「GMOサイバーセキュリティ大会議2025」レポート
“2014年ウクライナ紛争”での領域横断なサイバー戦を振り返る 今こそ求められる産学官の連携
2025年03月18日 09時00分更新
サイバーセキュリティ業界の発展に貢献した4名が表彰
続けて、GMOサイバーセキュリティアワード2025の表彰式が行われた。国内のサイバーセキュリティ業界を牽引する有識者がノミネートされ、「安心・安全なインターネット」の提供を掲げるGMOインターネットグループが独自の基準で選考し、業界の発展に寄与した個人・団体を表彰した。
GMOサイバーセキュリティ byイエラエの代表取締役CEOである牧田誠氏は、「サイバーセキュリティが大きな社会課題になっている理由は、攻撃が簡単にできてしまうからです。攻撃者は、侵入できるポイントをひとつ見つければ良いが、守る側はパソコンが会社に数千台、数万台あれば、すべてを守らないといけません。今は、弱い立場にある企業やユーザーが犠牲になっている状況であり、我々はこのサイバー犯罪と戦っていく必要があります」と説明する。
加えて、「そのためには、もっと多くの企業が立ち上がらなければなりません。もっと多くのセキュリティ人材も必要です。産官学の連携も必要です。日本のサイバーセキュリティの発展のために貢献をしてくださった方々に敬意を込めて、そして感謝の気持ちを込めて表彰したい」とアワードの意義を語った。
アワードでは、大賞、サイバー犯罪対策功労賞、人財育成賞の3つが授与された。人財育成賞は、情報通信研究機構(NICT)のナショナルサイバートレーニングセンター長である園田道夫氏が受賞。長年にわたってサイバーセキュリティ人材育成の分野で活躍し、現在は、実践的なサイバー防御演習、若手セキュリティエンジニアの育成を主導する。多数のセキュリティイノベーターを育成していることが受賞理由となった。
サイバー犯罪対策功労賞は、2社が受賞。楽天グループの上級執行役員 CISOである福本佳成氏は、同グループでサイバーセキュリティ部門をリードし、2007年には、Rakuten-CERTを設立。同グループのさまざまなサービスが標的にされる中、警視庁や世界の法執行機関などとの連携強化に貢献した。もう1社は、コインチェックの常務執行役員CTO 開発・人事本部長である松岡剛志氏。過去に約580億円分の暗号資産NEMの不正流出事件が起きたが、松岡氏は外部のメンバーでありながら、事態の収拾を指揮。その後コインチェックは2024年12月に米ナスダック市場に上場するなど、サイバー犯罪に立ち向かう企業のロールモデルとなったことが授賞理由となった。
そして、大賞を受賞したのは、CODE BLUE発起人である篠田佳奈氏だ。海外の先鋭的な実務者と国内のエンジニアの交流を図る国際会議「CODE BLUE」を立ち上げ、海外各国の実務者の最新の考え方や知識を入手できる場や、優秀な発表者への給付型奨学金といった機会を生み出すなど、業界の発展に貢献したことが評価された。
今回のGMOサイバーセキュリティ大会議&表彰式2025では、日本が直面するサイバー空間の脅威や、それに対する産官学連携の重要性が改めて示された。政府や自衛隊、民間企業がそれぞれの立場で課題を共有し、未来に向けた人材育成や防衛能力強化を呼び掛けたことは、とても意義深いものだと感じた。サイバー攻撃が日常化し、領域横断作戦が現実となった今こそ、あらゆる分野の垣根を越えた協力が求められている。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります