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秒40コマ連写+1億7700万画素撮影+8Kムービー+ハイブリッドズームは4.2倍に!!

フルサイズカメラの新フラッグシップは機能爆載で超お買い得だった=LUMIX「S1RⅡ」実機レビュー



 パナソニックからフルサイズミラーレス機のフラッグシップモデル「LUMIX S1RⅡ」が発表された。前モデル「S1R」の登場が2019年だったので実に6年振りのモデルチェンジとなる。CP+でも大人気で、パナソニックは品薄であることを発表、予約済みでも発売日に届かない可能性もあるという。

 3月27日の発売に先立ち、パナソニックから試用機を借用できたので、外観や実際に撮影した作例を交えて紹介していこう。

フラッグシップながら小型軽量化
最新デザインで使い勝手も向上
電源オフ時のシャッター閉が可能に
 

3月27日発売予定で公式通販サイトでの価格はボディーのみ47万5200円。「LUMIX S 24-105mm F4」とのレンズキットは59万4000円。

 前モデルからの変更で特徴的なのがボディー形状だ。フルサイズミラーレス機のなかでも重量級だった「S1R」から大幅に小型軽量化され、スタンダードモデル「S5Ⅱ」と同等のサイズ感になった。

ボディーサイズは134.3×102.3×91.8mm、重量は約795gで、「S5Ⅱ」の134.3×102.3×90.1mm、740gとほぼ同等。なお前モデル「S1R」は148.9x110x96.7mm、1016gと大柄だった。

 操作系やボタン配置も上面の液晶パネルは廃止され、代わりに撮影モードとドライブのツーダイヤルを備えるなど、こちらも「S5Ⅱ」に近いレイアウトになっている。

 ただまったく同じというわけではなく、ダイヤルにはロックボタンを備えるなどの改良がされている。

「S5Ⅱ」より電源レバーの位置が後方になり操作しやすくなった。地味ながら嬉しい改良だ。リアコマンドダイヤルも少し内側に移動している。

上面のダイヤルはロック機能を備え、押し込むことでロックとフリーが切り替えられる。

シッターボタン後方の3連ボタンは従来通りで、ストロークの深さと、突起の有無など押し心地が異なり、指先の感覚だけで区別できるので相変わらず快適だ。

背面のボタン類も「S5Ⅱ」とほぼ同等だが、左上部だけはは前S1Rと同じく「操作ロックレバー」になっている。

 左肩ドライブダイヤルの下段は独立した「静止画/動画/S&Q切換レバー」を新設。これにより動画撮影の撮影モード変更が上面ダイヤルでおこなえるようになった。またメニュー画面も連動するのが便利である。

「静止画/動画/S&Q」のポジションによってメニュー画面も切り替わる。

 前面右下部にはFnボタン(初期設定では動画撮影)を搭載。ただ手持ちで撮影をしているときは誤って押してしまうことが多々あったので、使い方次第では機能をオフにするなどカスタマイズするといいだろう。

前面右下のFnボタンは三脚やジンバル使用時の動画ボタンとしては使いやすそうだが、手持ちの静止画撮影ではやや微妙。

 EVFは576万ドット倍率0.78倍と前モデルと同じ。背面液晶は3型184万ドットとS1Rの3.2型210万ドットから少しスペックダウンしているが、可動方式が3軸チルト式からチルトとフリーアングルのハイブリッドに進化した。レンズ光軸上での視認や、ケーブル装着時の取り回しもスムーズにおこなえる。

ケーブルを装着していても干渉せず可動できるのもチルト&フリーアングル液晶のメリット。

 撮像素子へのゴミの付着を防ぐため電源オフ時のシャッター閉幕機能も搭載。ただシャッター幕が剥き出しになるため破損するリスクもある。運用は慎重に行いたいところだ。

電源オフ時でシャッターを閉じた状態。設定する際はメニュー画面で警告が表示される。

 ファインダー部には「S5Ⅱ」と同様に冷却ファンが装備されている。ボディーが小型化されても熱対策は万全だ。

高画素機は連写や動画撮影時の熱が気になるところだが、ファンが搭載されているので安心感は高い。

 動画録画時に点灯するタリーランプがボディー前後に装備され、撮影者と被写体双方が認識できる。動画撮影に強い「LUMIX」らしい配慮だ。

ボディー前後のタリ―ランプは個別に明るさやオンオフを設定することもできる。

 メディアはSDとCFexpressのデュアルスロット。前モデルでは発売当初はXQD(懐かしい!)+SDで、後のファームアップでCFexpress対応したが、今回は流石にXQDは非対応のようだ。

