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脱VMwareにKVMという選択肢 OSSの知見はやはり重要だ

2025年03月26日 09時00分更新

日本のOSSコミュニティをリードしてきた濱野 賢一朗氏が登壇したNTTデータの発表会

 脱VMwareに向けて大手SIerのNTTデータがKVMに舵を切るという記者発表会のレポートは、読者の関心も高かったようだ(関連記事:脱VMwareで“KVM”に舵を切る NTTデータが仮想化基盤市場に本格参入)。ここではKVMの歴史を振り返り、テクノロジーの選択について学べることはないか考えてみたい。

 現在のITを支える基盤とも言える仮想化技術。商用UNIXだけでなく、インテルやAMDなどのx86プラットフォームで利用できるようになったのが、VMwareの功績であることは間違いない。1990年代後半から一気に市場を席巻したVMwareに対して、2007年にシトリックスがLinux最古のハイパーバイザ型仮想化技術であるXenの開発元(XenSource)を買収し、2008年にマイクロソフトもHyper-Vの提供を開始した。KVMがLinuxカーネルにマージされたのもちょうどそんな時期。2008年にはKVMの開発元(Qumranet)をレッドハットが買収し、Red Hat Enterprie LinuxにKVMベースの仮想化機能を初めて搭載した。その後、XenやHyper-VがVMwareの牙城を崩すのに苦戦する中、KVMは着実に実績を積んでいく。

 一方で、2010年代後半から台頭してきたのはクラウドとの親和性や柔軟性の高いコンテナだ。Dockerからkubernetesへとエンジニアの関心は移り変わり、サーバーレスとともにクラウドネイティブなシステム開発で当たり前のように使われるようになった。そんな中、仮想化技術に関しては、2017年にAWSがハイパーバイザーをXenからKVMに移行したのが大きな分岐点となった。その後、ブロードコムによる買収をきっかけにした脱VMwareの流れで、結局は実績を積んだKVMが再注目されるようになったという経緯だ。

 前述したNTTデータの発表会で注目したいのは「システム主権の確保」だ。脱VMwareに右往左往を余儀なくされる現在の動向を考えると、「OSやWebサーバー、アプリケーションサーバー、データベースなどでは、OSSが浸透しており、『仮想化基盤だけが取り残された』(NTTデータ 冨安氏)状況だった」というのはけっこう重い指摘。ベンダー依存しないためのOSSの知見を、普段からきちんと積んでおくことの重要さを再認識させられる。

文:大谷イビサ

ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。

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