え続けることができるようになっている。
シャッターは最高1/2000秒のメカシャッターと最高1/16000秒の電子シャッターを搭載。シーンに応じた選択が可能だ。またドライブモードを「高速連続撮影+」に設定すると、電子シャッター使用時に最高30コマ/秒の高速連続撮影が可能になっている。

店頭のディスプレイ。AWBでも電球の赤みを自然な感じで残しつつ、黒色の服の質感を立体的に描写できた。
絞りF3.2・シャッタースピード1/160秒・+0.3EV補正・ホワイトバランスオート・ISO800
レンズ焦点距離は静止画撮影時に約16〜50mm相当、動画撮影時に約17〜52mm相当で、開放値はF2.8-4.5で、背景ボケを生かした撮影ができる。
自撮りもしてみたが、16mm相当ということ、かなりワイド感のある撮影ができる。また静止画撮影時には1.4倍の「クロップ撮影」が可能だ。クロップ時には焦点距離約23〜71mm相当の標準ズーム機に切り替わり、イメージセンサーは1.0型のセンサーと同等の領域を使って撮影することになる。

広角端と望遠端の画角の違い。ワイド感のある風景撮影からスナップショットまで幅広い撮影に対応できるレンズだ。
絞りF4・シャッタースピード1/400秒・+0.7EV補正・ホワイトバランスオート・ISO640

イスタンブールの金角湾の上にあるハリチュ駅での自撮り。アジアサイド、ヨーロッパサイドの両方を入れたワイド感のある撮影ができた。
絞りF2.8・シャッタースピード1/100秒・ホワイトバランスオート・ISO100
手ブレ補正は「レンズ光学式手ブレ補正」と「電子式手ブレ補正」を連携させて強力な手ブレ補正を実現する。「光学式手ブレ補正」の補正効果は中央5.0段(静止画IS時)で、「電子式手ブレ補正」はオフにすることができる。
動画撮影時には「電子式手ブレ補正」は切・入・強から選択が可能で、歩きながらの動画撮影でも手ブレを抑えた撮影ができる。
「シーンインテリジェントオート」をはじめ、自分撮り・美肌・手持ち夜景などの8種の「SCN」、ラフモノクロ・トイカメラ風など10種の「クリエイティブフィルター」を搭載する(いずれも静止画撮影時)。
さらにシーンや好みで選べる14種類の「カラーフィルター」、減光3段分の「NDフィルター」「カメラ内RAW現像」など、狙い通りの撮影ができる機能を満載した「PowerShot V1」。レンズ交換ができないことを除けば、ミラーレスカメラ以上の撮影ができる機能が搭載されている。
ポケットに入れて旅に出るというわけにはいかないのがちょっと残念だが、動画撮影も含めてスナップや自撮りをしながら旅の思い出を記録するカメラとしては、心強い相棒と言えるだろう。
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