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Bluetooth+Wi-Fi! クアルコムの無線オーディオ技術「XPAN」の革新性で音楽再生が変わる?

 近年、ワイヤレスオーディオ技術は目覚ましい進化を遂げており、より高音質で、途切れにくく、快適なリスニング体験が求められています。こうしたニーズに応えるべく、半導体大手のクアルコムは、新たなワイヤレスオーディオプラットフォーム「XPAN(エクスパンデッド・パーソナル・エリア・ネットワーク)」を発表しました。

 今回、クアルコムの本社からプロダクトマネージメント ディレクター V&MのNigel Burgess氏が来日するとのことで、XPANについてインタビューをしました。その特徴やオーディオ体験にもたらす可能性などを解説してもらいます。

クアルコム プロダクトマネージメント ディレクター V&M Nigel Burgess氏

「XPAN」とはBluetooth接続を超えた
高品質なオーディオ体験

 XPANは、クアルコムが提唱する新しいワイヤレス接続技術で、従来のBluetooth接続の限界を超えて、より広範囲で高品質なオーディオ体験を提供することを目指しているとNigel氏は話します。その主な目的は、高音質なオーディオを途切れることなく、低遅延で楽しめるようにすること。特に、ロスレス音源のストリーミングや、遅延が致命的となるゲーム用途での利用が想定されています。

これだけのデバイスに採用されているSnapdragon Sound

BluetoothとWi-Fiの連携して使う

 XPANの最大の特徴は「Bluetooth接続と低電力のWi-Fi接続を組み合わせている点である」とNigel氏。ペアリングは従来のBluetoothと同様に行なわれます。しかし、オーディオストリーミングが開始されると、低電力Wi-Fi接続に自動的に切り替わるとのこと。

 このWi-Fi接続への切り替えにより、従来のBluetoothでは難しかった高ビットレートのロスレスオーディオ(最大192kHz)の伝送が可能になります。さらにXPANの核となるのは、クアルコムが開発した低電力Wi-Fi技術です。このおかげで、イヤホンやヘッドホンのような小型デバイスでも、バッテリー消費を抑えながらWi-Fi接続を利用できるようになったのです。

自宅から外出先までシームレスな体験

 XPANが提供する体験は、単に音質が向上するだけではありません。従来のBluetooth接続では、スマートフォンなどの接続機器から離れすぎると通信が切れてしまうことがありました。しかし、XPANはWi-Fiネットワークを利用することで、家の中を自由に移動しても途切れることなく音楽を楽しむことができるそうです。

 具体的な動作としては、まずイヤホンとスマートフォンがBluetoothでペアリングされます。スマートフォンが自宅のWi-Fiネットワークに接続されている場合、そのSSIDとパスワードが自動的にイヤホンに共有されます。ユーザーが音楽を再生し、スマートフォンから離れていくと、スマートフォンはイヤホンの移動を検知し、イヤホンに対してWi-Fiへの接続を指示します。

XPANの動き。わかりづらいかもしれないが、XPANとBluetooth LEが切り替わっている

 これにより、Bluetooth接続からWi-Fi接続へとシームレスに移行し、ユーザーは音切れを感じることなく、家全体で高音質な音楽を聴き続けることができるのです。

 さらに、XPANには「P2P(ポイント・ツー・ポイント)」と呼ばれる利用方法もあります。Wi-Fiルーターなどのネットワーク環境がない場所でも、XPAN対応のスマートフォンとイヤホンを直接Wi-Fiで接続して、高音質なオーディオを伝送します。外出先でも、より高品質なワイヤレスオーディオを体験できるというわけです。

低電力Wi-Fiとシームレスな制御

 また、Nigel氏は「XPANの実現には、低電力で動作するWi-Fiハードウェアの開発が不可欠でした」と説明します。クアルコムは長年にわたるWi-Fi技術の知見を活かし、イヤホンなどの小型デバイスでもBluetooth LEと同程度の消費電力で動作するWi-Fiチップセットを開発しました。

XPANの仕組みを解説するNigel氏

 BluetoothとWi-Fiという異なる接続方式をシームレスに切り替え、最適な接続を維持するための制御ソフトウェアも重要な要素です。このソフトウェアが、デバイス間の距離、電波状況、オーディオ品質などのさまざまなパラメータを監視し、最適なタイミングで接続を切り替えてくれるのです。

 XPANは対応するクアルコムのチップセットを搭載したスマートフォンであれば、ソフトウェアの追加のみで機能を実現できるのもポイントです。

まずはXiaomi 15 Ultraで対応
XPAN、今後の展開と可能性

 XPAN技術は、すでに一部の製品で採用が始まっています。2025年3月にスペインで開催された「MWC Barcelona 2025」では、シャオミが初のXPAN対応スマートフォン「Xiaomi 15 Ultra」とイヤホン「Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fi」を発表し、現在日本でも発売中です。今後、ほかのメーカーからもXPAN対応デバイスが登場することが期待されます。

Xiaomi Buds 5 Proシリーズ

 XPANは、家庭内での高音質リスニングや音声通話だけでなく、さまざまな利用シーンでの応用が期待されており、たとえばジムでトレーニング中にスマートフォンをロッカーに置いたまま、XPAN対応のイヤホンだけでWi-Fi接続された音楽を楽しむといった使い方も考えられます。

 将来的にはイヤホンが直接インターネットに接続し、新たなユーザー体験が生まれる可能性も示唆されています。ルーターを介してインターネットに直接接続することで、より多様なサービスや機能が利用できるようになるかもしれません。

 クアルコムは、XPANを同社のオーディオエコシステム「Snapdragon Sound」の一部として位置づけており、「今後あらゆる製品や体験にXPANが広がっていくことを期待しています」とNigel氏は未来への展望を語りました。まずはモバイルデバイスからの展開となりますが、Snapdragon SoundがPCなどほかの分野にも拡大しているように、将来的には自動車など、さらに広範囲な分野への応用も視野に入れているとか。

【まとめ】対応端末待ちだが、音楽好きは期待して間違いナシ!

 クアルコムのXPAN技術は、Bluetoothと低電力Wi-Fiを組み合わせることで、従来のワイヤレスオーディオ体験を大きく進化させる可能性を秘めています。高音質、広範囲な接続性、そしてシームレスな使い勝手を実現するXPANは、これからのワイヤレスオーディオの新たなスタンダードとなるかも……。

Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fiと唯一連動するXiaomi 15 Ultra

 今後、XPAN対応デバイスの登場が私たちの日常を変えるかもしれません。

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