「Sid Meier’s Civilization VII」
ここまではアクション性の強いゲームが多かったので、ここから先はシミュレーション的要素の強いゲームで検証する。Sid Meier’s Civilization VIIでは画質“低”とし、アンチエイリアスはFSR 3の“ネイティブAA”とした。
2本搭載されているゲーム内ベンチマークのうち、AIのベンチを採用した。10ターンのゲーム処理をCPUにさせ、CPU処理にかかった平均時間を比較するとともに、そのベンチマークシーンにおけるフレームレートも計測した。
まずCPUプレイヤーの思考時間に関してはCore Ultra 9 285Kが僅差でトップ。3D V-Cacheを搭載したRyzen 9 9950X3Dの場合CCD0側に処理が偏るのだが、結果として16コアすべてを使うシーンはほとんどなく、これがRyzen 7 9800X3Dと処理時間の差が開かない理由と思われる。
Core Ultra 9 285Kも全コアを使い切るわけではないのだが、時々アクティブなコア数が一気に増えるという感じでCPUの並列度を上手く扱えているという印象だ。
一方画面のフレームレートに関してはやはり3D V-Cacheは強いといった感じだが、Ryzen 9 9950X3Dは平均フレームレートでRyzen 7 9800X3Dに後れをとっている。とはいえRyzen 9 9950Xに対してはしっかりフレームレートを伸ばしており、3D V-Cacheの効果が発揮されていることが読み取れる。
「Mount & Blade II: Bannerlord」
Mount & Blade II: Bannerlordでは画質「Very Low」、アンチエイリアスはFXAAとし、Combat Size(戦場内に描画する兵士の数)は最大の1000に設定。ゲーム内ベンチマーク再生時のフレームレートを計測した。
このゲームはCPU負荷が極めて高く、2CCD構成のRyzenではフレームレートが出にくいことがわかっていたが、今回改めてテストすることでRyzen 9 9950X3Dは前世代にあった欠点がそのまま残っていることがハッキリしてきた。
Ryzen 9 9950X3Dは9950Xに対しては3D V-Cacheの効果でアドバンテージを得られているものの、平均フレームレートのトップはRyzen 7 9800X3Dに譲っている。Core Ultra 9 285Kは平均フレームレートにおいてRyzen 9 9950X3Dに一歩及ばなかったがRyzen 9 9950X3Dよりは高い次元でバランスのとれたフレームレートを示している。
「Cities: Skylines II」
重量級のシミュレーションといえば「Cities: Skylines II」を避けて通ることはできない。画質は「最低」とし、アンチエイリアスはFXAAに設定。人口約60万人程度の都市を用意し、その上をフライバイするようなコースでカメラを移動させ、その際のフレームレートを計測した。ベンチマーク計測中は時間も等速で動かし、CPUはゲームグラフィック描画処理とゲーム内の処理の両方を実行している。
このゲームはCPUに対する負荷が非常に高いため8コアのRyzen 7 9800X3Dでは画質を最低設定にしていてもCPUパワー不足になる。だがRyzen 9 9950X3DであればCPUパワーが一気に倍増するためフレームレートも伸びる。ただこのゲームの根源的な重さはいかんともし難く、最低フレームレートは20fpsを割り込んでしまった。
「Sea Power」
最後に試すのはリアル系ウォーシミュレーション「Sea Power」である。画質は「Very Low」に設定。シナリオエディターで米ソのミサイル巡洋艦10隻を対峙させ、シミュレーションスタートから3分間のフレームレートを計測した。ゲームの仕様上毎回微妙に展開が変わるが、どんな展開になってもフレームレートの誤差は軽微であることを確認している。
計測開始から間もなく敵方から100発近いミサイルが飛んでくるためCPU負荷もそれなりに高くなる。ただSea Powerの処理の制約か、どのCPUでも40fpsあたりで頭打ちとなった。強いて言えばRyzen 9 9950Xがやや平均フレームレートが落ち込んでいるが、Ryzen 9 9950X3DとRyzen 7 9800X3Dの間に明確な差があるとは言えない結果になった。
クセ強のところはそのまま
以上で簡単ではあるがRyzen 9 9950X3Dのレビューは終了だ。Ryzen 9 9950X3DはRyzen 7 9800X3Dのコア増量版ではあるが、3D V-Cacheの使えるコアは8コアだけであり、OSやドライバーの働きによりゲームから見れば8コアCPUのように振る舞う(コアが足らなければCCDの境界をまたいで処理させることも可能だ)。
この点においてRyzen 9 9950X3DはRyzen 7 9800X3Dの完全上位というポジションにはなく、動画エンコードなどの処理で高速化しやすい付加価値モデルというポジションにある。ただし、自分の使い方では8コアCPUは足りないとわかっているなら、Ryzen 9 9950X3DはRyzen 9 9950Xの完全上位モデルとして捉えることができるだろう。
筆者が使っていて釈然としなかったのはRyzen 9 7950X3Dから存在するセットアップ時のおまじないや新ゲームを導入した時の確認事項がそのまま継承されていることだ。
今世代で変わったのは3D V-Cacheの実装方法だけなので変わるはずもないのだが、もう少しソフト・ハード面でユーザーの手を煩わせない手がなかったものだろうか?(筆者は実際Ryzen 9 7900X3Dを使っていて、新ゲームを導入するたびにGame Barを開いてチェック、というおまじないに閉口している)
今Ryzen 7 9800X3Dを使っていてコア数に飢えているのでなければ、無理に買い換える必要はないどころか、QOLが悪化する可能性すらある。次のZen 6世代のX3Dモデルはこの点を強化していただきたいものだ。
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