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MWCの富士通ブースは2nmの次世代プロセッサから、AIソリューションまで最新技術を展示

2025年03月08日 08時30分更新

 MWC25の富士通ブースでは、ICT基盤から、それを支える最新の技術とソリューションを展示。入口にあったのは、2nmプロセスで製造し、2027年の商品化を目指して開発している次世代プロセッサの「MONAKA」。モックアップではあるがホログラムによる解説映像と組み合わせて展示していた。

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2nmプロセスで製造される次世代プロセッサ「MONAKA」

 MONAKAは、通信インフラストラクチャ向けに最適化されており、TCO削減、AIコンピューティング能力の向上、そして高いセキュリティを実現することを目標としている。

 技術的な特徴は、2027年時点の一般的なコンピューターと比較して約50%のエネルギー消費量削減を目指しており、独自の低電圧動作技術などが用いられている点。また、AI処理に特化した命令セットをハードウェアレベルで実装しており、特にAI推論処理の高速化に大きく貢献する。開発者向けには、オープンソースソフトウェアスタックも提供される予定だ。

 さらに、コンフィデンシャルコンピューティング機能により、ハードウェアレベルでのデータ暗号化を実現し、クラウド環境においても極めて高いセキュリティを確保。仮想マシンごとにハードウェアレベルで鍵をかけ、外部からの不正アクセスを防ぐ仕組みだ。

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 Supermicroとは、MONAKA搭載サーバーを共同で開発・提供することを発表しており、AMDとも協業して、富士通のCPUとAMDのGPUを組み合わせたAIインフラストラクチャの開発を進めている。

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 2030年頃を見据えた次世代ICT基盤の「フォトニックディスアグリゲーテッドコンピューター」の展示エリアでは、AIの高度化や多様な要求に対応するため、従来のサーバー内で一体化されていたCPU、GPU、ストレージ、メモリといったコンピューティングリソースを分離・プール化し、必要に応じて柔軟に割り当てるシステムを解説。

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 これを実現する鍵となるのが、コンポーザブル・アグリゲート・インフラストラクチャ(CDI)という考え方。CPUやGPUといったリソースを物理的に分離し、光インターコネクトによって接続することで、高速かつ柔軟なリソース構成を可能にする。将来的には、複数のデータセンターを仮想的に一つのリソースプールとして扱い、地理的に分散したリソースを最適に活用することも視野に入れているとのこと。

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 これにより、ビジネスユーザーは、リアルタイム性やCPUの配置場所など、さまざまな要件に応じて最適なコンピューティングリソースを利用できるようになる。さらに、再生可能エネルギーが豊富な地域のデータセンターからリソースを調達するといった活用も想定され、カーボンニュートラルへの貢献も期待される。

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ミリ波向けのアンテナモジュールを紹介

 5G無線機(RU)の展示エリアでは、28GHz帯のミニチュア・高効率ビームフォーミングICを搭載したアンテナモジュールを紹介。これにより、従来の2偏波対応から8ビームまでの対応が可能となり、アップリンク時のデータ受信性能が大幅に向上する。また、信号処理を行うFPGAには、DA変換やAD変換機能も統合され、小型化・低消費電力化が図られている。

 加えて、高精度な測位を実現するアトラスエンジン(GPS)もNTTイノベーティブデバイスなどとの共同開発により実現しており、将来的なRUへの実装が期待される。これらの要素技術を統合することで、従来の5G RUと比較して、サイズを約1/3、消費電力を約1/3に削減できるとのこと。

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 製品展開としては、480W送信電力を誇る。これらの製品は、楽天モバイルやAT&Tといった主要な通信事業者にも採用されており、特に楽天モバイルからは、その小型性や低消費電力、高効率が評価されている。AT&T向けには、TDDバンドやFDDデュアルバンドに対応した2機種が選定され、2024年後半からの出荷が予定されている。

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AI基地局の開発に積極的に取り組む富士通

 ネットワークへのAI活用も積極的に推進しており、ソフトバンクとの連携によるAI RANの取り組みに富士通は参画。AI RANでは、その具体的な活用方法として、3つのコンセプトを提唱しており、ひとつめは「AI & RAN」で、夜間などの余剰ネットワーク容量をAI処理に動的に割り当て、GPU as a Serviceとして外部企業に提供することで、ネットワークのマネタイズをはかる。

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 2つめは「AI for RAN」で、AIをネットワークのパフォーマンス向上に活用。ソフトバンクがMWC25にあわせて発表した「AI技術によるRANの性能向上効果を実証」では、富士通の技術が貢献しているとのこと。

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 3つめは「AI on RAN」で、GPU、RAN、AIを統合し、ロボティクスなどの新しいアプリケーションやサービスの創出、新たなマネタイズモデルの確立を目指している。NVIDIAのGPUやネットワンシステムズの仮想化プラットフォームと連携した実証実験を実施しており、展示エリアでは、低遅延や障害への対策についてデモで、その重要性をアピール。

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不審者を自律移動するロボットがカメラで捉え、追跡するという実証実験の動画を披露していたが、遅延が約100ミリ秒という低遅延環境下では、ロボットは不審者をスムーズかつ正確に追跡できているものの、意図的にネットワークに200ミリ秒の遅延を加えた状態で同様のデモンストレーションでは、ロボットは一度不審者を見つけたあと、わずかに移動しただけで見失ってしまうという結果になった。

 これは、上りのカメラデータとロボットへの指示の遅延によって、AIアプリケーションがリアルタイムに追従できなくなったためという。

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 このことから、AIを活用したリアルタイムなアプリケーションにおいては、AI on RANによるネットワークの低遅延性が不可欠であるというわけだ。

 これらの取り組みを通じて、富士通は、RAN、データセンター、トランスポート、セキュリティ、アプリケーションなど、クロスドメインの知見を活かしAI RANの実現に貢献していく考えをあらためて示した。

 

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