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Ryzen 9 9950X3Dは順当進化。3D V-Cache搭載Ryzenの最強モデルだがクセありな部分はそのまま

2025年03月11日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

 2025年3月14日午前11時、AMDは3D V-Cacheを搭載したゲーマー&クリエイター向けCPUの多コアモデル「Ryzen 9 9950X3D」ならびに「Ryzen 9 9900X3D」の国内販売を解禁する。北米における発売日は3月12日であるが、週の真ん中あたりで発売される場合の国内販売日は金曜日にする、といういつものパターンである。

Ryzen 9 9950X3DおよびRyzen 9 9900X3Dのパッケージ。CPUクーラーが別売なのはRyzen 7 9800X3Dなどと一緒だ

 国内予想価格は税込みでそれぞれ13万2800円と11万2800円。現行のRyzen 9 9950Xや9900Xに比べ1万3000円ないし2万4000円高い値付けとなっているが、PCゲームにおいて3D V-Cacheは現状これ以上ない付加価値であることを考えれば妥当な値付けと言えるだろう。

 Ryzen 9 9950X3Dと9900X3Dにおいて重要な技術的トピックは3D V-Cacheの実装方法のみだ。3D V-Cacheの上にCCD(Core Complex Die)をスタックさせる第2世代3D V-Cacheを採用することで冷却効率が格段に向上。結果としてRyzen 9 9950Xや9900Xと同じオーバークロック機能がサポートされた。これは1世代前のRyzen 7 7950X3Dと7900X3Dにはなかった部分である。

 今回筆者は幸運にもRyzen 9 9950X3DをAMDよりお借りすることができた。3月はGeForceとRadeonのレビュー解禁が連続で到来する中、このRyzen 9 9950X3Dのレビューも進めるという状況であるため、今回のレビューは最小限の構成で最小限のテストにとどめた。Ryzen 7 9800X3Dの時のような多数のゲームを使った評価(その1/その2)は後日落ち着いてからやることにしよう。

Ryzen 9 9950X3Dの表面。表面の刻印以外から既存のSocket AM5向けCPUと見分ける手がかりはない

裏面のランド配置についても変わった様子はない

CCDの使い分けの仕組みは従来と変わらず

 Ryzen 9 9950X3Dと9900X3Dのスペック的な見どころはあまりない。3D V-Cacheの実装方法を改善した結果、Ryzen 9 9950Xや9900Xと同じようにオーバークロックに対応し、TDPや動作クロックを絞る必要もなくなったからだ。今回テストしたRyzen 9 9950X3Dに関しては、9950Xと同じクロック設定&同じTDPで運用可能になったため、Ryzen 9 9950Xに対する完全上位版となった。

Ryzen 9 9950X3D/ Ryzen 9 9900X3Dと、その近傍の製品とのスペック比較

CPUの情報:「CPU-Z」にて取得

 本稿の読者はすでにご存じのことと思うがRyzen 9には2基のCCDが搭載されており、3D V-Cacheはそのうちの片方にのみ実装されている。今回のRyzen 9 9950X3Dと9900X3Dにおいても、3D V-Cacheが使えるCCD(CCD0と言う)と3D V-CacheのないCCD(CCD1)が1つずつ搭載されており、CCD0はゲームで、CCD1ゲーム以外で使われるようになっている。

 このCCDを使い分ける仕組みこそが、Ryzen 9 9950X3Dおよび9900X3Dの最大の弱点にもなっている。Ryzen 9 7950X3Dや7900X3Dと同様に、今回の製品でも使い分けの仕組みはWindowsに委ねるという点は変わっていない。Windowsにゲームと認識されたプログラムをCCD0側で優先的に動かすことで最大のパフォーマンスを得られるようになっているのである。

 Ryzen 9 9950X3Dと9900X3DをPC初心者にお勧めしにくい理由はここにある。改めてRyzen 9 9950X3Dと9900X3D環境で最大のパフォーマンスを引き出すための「おまじない」をまとめておこう。

1.マザーのBIOSを最新のものに更新(Ryzen 9 9950X3Dなどの性能を引き出すために必要)
2.Windowsをセットアップ
3.AMDのチップセットドライバーは最新版(本稿執筆時は7.02.13.148)を導入
4.Microsoft StoreでXbox Game Barを最新版にアップデート
5.しばらくく放置してKGL(Kernel Gaming Library)サービスとデータベースの更新を待つ、もしくは以下のコマンドを入力して強制的に更新させる

cmd.exe /c start /wait Rundll32.exe advapi32.dll,ProcessIdleTasks

 この手順のうち4まで済ませておくのが肝要だ。5についてはネットにつながっている状況でしばらく放置しておけばシステムのアイドルタスクがすべて済ませてくれる。上記コマンドは強制的にアイドルタスクを実行させるためのものだ。

 KGLサービスのアップデートを済ませてもそれで終わりにはならない。新作ゲームが出てもKGLのデータベースにすぐ掲載されるわけではないし、掲載漏れもある。KGLサービスのアップデートがなくてもゲームは動くが、3D V-CacheのないCCD1側で実行されるため本来のパフォーマンスが出ないのだ。

 そこで、ゲームを起動したら「Win+G」キーを押してGame Barを呼び出し、Game Barの設定(歯車アイコン)→「全般」から「これをゲームとして記憶する」という項目があるかないかチェックするクセを付けておこう。

 「これをゲームとして記憶する」という項目が出ていた場合、そのゲームはWindowsにゲームとして認識されていない(=KGLのデータベースにない)という意味になる。チェックを付けることでゲームとして認識され3D V-CacheのあるCCD0側で動くようになる。

「Sea Power」という(少々ニッチな)シミュレーションゲームを起動、Game Barの設定を見ると「これをゲームとして記憶する」というチェックマークが出ている“(矢印部分)。つまりこの状態ではSea Powerはゲームとして認識されていない

 この仕掛けはRyzen 9 7950X3Dが出た当時から続く“3D V-Cache使いこなしに必須のノウハウ”である。筆者はゲーミングPC向けにはRyzen 7 9800X3Dを強く推しているが、それはどんなプログラムが来ても確実に3D V-Cacheの恩恵に浴することができるからである。

 Ryzen 9 9950X3Dと9900X3Dでは前述のような手順や操作を忘れてしまうと性能が十全に出ないことも充分にあるからだ。ゲームの裏でCPUヘビーな処理をさせたい、あるいは動画編集などのためにCPUパワーを確保したいという人向けのCPUとなっている。

 ちなみに、AMDは最新チップセットドライバーに「AMD Application Compatibility Database Driver」という新しい機能を追加することで、さらにCPUコアの使い分け機能をブラッシュアップしようとしている。

 これは特定のゲームではRyzen 9 9950X3Dと9900X3Dのコアが効率良く使われない(処理が多数のコアに散る)問題に対処するためのもの。対象となるゲームはごく一部であるため、当該ゲーム(下図参照)をRyzen 9でプレイする場合において効果が発揮される。

最新のAMDチップセットドライバーでは、AMD Application Compatibility Database Driverも導入される

AMDの資料より引用。「Far Cry 6」や「Metro Exodus」など一部のゲームにおいて、CPUコアの利用状況を効率化するためのものと記されている。インテルで言うところの「APO(Intel Application Performance Optimization)」の立ち位置に近い機能である

最新チップセットドライバーでは、長年AMD Provisioning File Driverに潜んでいた不具合がようやく解消された。Ryzenを交換した時に性能が十全に発揮されなくなる問題がこれで解消され、CPUを変えるたびにOSごと再セットアップが必須ではなくなった

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