やはり高画素機には撮影時や転送時の速度の速いCFexpressのほうが有利だ。

 側面端子は前モデルと同様だが、リモートケーブルの端子は「S5Ⅱ」と同じく右側面に配置されている。

側面のUSB-CとHDMIの配置は前モデルとは共通だが「S5Ⅱ」とは逆並びになっている。

リモート端子は右グリップ部にある。

 バッテリーは「S5Ⅱ」や「S9」と同じで「DMW-BLK22」。これでLUMIXの現行のフルサイズ機のバッテリーは共通化されたことになる。

バッテリーは「S5Ⅱ」や「S9」と共通。充電器が付属するのもうれしい。

最新4430万画素裏面CMOS
ハイレゾモードで1億7700万画素が撮影可能
人気の「ハイブリッドズーム」は4.2倍まで可能に
 

 撮像素子の解像度は4430万画素と前モデルと同等だが、像面位相差AFに対応し、動画では8K記録も可能になった。

 実際に撮影した写真を見ると細部まで精細で、それでいてシャープネスは協調しすぎず滑らかさを感じさせる画質。テキパキとしたAFなどレスポンスも申し分なく、心地よく撮影することができた。

都市部の景色は精細感が伝わりやすい。焦点距離30mm・絞りF8・シャッタースピード1/200秒・ISO80。
☆実写例はクリックで実物大表示になります。
☆以下追記がない限り共通・使用レンズ「LUMIX S 24-105mm F4」・フォトスタイルスタンダード・ホワイトバランスオート・JPEG FINE

 

看板が立ち並ぶ雑多な街並みも高画素機と相性が良い。
焦点距離105mm・絞りF8・シャッタースピード1/200秒・ISO80。

早咲きの桜。ピント部を拡大して見ると花びらの細部までしっかり写っている。
焦点距離24mm・絞りF8・シャッタースピード1/100秒・ISO80。

発色は色乗りがよくメリハリがある。
焦点距離24mm・絞りF8・シャッタースピード1/60秒・ISO80。

ボディーの小型軽量化のおかげで近所のお散歩写真も楽々。
焦点距離50mm・絞りF4・シャッタースピード1/60秒・ISO80。

AFも迷いが少なく街並みのスナップも快適。
焦点距離50mm・絞りF4・シャッタースピード1/80秒・ISO80。

 「LUMIX S」シリーズでは久々の高画素モデルになるが、その恩恵を受けるのが「S9」から採用された画像の一部を拡大することで望遠効果が得られる「ハイブリッドズーム/クロップズーム」だ。

 静止画ではズーム倍率が1.4倍時は5808×3872ドット(2250万画素相当)、2倍時は4128×2752ドット(1150万画素相当)と十分実用的な解像度が保持され、最小サイズの1920×1280ドット(250万画素相当)では約4.2倍の望遠撮影が可能になる。

 ちなみに、「S5Ⅱ」や「S9」のような2420万画素では、1.4倍で4272×2848ドット(1200万画素相当)、2倍で3024×2016ドット(600万画素相当)、1920×1280ドットではズーム倍率は3.1倍だった。

キットレンズの望遠側でクロップズームの作例比較。クロップなし焦点距離105mm。

クロップ1.4倍、焦点距離147mm相当。

クロップ2倍、焦点距離210mm相当。

クロップ約4.2倍、焦点距離441mm相当。

 また連写画像を合成して高解像度写真を生成する「ハイレゾモード」も、最大約1億7700万画素相当の16288×10848ドット(2420万画素機では9600万画素相当12000×8000ドット)という巨大なサイズで記録することができる。

