関西万博の「未来の都市」を一足先に体験! 技術の力で社会課題を解決する
2025年03月11日 12時00分更新
開催が間近に迫った2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)だが、その大型展示の1つとなる未来社会ショーケース事業・フューチャーライフ万博「未来の都市」パビリオンの完成を記念した式典が、10日に実施され、その内容が報道陣に向け一足先に公開されている。
このパビリオンは、大阪・関西万博を主催する2025年日本国際博覧会協会と、日立製作所やKDDI、クボタなど協賛12社が共創し、経済発展と社会課題を両立する「Society 5.0が目指す未来の都市」の姿を考えることがコンセプトとなっているもの。単独の企業ではなく、複数の企業や団体らが共同で出展し、社会課題解決に向けた取り組みを進めている点が大きなポイントとなっている。
それだけ多くの企業や団体らが参加しているだけに、ブースの規模も非常に大きい。実際、未来の都市パビリオンは全長150m、幅約33mと非常に大きく、壁の外側は、太陽光で汚れなどを分解するメッシュ膜と、反射率が高く遮熱効果のある内膜と表層膜の二重構造で覆われたモアレ状のデザインとなっているなど、未来感を打ち出す工夫がなされている。
3つのホールで社会課題解決の取り組みを紹介
その展示はホールA、B、Cの3つに大きく分かれており、ホールAの展示は「40億年・幸せの旅」というもの。高さ約5m、長さ約92mという非常に大きなスクリーンを通路上に配置し、人類の誕生以前からSociety 5.0を実現した世界までを映し出して、未来に向けて乗り越えるべき社会課題を学ぶことができる。
ホールBの展示は、そのSociety 5.0を実現した未来の生活を映像などで実感できるもの。展示の中心となるのは、日立製作所とKDDIによる「Mirai Theater」「Mirai Arcade」だ。
Mirai Theaterは120人が入場できるシアター形式の施設で、2035年の未来に住む子供からのSOSを受け取った参加者が、ナビゲーターとともに未来の課題解決策を選んで考えるというもの。物語の進行に合わせて、会場に用意されたタブレットに現れる選択肢を選ぶことで結果が変化する、インタラクティブ要素を取り入れた劇が展開されていた。

ホールBの「Mirai Theater」では、2035年の未来から来た少年と、ナビゲーターのお姉さんによる劇を披露。未来に向けた社会課題を解決する3つの選択肢を参加者が選び、その内容に従って劇が進行するインタラクティブ要素が備わっている
一方のMirai Arcadeは、3人で協力して他の新規ながらSociety 5.0を学ぶゲーム風のコンテンツ。画面上に現れる「ミライボール」を投げ、体を動かし楽しみながら、社会課題の解決を学べる点が大きなポイントとなっている。
そしてホールCは、Society 5.0の実現に向けた分野別の社会課題解決方法を学ぶ空間となる。さまざまなクリエイターが制作した4つの映像ストーリーを通じて未来の産業や社会を体験できるほか、協賛各社による社会課題解決に向けた取り組みの展示が実施されている。

映像や企業の取り組みなどで社会課題解決に向けた方策を学ぶホールC。サステナブル素材となる紙の段ボールで作られた顔の裏に大画面のモニターが備わり、さまざまな映像ストーリーで未来社会を体験することが可能だ
そうした中から代表的な展示をいくつかピックアップしてみよう。クボタは今回のパビリオン完成に合わせて未来の「汎用プラットフォームロボット」のコンセプトモデルとなる小型ロボットの「Type:S」と、大型ロボット「Type:V」を公開しているが、中でもType:Vは今回が世界初公開となる。
Type:Vは作物の生育状況や作業内容によって車体の高さや幅を自由に変形でき、さまざまなインプルメント(作業機)を自動で付け替えることも可能。稲作や野菜などさまざまな農業に対応できる。それに加えて従来複数の機会を用いていた1台で耕起や収穫などの農作業をすべて1台でこなせるそうで、農業従事者の減少という社会課題に応える1台となるようだ。
川崎重工が展示する「ALICY SYSTEM」は、乗り物の客室部分だけを取り出したような「ALICE Cabin」というボックスに人が乗り込むことで、それを鉄道や飛行機などさまざまなモビリティに自動で載せ替えられるもの。乗客はALICE Cabinから出る必要なく乗り換えが可能なことから、移動に不自由を抱える人であっても快適に移動ができるという。
また、商船三井の「Wind Vision」では、自然エネルギーの1つとなる風を使ってグリーンエネルギーを製造し、そのまま貯蔵、輸送もできる船舶「ウインドハンター」の大型模型を展示。その模型にうちわで風を送ることにより、実際の発電の様子や、発電によって何ができるのかをゲーム感覚で学べるアトラクションも用意されている。

商船三井の「Wind Vision」は、船で受けた風を使ってエネルギーを作り、直接運ぶこともできる「ウインドハンター」を展示。うちわをあおいで帆に風を送ることで、発電している様子を体感できるアトラクションも用意されていた
「αU」の基盤を使ったバーチャルな「未来の都市」も用意
そしてもう1つ、大きな取り組みとなるのが「バーチャル未来の都市」だ。これはその名前の通り、大阪・簡裁万博の「未来の都市」の展示内容を、KDDIの「αU」の基盤を用いたメタバース空間上で実現したものとなる。
パビリオンの展示などをメタバース空間に再現する取り組みはこれまでにも多くなされているが、それらはリアルの展示をメタバース空間上にそのまま再現することが多かった。だがバーチャル未来の都市は仮想空間であることを活かし、現実空間ではまだ実現できていない技術を空間上で再現することに重点を置いている。
実際、バーチャル未来の都市では、空想地図作家である今和泉隆行氏の監修のもと、2030年代の近未来の都市空間を作成。都市部や地方部など、それぞれの空間上で生じている課題を解決する策を検討し、それをメタバース空間上に実装しているとのこと。
参加者はその空間上を散策して、未来の姿のヒントを集める「ミライリサーチ」をすることが可能で、さまざまな社会課題の解決策を体験して「リサーチノート」を完成させれば、特別デザインのNFTを獲得できるという。
またバーチャル未来の都市には、ホールBで展開されているMirai Theaterをバーチャル空間上で楽しめる「バーチャル未来シアター」も用意。会場外からもアプリを通じて未来を変える体験が可能なようだ。
なおバーチャル未来の都市は、大阪・関西万博に合わせて提供が開始されるが、それに先行して2025年3月14日から、東京・銀座にある「GINZA 456 Created by KDDI」で体験することも可能。興味がある人はこちらを訪れて先行体験してみるといいだろう。
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