第816回
シリコンインターポーザーを使わない限界の信号速度にチャレンジしたIBMのTelum II ISSCC 2025詳報
2025年03月24日 12時00分更新
性能はTelum比で1.3倍
AIアクセラレーターに関してはあまり新情報はないのだが、「自分のチップ内のAIアクセラレーターがBusyで、同じDrawer内の別のチップのAIアクセラレーターが空いている場合、そのAIアクセラレーターを利用できるので、最大192TOPSの性能」というのは、Virtual L4と同じような発想である。

連載790回の画像とあまり差がない。ただチップ右上にCompression Moduleがあることが今回明らかにされた
A-Bus経由で別のDrawerのAIアクセラレーターまで駆動できるかどうかは定かではないが、この書き方からするとVirtual L4に同一Drawer内に限られるようだ。これで足りなければ連載790回で書いたようにSpyreアクセラレーターを使うという形になる。
Telum IIにある個々のコアが下の画像で、パフォーマンス改善に関してはレジスター数の増加、ストアーバッファのライトバック機能の搭載、それと分岐予測の改善が挙げられている。逆に言えばこれと動作周波数向上が主な性能完全の要因とみられ、パイプラインの大幅変更などは特にされていないようだ。
連載790回でDPUのブロック構造を紹介したが、実際の実装が下の画像だ。個々のクラスターには8つのMCUが配されるという説明があったが、スライドを見ていると最上段に4つ、左右に2つづつ配されているようだ。その真ん中になにが入っているのかは不明だが。

ブロック図でCluster A~Dに当たるのが上下に2つづつ配されたPE Clusterというブロックで、その間にCoherent FabricやHardware Queue Manager&Dispatcher、Data Mover Engineが配される
最後に性能について。下の画像は絶対性能ではなく、同一消費電力当たりのIPCを比較したものであるが、順調に性能を伸ばしているとする。ほぼどの処理でもTelum比で1.3倍ということになっており、世代ごとの性能比としては妥当なところと思われる。
問題があるとすればチップあたりのコアの数が10→8に減っていることで、これはDPUを搭載したのが主な要因と思われる。記事冒頭の画像を見返すと、例えばDPUを2つに分割して"Package/Drawer interface"ブロックの両脇に配するなどの方法もありそうに思えるのだが、そうしなかったのはなにか理由があるのだろう。そのあたりの事情を知りたいものである。
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