「LUMIX」シリーズの「ハイレゾモード」は手持ち撮影に対応し、カメラ内で画像を生成してくれるのでお手軽。

手持ちハイレゾモードの比較のために撮影(ノーマルモード)。
焦点距離24mm・絞りF8・シャッタースピード1/160秒・ISO80。

中央部を拡大したもの。左がノーマル撮影の800%拡大表示、右が手持ちハイレゾモードで撮影した写真の400%拡大表示。ディティールの解像度が明らかに上がっているのがわかる。

毎秒40コマ連写にプリ撮影も可能で
認識AFの追尾力も向上&手ブレ補正も5軸8段で安心で
お買い得フラッグシップカメラだ

 連写はメカシャッターで最高秒10コマ、電子シャッターではプリ撮影も対応した秒40コマの高速連写が可能。ただし秒40コマ時の連続撮影枚数は70枚と少なめだ。

飛び回るカモメを被写体認識(動物)で撮影。一度認識してくれれば、しっかり追随してくれた。
焦点距離210mm(クロップ2倍)・絞りF4・シャッタースピード1/6400秒・ISO400。

飛び立つ瞬間をプリ連写で撮影。プリ連写の記録時間は0.5/1/1.5秒の3段間が設定できる。
焦点距離210mm(クロップ2倍)・絞りF4・シャッタースピード1/3200秒・ISO800

 またおそらく非積層型(メーカーからは非公表)なので電子シャッター時は動体歪みが発生する。とはいえ高画素機にしては歪みが比較的少ないように感じられる。

走行中の電車でメカシャッターと電子シャッターの動体歪みを比較。こちらはメカシャッター。
焦点距離50mm・絞りF5.6・シャッタースピード1/2000秒・ISO200。

こちらが電子シャッターによる作例。

 高感度は常用でISO51200,拡張でISO102400。ISO12800程度まではノイズも気にならず実用的な画質。ISO25600を超えると解像感低下が目立ってくるが、これは少し強めのノイズ処理のせいなので、解像感を重視するならノイズ処理をマイナスに調整してもいいだろう。

感度別に撮影した写真の一部を拡大して比較。左上からISO3200・ISO6400・ISO12800・ISO25600・ISO51200・ISO102400(拡張感度)・ノイズ処理標準。

ISO12800で撮影。ノイズ除去と解像感がバランスよく処理されている。
焦点距離105mm・絞りF4・シャッタースピード1/50秒。

やや解像感に甘さがあるが、ある程度光量のあるシーンなら許容できる。
焦点距離29mm・絞りF4・シャッタースピード1/30秒。

常用最高感度ISO51200でノイズ処理を-5に設定(撮影後にRAWをカメラ内現像で処理)。ノイズはあるが解像感は保持されている。
焦点距離105mm・絞りF4・シャッタースピード1/160秒。

 高画素機では手ブレも気になるが、5軸8段のボディ内手振れ補正と5軸7段のDual I.S.2が可能。キットレンズとの組み合わせでは遠景では1秒程度、近景でも1/4秒程度なら高確率でブレを防いでくれていた。なかなか強力な手ブレ補正だ。

遠景を手持で、シャッタースピード1秒で撮影。
焦点距離48mm・絞りF7.1・ISO200。

距離約1m前後の被写体を、手持ちでシャッタースピード1/4秒で撮影。
焦点距離54mm・絞りF5.6・ISO320。

 撮っていて少し気になったのは電源オンからの起動やオートパワーオフからの復帰が若干のんびりしていること。またバッテリー消費が早く、公称の撮影可能枚数は背面液晶で約340枚だが、EVFでは約280枚と少な目だった。予備バッテリーの準備や省電力設定の見直しなど工夫したほうがいいだろう。

 手にしたときのボディーの剛性感は「S5Ⅱ」より高く、メカシャッター動作もバタつきがなく静かで、さすが最上位カメラの雰囲気を持つ。

 価格もこのクラスのカメラにしてはお手頃で、お買い得フラッグシップモデルといえるだろう。

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